天地がひっくり返っても
いやいや。
俺は何を考えているんだ。
こんな突発的で、不確実なことに――俺は少し、興味を持ってしまっている。
青春なんてクソだ。
そう思っていたはずだ。
何が起こるか分からない。
努力が報われる保証もない。
誰かを好きになったところで、その想いが届くとは限らない。
だから俺は、そんなものとは無縁でいればいいと思っていた。
それなのに。
昨日まで存在すら知らなかった少女が、突然俺の隣に現れて。
俺の平穏を勝手に壊して。
挙げ句の果てには、わけの分からない部活まで作ろうとしている。
普通なら迷惑だと思うはずだ。
……いや、実際、迷惑ではある。
なのに。
「……」
どうして俺は、帰ろうとしないんだ?
昨日なら、間違いなく逃げていた。
なのに今は、こいつが次に何を言い出すのか気になっている。
それが妙に腹立たしかった。
「……いやいや」
小さく呟く。
こんな突発的で、不確実なことに興味を持つなんて。
まるで――。
「青春じゃないか」
「何か言った?」
「いや、何でもない」
そう答えた瞬間だった。
隣から、妙に鋭い視線を感じる。
「沢村君」
「……何だよ」
諏訪之瀬は、じっと俺の顔を覗き込んでいた。
「今、あなた少し動揺しているわね」
「してない」
「しているわ」
「してない」
「している顔よ」
「どんな顔だよ、それ」
「昨日より、ほんの少しだけ生き生きしている顔」
「……」
図星だった。
俺は思わず視線を逸らす。
「気のせいだ」
「そうかしら?」
諏訪之瀬は楽しそうに笑った。
「なら、確かめてみましょう」
「何を?」
「あなたが本当に青春を嫌っているのか」
「……どうやって」
「簡単よ」
彼女は机の上に一枚の紙を置いた。
昨日のものと同じ――いや、昨日よりも大きな文字で書かれている。
そこには、
『青春研究部・本日の活動』
と書かれていた。
「今日、私と一緒に青春をするの」
「……」
俺はその紙を見つめる。
くだらない。
本当にくだらない。
なのに――。
なぜだろう。
昨日までなら即座に断っていたはずなのに。
俺は、その紙を捨てることができなかった。




