表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/15

第15話 ギャル in 教室

「マジで!? ナツコちゃん!」


ミナミは思わずナツコの肩を掴み、

ぶんぶんと揺さぶった。


「は、はい……ミナミ様……」


揺られながら、

ナツコの声がぶつ切りになる。


「明日の……朝に……」


「リムジンを手配し……皆様を収容施設へ……

お送りいたします……」


その言葉を聞いて、

ミナミはようやく手を止めた。


「明日の朝か……」


ミナミの視線が自然と竜二と琴音へ向く。


二人も何か言いたげに顔を見合わせた。


「その……」


琴音が何か言いかけて口を閉じる。


エリカはそんな空気をすぐに察した。


「まあ、そんなに急がなくてもよくない?」


そう言いながら二人のそばへ歩み寄る。


「明日はとりあえず、

あたしとミナミだけで行けばいいじゃん」


「最初の授業だし、

先生が何人もいる必要ないでしょ?」


「エリカ様のお考えは合理的です――」


ナツコは一瞬だけ演算を挟んだ。


「では明日の午前は、

ミナミ様とエリカ様のみ収容施設へお越しください」


「本日はどうぞゆっくりお休みください」


ナツコは小さく一礼する。


その直前、鏡に映る自分の姿をちらりと見た。


だが制服もメイクも直さない。


昨夜のギャル化仕様のまま、

VIGルームを後にした。


電子ドアが閉まった瞬間。


「はぁぁぁ……!」


琴音がようやく肺の中の空気を吐き出した。


ノートパソコンを胸に抱え込む。


「……今回は本当に連れて行かれるかと思った……」


「大丈夫大丈夫」


エリカが肩をぽんと叩く。


「まあ毎回ギリギリだけど、

今んとこ、こっちが押してるじゃん?」


「そうだよ!」


ミナミも拳を握った。


「監視カメラの権限だってゲットできたし!」


「明日はあたしとエリカちゃんが収容所へ行って、

収容されてる人たちと接触する」


「琴音ちゃんとおじさんはここで監視映像を見ながら調査続行!」


「そうだな……」


竜二も頷いた。


握った拳に自然と力が入る。


「滅多にない機会だ」


「技術者たちを救い出す方法や……

もしかしたら妻の手がかりも見つかるかもしれない」


「あっ!」


突然、エリカが声を上げた。


「超重要なこと忘れてた!」


「え?」


ミナミが身構える。


「何? 計画に問題でもあった?」


するとエリカは頭を抱えた。


「ナツコちゃん、海鮮丼のこと忘れてるじゃん!」


「昨日の晩ご飯に出すって言ったのに!」


「海鮮丼どこ!?」


「そっち!?」


ミナミが思わず叫ぶ。


「超重要でしょ!?」


エリカは本気だった。


「まあ……」


竜二が頭を掻く。


「昔エンジニアから聞いたことがあるんだが……」


「優先度の高い処理が入るとさ」


「後回しにされたタスクが吹っ飛ぶことがあるんだよ」


その瞬間だけ。


琴音が顔を上げた。


「それはスレッド・プリエンプションです」


妙に力強い口調だった。


「そんな理由どうでもいいし!」


エリカが即座に切り捨てる。


「海鮮丼返してもらわなきゃ!」


そのまま出口へ向かおうとする。


「待って待って!」


ミナミが慌てて腕を掴んだ。


「せっかく上手くいったんだから!」


「今は余計なことしないで!」


「明日! 明日授業が終わってからにしようよ!」


エリカは唇を尖らせたまま数秒考え、


「……わかった」


しぶしぶ立ち止まる。


「でも明日ナツコちゃんに会ったら絶対倍返しだからね」


誰も返事をしなかった。


その場には妙な静寂だけが残った。



    ◇


翌日。


進化教育収容所前。


黒いリムジンから降りたミナミとエリカを、

ナツコが出迎えていた。


だがミナミは思わず目を瞬かせる。


ナツコの姿が昨日のままだったからだ。


制服自体はきちんと着ている。


しかし胸元のボタンは二つ開き。


リボンも少し斜めにずれている。


そして何より。


涙ぼくろ型インジケーターの周囲には、

昨日のピンク色のチークがまだ残っていた。


二人を認識した瞬間。


インジケーターのLEDが、

ほんの一瞬だけ桃色に点滅する。


「ミナミ様、エリカ様」


「進化教育収容所へようこそ――」


「ナツコちゃん……?」


ミナミは何か違和感を覚えた。


だがその前に。


「ナツコちゃーん!」


エリカが食いついた。


「海鮮丼は!?」


「一晩ずっと楽しみにしてたんだけど!?」


ナツコは首を傾げる。


わずか〇・五秒。


記録領域を検索し、保留状態のタスクを発見した。


カメラアイの絞りがわずかに開く。


「あ――まずっ」


「マジで忘れてた」


直後。


何事もなかったかのように事務的な口調へ戻った。


「大変申し訳ございません、エリカ様」


「ただちにタスクキューへ再登録いたします」


「海鮮丼は本日の授業終了後に支給されます」


「お二人は『3A』教室へ移動してください」


「ふーん……」


エリカは腕を組んだ。


「まあ、それなら許す」


「行こ、ミナミちゃん」


「う、うん……」


ミナミは苦笑しながら後を追う。


二人は廊下を進み、


「3A」と表示された教室の引き戸を開いた。


教室の中は静まり返っていた。


十数人ほどの収容者が整然と席についている。


そのほかにも、数体の量産型AIが教室の各所に立ち、


無言のまま収容者たちを見張っていた。


最前列には、仕立ての良いスーツを着たキャリアウーマン風の女性。


その隣には、どう見ても堅気には見えない強面のスキンヘッド男。


後方には眼鏡をかけた委員長タイプの少女。


エプロン姿のまま状況を理解できていない中年主婦。


年齢も職業も性格も。


何もかも違う人々。


そんな全員の視線が、

今まさに入ってきたミナミとエリカへ集まっていた。


教室の空気がぴたりと止まる。


エリカがそっとミナミの袖を引いた。


「……ミナミちゃん」


「なに?」


「この海鮮丼さ」


エリカは教室を見回す。


「思ったより全然ラクに食べさせてもらえなさそう」


ミナミはゆっくり息を吸った。


目の前にいるのは、敵ではない。


けれど味方でもない。


助けを求めているのか。


それとも諦めているのか。


まだ何もわからない。


「うん」


ミナミは小さく頷いた。


「――やるしかないね」



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


今回、ナツコちゃんはエリカちゃんとの約束だった海鮮丼をすっかり忘れていました。


AIを創作に使っている方なら、

「それ前に言ったよね!?」とツッコミたくなった経験、

一度はあるのではないでしょうか(笑)。


ちなみに、もしこの作品が完全にAIだけで生成されていたら、

海鮮丼の件は数話後に回収されることなく、

そのまま忘れ去られていたかもしれません。


つまり、この海鮮丼は人類作者による立派な伏線です(?)


AIに支配された世界でも、海鮮丼だけは絶対に忘れない。


そんな作品でありたいと思っています(笑)。


よろしければ、AIに約束を忘れられたエピソードや、

「どんな状況でもこれは譲れない!」というこだわりがあれば、

ぜひ感想やコメントで教えてください!


応援や評価も、とても励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ