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「だが、部活と言っても何をするんだ」


 俺は机の上に置かれた紙を眺めながら言った。


「それに、部員も最低でも五人は必要だろ」


 俺がそう言うと、諏訪之瀬は少しも動じなかった。


「そうね」


「……分かってるのか?」


「もちろん」


「なら、どうするつもりだ」


「集めればいいじゃない」


「簡単に言うなよ」


 俺は呆れた。


 昨日の今日で転校してきたばかりだぞ。


 そんな人間が、どうやって部員を五人も集めるというのか。


「そもそも、何をする部活なんだ?」


「青春研究部よ」


「だから、その青春を研究して何になるんだよ」


「決まっているでしょう」


 彼女は真顔で答えた。


「青春をするのよ」


「研究しろよ」


「研究するためには、まず実践が必要だわ」


「……屁理屈だ」


「そうかしら」


 諏訪之瀬は少し考えるように顎へ手を当てた。


「例えば、恋愛」


「却下」


「早いわね」


「青春の代表格だろ。却下だ」


「なら部活動」


「それも面倒だ」


「友情」


「もっと面倒だ」


「青春じゃなくても嫌いなだけじゃない?」


「……」


 何も言い返せなかった。


「ともかく」


 俺は話を戻す。


「部員五人。これが問題だ」


「問題ないわ」


「なぜ?」


「もう目星はつけているもの」


「誰に?」


 諏訪之瀬は教室の後ろを指差した。


 そこには、こちらをちらちらと見ている男子生徒が三人。


 昨日から彼女に話しかけようとして、結局話しかけられずにいる連中だった。


「……あいつら?」


「ええ」


「入ると思うか?」


「入るわ」


「根拠は?」


「私が誘えば」


「……なるほど」


 妙に説得力がある。


 俺が感心しかけた、そのとき。


「あと一人」


 諏訪之瀬が俺を見る。


「あなたよ」


「俺はもう入ってるだろ」


「ええ。だから残りは一人」


「……誰だ?」


「それはこれから探すのよ」


 彼女は立ち上がった。


「行きましょう、沢村君」


「どこへ?」


「部員探し」


「朝のホームルーム前から?」


「ええ」


 俺は時計を見る。


 始業まで、あと二十分。


「……本気かよ」


「もちろん」


 彼女は迷いなく教室の扉へ向かう。


 俺はその背中を眺めた。


 合理的じゃない。


 計画性もない。


 そもそも部活として成立するのかすら怪しい。


 ――なのに。


 なぜか、俺はその後を追ってしまった。


「……ったく」


 これだから、不確実なものは嫌いなんだ。


 予測できない。


 計算できない。


 そして何より――少しだけ、面白い。

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