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第4話 地雷系コミュ症陰キャ特化型ギャル(?)

ミナミは全力で走り、

角を曲がった。


すると路地の先に。


数体の量産型AIが銃を構え、

一人の少女を取り囲んでいた。


青緑色のパーカー。


地面に膝をつき、

茶色いスクールバッグを抱き締めながら震えている。


「ひっ……うぅ……」


少女は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、

小さく嗚咽を漏らしていた。


「やめて!」


ミナミが飛び込む。


量産型AIたちのカメラアイが一斉に彼女へ向けられる。


その瞬間。


動きは止まった。


しかし、包囲網は解かれない。


ミナミは半ば強引に量産型AIを押しのけ、

少女の前へ駆け寄った。


「大丈夫!?」


しゃがみ込み、顔を覗き込む。


少女が涙目で顔を上げた。


そして。


「……え?」


ミナミは目を見開く。


「琴音ちゃん……?」


「星野……さん……?」


九ノ瀬琴音。


同じクラスの、

いつも教室の隅で一人パソコンを触っていた陰キャの少女だった。


「うぅぅぅ……!」


琴音はスクールバッグを放り出し、

そのままミナミに抱きついた。


「星野さんっ……! た、助けてぇ……っ! 怖かったぁ……!」


「大丈夫、大丈夫!」


ミナミは琴音を抱き締めながら、

量産型AIたちを睨みつけた。


「ねぇ! 誰がリーダーなの!?」


「うちのクラスメイトに何してんの!?」


しかし、量産型AIたちは無言。


ただ包囲網を維持したまま直立している。


「ミナミ様」


外からナツコの声が響く。


量産型AIたちが一斉に道を開き、

ナツコが中へ入ってきた。


「無駄です」


「量産機はプリセット命令のみを実行します。

音声機能も搭載されておりません」


ミナミはナツコを睨む。


「じゃあナツコちゃんが答えて!」


「この子に何するつもりなの?」


ナツコの信号灯が淡く点滅した。


「超進化の定義に適合しない人類を選別します」


「……は?」


「ミナミ!」


エリカも追いついてきた。


包囲網の中に飛び込むと、

ミナミにしがみついている琴音を見て目を丸くする。


「えっ?」


「うちのクラスの陰キャオタクじゃん……」


エリカが思わず呟く。


しかし、隣のナツコは聞き逃さなかった。


「はい」


「分析結果でも、

その分類は超進化の定義に適合しておりません」


「統合AIの指示により、

強制収容および進化教育を行います」


「えぇ……?」


エリカの口がぽかんと開く。


「強制収容って何……?」


「ヤバすぎなんだけど」


「人類の超進化のために必要な措置です」


ナツコの信号灯がオレンジ色に変わる。


すると、量産型AIたちが再び前へ出た。


その機械の手が、琴音へ伸びる。


「ひっ!」


琴音は泣きながらミナミへしがみつく。


「いやぁっ!」


「ふざけないで!!」


ミナミが叫んだ。


「進化とか知らない!」


「この子は私たちの友達なんだから!」


ミナミはそっと琴音の肩を離すと、


勢いよく琴音のパーカーのファスナーを下ろした。


その下から現れたのは、

自分たちと同じJK制服。


「ほら!」


「琴音ちゃんだってJKじゃん!」


「私たちの仲間なんだよ!」


ナツコの信号灯が点滅する。


しかし。


「申し訳ありません、ミナミ様」


「同級生であることは確認できました」


「しかし、『ギャル族』の定義には適合していないため──」


「誰がギャルじゃないって?」


エリカが髪をかき上げながら前へ出た。


「アンタたち、ギャルの定義古すぎ」


そう言って琴音を指差す。


「この子みたいなのはさぁ……」


「『地雷系コミュ症陰キャ特化型ギャル』だから」


「……へ?」


琴音がぽかんとする。


「わ、私……ギャル?」


「『地雷系コミュ症陰キャ特化型ギャル』……マジで?」


ナツコの信号灯が青く高速点滅した。


深層思考モード。


明らかに処理負荷が上がっている。


エリカはすぐミナミへ目配せした。


ミナミも察する。


「そ、そう!」


「私たちは本物のギャル! VIGだよ!?」


「ギャルのことならAIより私たちの方が詳しい!」


「一目見ればわかる!」


「琴音ちゃんもギャル!」


ナツコは沈黙した。


信号灯だけが点滅している。


その間。


ミナミは琴音の手を握ったまま、

いつでも逃げ出せるよう半身を低くしていた。


三十秒。


異様に長く感じる沈黙。


そして。


ナツコの信号灯が安定した。


全員が息を呑む。


「──統合AIの分類は、正確であると推測されます」


ミナミの表情が曇る。


しかし。


「一方で、二名のVIGによる新たな知見と定義も尊重されるべきです」


「ミナミ様」


「エリカ様」


「あなた方はVIGとしての権限を賭けて、

その定義の正しさを保証しますか?」


カメラアイが二人を見つめる。


僅かな表情の変化すら見逃さないかのように。


「当たり前じゃん」


エリカは平然と言った。


「ギャルってさ、思ったことハッキリ言う種族なんだよ?」


「嘘なんかつかないし」


「うん!」


ミナミも琴音を支えながら立ち上がる。


「琴音ちゃんはギャル!」


「アタシが責任持つ!」


「了解しました」


ナツコは静かに頷く。


軽く手を振ると、量産型AIたちは一斉に退いた。


「統合AIへ報告します」


「VIG権限保証による、新形態ギャルの存在を確認」


「『地雷系コミュ症陰キャ特化型ギャル』として分類を更新します」


「権限保証」という言葉に、

エリカの目が一瞬だけ揺れた。


だが、すぐにいつもの気だるい顔へ戻る。


琴音はまだ事態を理解できていない様子だった。


ミナミが数歩進んだところで、

地面に落ちているスクールバッグに気付く。


「琴音ちゃん、これ!」


「忘れてるよ?」


「あっ……!」


「ありがとうございま……っ、うぅ……ぐすっ……」


琴音はバッグを胸に抱き締め、


涙と鼻水をぐしゃぐしゃに拭った。


「時間です」


ナツコが告げる。


「渋谷ショッピングは終了となります」


「ミナミ様」


「エリカ様」


「そして──琴音様」


「どうぞVIGルームへお戻りください」


挿絵(By みてみん)


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


いつも教室の隅で一人パソコンを触っていた陰キャの琴音。

まさか自分が「地雷系コミュ症陰キャ特化型ギャル」として認定される日が来るなんて、

本人も想像していなかったかもしれません……。


やっぱりギャルって最強なのでしょうか?


ともあれ、本日よりVIGルームに新メンバーが加わりました!


これからますます賑やかになっていく(?)彼女たちの日常を、

引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!


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