28・Credoー信仰宣言
プレスブルグへ戻ると、両親の元へも皇帝か教皇からの連絡は行っていたのか、夫妻は何とも言えぬ表情で娘を迎えた。
父は言いたいことは多々ありそうだったが、同時に今更何を言っても始まらないという顔をしていた。
いつもは辛辣な母も、流石に傷付いているだろう娘に、追い打ちを掛けるようなことは言えなかったのだろう。
そんな両親にイザベラは、「皇帝陛下からも御指示があったと思いますが、何より両家の名誉を最優先してください。離婚の理由はあくまで性格の不一致ということで」と頼んだが、「でもそれだと貴女も悪いみたく世間に思われるのが悔しいわね、責任は向こうにあるのに」と母が愚痴をこぼすと、「それも彼に悪気があってのことではありませんし、結婚したことで知り得た秘事を、公にするのは潔しとはしませんわ」とイザベラが答えると、母はまだ納得行かないといった風だったが、父は黙って頷いた。
父「それでお前はこれからどうするつもりだ?」
母「私がもっと良い縁談を見付けて来ますよ。家柄よりも人柄重視でね!」
そう言えば枢機卿にも皇帝陛下にも話してなかったなと思い、「わたくし看護学校へ入りたいんですが、お父様お母様はお許しくださいますか?」とイザベラは言った。
「看護学校?!」と、父と母は同時に叫んだ。
「するとやっぱり修道院へ入って、病院や伝染病隔離施設などで、奉仕活動をするということ?」と、母は尋ねたが、「いいえ、シスター方は確かに、そういうボランティアをなさってますが、看護婦は医療に関する専門教育を受け、宗教に関係なく有償で医師を介助して、病人を看護する職業なんです」と、イザベラは答えた。
「職業って、我が家には働かなくても、充分な財産があるのに。貴女の個人資産だって」と母は慌てたように言ったが、「ちょっとお待ち、一先ずイザベラの話を、最後まで聞こうじゃないか」と、父が母を制した。
「確かにお母様の仰る通りなんですけど私、女がそういう1人の男性に、我が身の幸福の全てを委ねるという、生き方しかできないってこと自体、おかしいと思うようになったんです。
だから今度は他の誰にも邪魔されない、自分だけの生き方を見付けたい。
それには色んな道があるのかも知れませんが、私が今度の旅で行き着いたのは、看護婦という生き方だったんです」
そんな娘の言い分に、母はまだオロオロしていたが、父は父は顎に手を当てて俯き、ややあって「お前がそこまで考え抜いて決めたことなら、反対する理由はないよ。好きにしなさい」と、最終的な許可を与えた。




