↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/47

45・赤十字の下で

 1926年にパウルが53歳で身罷った後、イザベラはしばらく姉の元で静養させてもらった。

 「それで貴女は、これからどうするつもりなの?」と、クリスティーネは妹に尋ねた。

 「ここに居たければ、いつまでも居て良いのよ。次女のローズマリーも、トスカナ大公(やはりハプスブルグ家の分家)へ嫁いで、末娘のツェツィーリエも、ザルム家の遠縁との縁組が決まって、近々嫁いで行ったら、私と長男のニクラウスだけになって、寂しくもなることだし」

 それに対してイザベラは、「お心遣い有難う、お姉様。お言葉に甘えて、もう少しここで休養させていただいたら私、スイスへ行こうと考えていますの」と答えた。


 「スイス?」とクリスティーネが、オウム返しに聞くと、「ええ、ジュネーブの赤十字本部です。あちらには大戦中一緒に働いた仲間もいますし。もうあんな戦争は、起きて欲しくないのですけど、今でも世界のあちこちで小競り合いは絶えませんし、今度は従軍看護婦ではなく、国籍や人種や宗教に囚われず、看護活動をしてみたいんです」とイザベラは答えた。

 「お父様やお母様には会ってから行くの?」と、クリスティーネが重ねて尋ねると、

 「いえ、会いたい気持ちもあるのですが、ここからスイスへは、直接行った方が早いので、お手紙だけ書いておきました。

 今までさんざん無茶をやって来たせいか、お2人とももう止める気力も無かったみたい」とイザベラは、歯を出して笑った。


 イザベラ「それと一つお願いがあるんですが、私が死んだらお姉様と一緒に、葬っていただけませんか?」

 クリステイ「ここに?テシェン家の墓所でもなく、パウル先生のお墓にでもなく?」

 イザベラ「どこにも行く所が無ければ、適当な所へ葬られるのでしょうが、先生のお墓は遠慮したいのです」

 クリステイ「なぜ?」

 イザベラ「先生は先に亡くなった奥様と共に、眠っておられます。生きていた内には、愛し尽くせなかったと、後悔していた人と一緒に。そこへ私が割り込むことは出来ません。

 私は生きている内に、もう先生と充実した時間を過ごしました。

 いつかお姉様が仰ったように、それを糧にして、これからを生きて行くつもりです」

 クリステイ「そう。でも私の方が先に逝く確率が高いのだから、そのことは子供たちに、よく伝えておくわね」

 イザベラ「はい、どうかくれぐれも、よろしくお願い致します」


 そう姉に言い残し、しばらくしてイザベラは、スイスへと南を目指して、旅立って行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。