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第8話 レトロ系戦闘特化マッスルギャル(!?)

「夢がまだ終わってないって……

どういうことだ?」


竜二は眉をひそめ、

不思議そうにミナミを見た。


しかしミナミは、気楽そうに笑う。


「うん。これから私が言うことに、

おじさんは合わせてくれればいいから。」


「お、おい……!」


竜二が止める間もなく、

ミナミはくるりと振り返り、

大きく手を振った。


「ナツコちゃーん! 確認終わったよー!」


エリカも近寄り、

琴音も小走りでその後ろへ続いた。


「ミナミ様。」


「確認結果はいかがでしたか?」


「うーん、じっくり見た結果だけど。」


ミナミは顎に手を当てる、

いかにも真剣に考えているような顔を作る。


「見た目も経歴も話し方も、

ぜーんぶひっくるめて見た結果……」


エリカと琴音が息を呑む。


そしてミナミは胸を張った。


「やっぱりギャルだね。」


ナツコのシグナルランプがぴくりと点滅した。


エリカは額へ手を当て、

そのままこめかみを揉む。


「このスーパー大バカ……」


琴音は顔を青くしながら、

思わずエリカの服の裾をつかみ、

ナツコから少し距離を取った。


その様子に気づいたエリカは、

片腕で琴音を軽く抱き寄せる。


「……あっ。」


琴音は照れたように慌てて手を離した。


エリカはそのままミナミの前へ歩いていく。


「ミナミ……本気?」


腕を組み、じっと睨む。


「今やってること、火遊びだよ?」


「私だけじゃない。」


「琴音まで巻き込んでる。」


ミナミはまっすぐ見返した。


「分かってる。」


「でも、それがギャルだから。」


エリカは一瞬、言葉を失った。


その時、ナツコが静かに歩み寄る。


「ミナミ様。」


「あなたの鑑定結果は、

先ほどのエリカ様の証言と明らかな矛盾があります。」


シグナルランプが赤と青を数回行き来したあと、

青色で安定する。


「十分な説明をお願いできますか?」


「簡単だよ。」


ミナミは肩をすくめた。


「ナツコちゃんって、

『戦闘モード』になれるよね?」


「戦闘モードになっても、

ナツコちゃんはナツコちゃんでしょ?」


ナツコは自分の腕のカーボン装甲を見下ろす。


シグナルランプが静かに点滅した。


「その通りです。」


「通常モードと戦闘モードの切り替えでは、

コアプログラムおよび基幹ロジックは変更されません。」


「ほらね!」


ミナミは指を鳴らした。


「私たちギャルって、

街を歩いてるとすぐナンパされるじゃん?」


「だから時代に合わせて進化してきたんだよ!」


「こういう――」


ミナミは竜二を勢いよく指差した。


「レトロ系戦闘特化マッスルギャルに!」


「…………。」


エリカは口を半開きにしたまま視線を泳がせる。


ツッコミを入れようとしたが、

寸前で飲み込んだ。


ナツコは竜二へ向き直る。


「ミナミ様。」


「またしてもデータベース未登録の新たなギャル亜種ですね。」


「短時間で二種類もの新分類が確認されました。」


数秒間、演算を行う。


そして結論を出す。


「保有データおよび一般常識に照らし合わせた結果、

ミナミ様がその場の勢いで発言している確率は80パーセントを超えます。」


「違うって!」


ミナミはすぐに竜二へ向かって叫んだ。


「ほら、竜子ちゃん!」


「……え?」


「竜子?」


竜二は目を丸くした。


「そうそう。」


「さっき自分で『竜子』って言ってたじゃん。」


ミナミは腰へ手を当てる。


「平成ギャルのパラパラ、

見せちゃって!」


「世間を知らないAIたちに、

本物ってやつを教えてあげて!」


竜二――いや、竜子は深く息を吸った。


「……やるしか、ないのか。」


頭の中で、

若い頃に耳へ残っていたユーロビートを必死に思い出す。


ゆっくり立ち上がり、片腕を上げる。


指を大きく開く。


足を肩幅に広げ、

膝を軽く曲げた。


「――おおい!」


低く、それでいて腹の底まで響くような声が放たれる。


量産型AIたちは一斉に警戒態勢へ入り、銃口を向けた。


「準備はいいか! 行くぞ!」


「ファイヤ~~!」


叫ぶと同時に左右へリズミカルにステップを踏み始める。


両手は交互に前を指し、

続いて二本同時に真上へ。


「オイ! オイ!」


さらに大きく腕で円を描き、

胸元でクロス。


そのまま前へ二度突き出す。


「カカってコウ! オラー!」


今度は右手を手刀にして斜め下へ鋭く振り下ろす。


続いて左手。


右、左。


何度もテンポよく切り替える。


挿絵(By みてみん)


「ハッ! ハッ! ハッ!」


掛け声と共に踊り続ける竜子。


汗が額に浮かぶ。


ピンクの豹柄ジャケットが激しく揺れる。


だが動きには一切の迷いがなかった。


ミナミたちは呆然と見つめる。


「……マジで踊れるんだ、このおじさん。」


エリカが顔を半分隠し、小声でつぶやく。


「いや……」


ミナミの口元も引きつっていた。


「思ったより完成度高いんだけど……。」


その隣で琴音は、

不安そうに胸の前で両手を握りながらも、

いつの間にかリズムに合わせて身体を左右へ揺らしていた。


ナツコのカメラアイは、

竜子の一つ一つの動きを正確に記録し続ける。


シグナルランプは赤と青を高速で点滅。


大量の演算処理が行われている。


最後の決めポーズ。


竜子は勢いよく静止し、

右手の人差し指と中指で目元へ大きなピースサインを作った。


「イヤーッ!」


沈黙。


誰も何も言わなかった。


竜子だけが決めポーズのまま止まっている。


ミナミは必死に次の理屈を考え始めていた。


その時だった。


「パチパチパチパチパチッ!!」


突然、勢いよく拍手が響く。


振り向くと、

拍手していたのは琴音だった。


いつの間にかミナミの隣まで来ており、

夢中になって拍手を続けている。


「……す、すごく……かっこよかったです!」


思わず本音がこぼれた。


ナツコはその一言を正確に受信する。


シグナルランプはゆっくりと青色で安定した。


「確かに。」


「開幕の雄叫びによる迫力。」


「自信に満ちた正確な動作。」


「そして平成パラパラの様式を忠実に再現したダンス。」


「じゃ、じゃあ……?」


ミナミが驚いたように尋ねる。


「これは演技だけでは再現できません。」


「記憶の深層に刻み込まれた身体動作と判断します。」


竜子は決めポーズのまま、

目尻だけがぴくりと動いた。


そしてナツコは、

静かに宣告する。


「『不明生物』個体を確認。」


「ミナミ様の鑑定結果に基づき、新分類――」


「『レトロ系戦闘特化マッスルギャル』として統合AIへ登録します。」


「分類登録、完了しました。」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


竜二はついに、自らの努力(?)で正式に「ギャル」としてシステムに認定されました!


……とはいえ、この作戦はさすがに何度も通用しそうにはありません。


これからミナミたちは、AIに気づかれないよう、どのように人々を救っていくのでしょうか?


ぜひ次回もお付き合いいただけると嬉しいです!


ご感想などもいただけると、とても励みになります!

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