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第5話 正体不明の生物、出現

純白の高層ビル。


VIG(Very Important Gyaru)ルーム。


「はぁーっ! マジ疲れたぁ!」


バンッ、と勢いよくドアを開けるなり、

エリカは真っ先にソファへダイブした。


その後ろから、ミナミ。


そして、スクールバッグを胸に抱きしめたままの琴音も、

おずおずと部屋へ入ってくる。


「うん……さっきまで緊張しっぱなしだったからさ……」


「気が抜けたら一気に疲れたかも」


ミナミもため息をつきながら、

ソファの反対側へ倒れ込んだ。


「その……あの……」


琴音だけは、まだ立ったままだった。


両手でバッグをぎゅっと抱き締めたまま、

部屋の真ん中で落ち着かなさそうに周囲を見回している。


ピンク色の間接照明が、

彼女の紫色の髪を不思議な色に染めていた。


「わ、私……本当に……ここにいてもいいんでしょうか……?」


「あ?」


エリカは横目すら向けない。


「何言ってんの?」


「す、すみません……」


「やっぱり……私、隅っこの方にいた方が……」


そう言いながら、琴音は部屋の大きなクローゼットへ視線を向けた。


「クローゼットの中とかでも大丈夫ですし……」


「バカじゃないの?」


エリカが呆れたように言う。


「さっきナツコちゃんに『仲間です』って言っといて、

帰ってきたらアンタだけクローゼットに押し込めるとか」


「そんなことしたら、

AIが『ギャルって陰湿ないじめっ子なんだ』って学習するでしょ?」


「そしたら今度はギャルの方が再教育施設送りじゃん」


「ひっ……」


「そ、それは……」


琴音はさらにバッグを抱き締めた。


「琴音ちゃん、気にしなくていいよ」


ミナミがソファの上で身体を起こす。


「エリカちゃん、口悪いけどさ」


「さっきナツコちゃんに保証するとき、

全然迷わなかったんだから」


「琴音ちゃんが『陰キャギャル』なら、

この子は『ツンデレギャル』だよ」


「うるっさいなぁ! バカミナミ!」


エリカは近くにあったピンク色のクッションを投げつけた。


「ぶへっ!」


クッションは見事にミナミの顔面へ直撃する。


「痛っ!」


「何すんのさ!」


ミナミも負けじとクッションを投げ返す。


「そっちが悪いし!」


「うわっ!」


ぽすっ。


ぽふっ。


二人のクッション戦争が始まった。


その光景を、

琴音は呆然と見つめていた。


そして。


「……ぷっ」


思わず吹き出す。


「ふふ……っ」


「くくっ……あはは……!」


肩を震わせながら笑い出してしまう。


その笑い声に、

ミナミとエリカの動きが止まった。


二人が同時に琴音を見る。


「この子さぁ」


エリカが眉をひそめた。


「泣いたり笑ったり……ついに壊れた?」


「変なこと言わないの」


ミナミが肘でエリカを小突く。


視線を向けられた琴音は慌てて笑いを堪えた。


「す、すみません……」


「だって……さっきまで、

強制収容されそうだったのに……」


「今は……こんな風に、

二人がくだらないことでケンカしてて……」


「なんだか……安心しちゃって……」


深呼吸を何度かして落ち着くと、

琴音は深々と頭を下げた。


「……助けてくれて、ありがとうございました」


「星野さん……赤木さん……」


「いやいや! あれ見たら助けるでしょ普通!」


ミナミが照れくさそうに頭をかく。


「普通じゃないのはアンタだけでしょ」


エリカがツッコむ。


「でも……本当に感謝してます」


琴音はもう一度頭を下げる。


「私、あんまり役に立たないかもですけど……」


「できることなら頑張ります……」


「じゃあまず!」


ミナミが途中で遮った。


「自己紹介からやろ!」


「私は星野ミナミ!」


「これからはミナミちゃんって呼んで!」


そう言って右手を差し出す。


エリカも苦笑した。


「赤木エリカ」


「エリカちゃんでいいよー」


琴音は差し出された手を見つめる。


少しだけ迷って。


「……九ノ瀬(ここのせ)琴音(ことね)です」


視線を逸らしながら、小さな声で付け加えた。


「……琴音ちゃん」


「へへっ」


ミナミは嬉しそうに笑う。


そして、その手をぎゅっと握った。


「よろしくね、琴音ちゃん!」


「そうそう」


エリカもソファに寝転がる。


「これからは一緒にバカやろーよ」


「そんな固くならなくていいって」


「メイド役なら、ナツコちゃんいるし」


「……あっ!」


ミナミが急に起き上がった。


「そういえば!」


「ナツコちゃん、途中で緊急通報が来たって言ってたよね?」


「何かあったのかな?」


「別にいいじゃん」


エリカは気だるそうに答える。


「AIにトラブルとか、むしろ歓迎だし」


「いっそ宇宙人でも攻めてきて、

全部ぶっ飛ばしてくれればいいのに」


その時だった。


ウィーン。


電子スライドドアが勢いよく開く。


ナツコが早足で入ってきた。


表情こそ変わらない。


だが、

頬の涙ぼくろのような信号灯は赤く点滅している。


「ミナミ様、エリカ様、琴音様」


「ん?」


「どうしたの、ナツコちゃん?」


エリカが身体を起こした。


「緊急事態が発生しました」


「えー、またぁ?」


「今度は何?」


ナツコのカメラアイが三人を順番に見渡す。


「本施設内に、正体不明の生物が出現しました」


「データベースの分類外に存在する生命体です」


「統合AIより、

VIGの皆様へ緊急確認要請が出ています」


「──至急、現場へ向かってください」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


ようやくギャルたちの輪に溶け込み始めた琴音。

VIGルームにも少しずつ居場所ができてきた……はずだったのですが。


突如として現れた「正体不明の生物」。


AIですら正体を特定できない存在とは、一体何者なのでしょうか?


そして、この出来事によって世界の見え方は変わるのか。

それとも、もっととんでもない方向へ転がっていくのか。


ぜひ次回もお付き合いいただけると嬉しいです!


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