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第11話 進化教育の衝撃映像

「……足音! もうドアの前まで来てる!」


エリカは声を潜め、

電子ドアへぴたりと張り付いた。


「琴音ちゃん! まだ!?」


ミナミは焦ったように琴音の肩を掴む。


「も……もう少し……!」


画面のプログレスバーは九〇%。


あと少し。


本当にあと少しなのに、

最後の数%がなかなか進まない。


「くっ……!」


その時だった。


竜二が勢いよく顔を上げ、

電子ドアを指差した。


「このドア……鍵が掛けられる!」


「横の赤いノブを押して、そのまま回せ!」


「えっ?」


エリカは反射的にノブへ手を伸ばす。


しかし、押す寸前でぴたりと止まった。


「私たち、一度も鍵なんて掛けたことないじゃん……。」


「今さら鍵なんかかけたら、逆に怪しくない?」


「言い訳はあと!」


ミナミが叫ぶように言った。


「今はとにかく時間稼ぎ!」


「……っ!」


エリカは迷いを振り切り、

赤いノブを押し込んで回した。


ピッ。


電子音が鳴り、

施錠ランプが点灯する。


その直後。


廊下の足音がぴたりと止まった。


「ミナミ様? エリカ様?」


ドア越しに聞こえてきたのは、

ナツコの声だった。


「ドアに施錠されていますね。」


「え?」


エリカはとぼけた声を出す。


「これって鍵だったの? 

知らなかったぁ。」


「エリカ様」


ナツコは落ち着いた声で続ける。


「量産型が物資を運んできました。」


「解錠をお願いします。」


「ごめんね、ナツコちゃん!」


エリカはノブをがちゃがちゃ回しながら叫ぶ。


「どうやって開けるの? これで合ってる? 

全然開かないんだけど!」


わざと大げさに苦戦するふりをしながら、

必死にミナミたちへ目配せを送る。


(もう限界だから、早く……!)


しかし振り返った彼女は、思わず息を呑んだ。


三人とも、ノートパソコンの画面に釘付けになっていた。


「……何、これ。」


画面に映っていたのは、小さな個室。


監視カメラの映像らしい。


壁には巨大なディスプレイ。


質素な机とベッド。


そして、量産型AIと向かい合う、一人の若い男性。


ワイシャツにネクタイ姿の会社員らしき男だった。


その男は、

スコアボードへ向かってぎこちない笑顔を作り、


頬を膨らませ、

ピースサインを決める。


まるでギャルの自撮り写真のようなポーズだった。


数秒後。


電子スコアボードが点灯する。


ギャル度 21/100

表情が硬く、不自然です。

判定:不合格


その瞬間。


量産型AIは机の上の食事を機械的に回収し、

何事もなかったかのように部屋を出て行った。


残された男は、

その場に崩れ落ち、

声を殺しながら泣き始める。


「……これが。」


ミナミは拳を握り締めた。


「これが、進化教育……?」


「ひどすぎるだろ……。」


竜子姿の竜二も歯を食いしばる。


「意味が分からない……。」


琴音は画面を見つめたまま、


自分の身体を抱き締めるように腕を回した。


肩が小刻みに震えている。


「わ、私だったら……。」


「きっと毎日、ご飯も食べられない……。」


「ちょっと!」


エリカが振り返って叫ぶ。


「もういいから! 早く片付けて!」


その言葉と同時だった。


ピッ。


電子ドアから解錠音が鳴る。


次の瞬間、

ドアがゆっくり開いた。


そこにはナツコと、

数体の量産型AIが立っていた。


「エリカ様。」


ナツコが室内へ足を踏み入れた瞬間、

琴音は反射的にノートパソコンを閉じた。。


パタンッ。


ナツコの涙ぼくろ型インジケーターが数回点滅した。


いつもより、

ほんのわずかに点滅間隔が短い。


しかしすぐに、

青い安定光へ戻った。


「エリカ様が操作方法をご存じないようでしたので。」


「こちらで権限を使用し、解錠しました。」


「ご了承ください。」


「あ、あはは……。」


エリカは照れ笑いを浮かべる。


「ほんと分かんなくてさぁ。」


ナツコはそのまま、

ミナミたちのほうへ視線を移した。


その頃には琴音はノートパソコンを閉じ、

何事もなかったかのように椅子に座っている。


その後ろでは、

ミナミと竜子が櫛を持ち、

琴音の髪を梳かしていた。


「ほらほら琴音ちゃん。」


ミナミが笑う。


「この髪、ちゃんとお手入れしなきゃダメじゃん。」


「そうそう♪」


竜子も無理やり高い声を作る。


「女の子は髪が命よぉ~。」


「きっとずっと放ったらかしだったのねぇ。」


「は、はい……。」


琴音は居心地悪そうに小さく頷く。


されるがまま髪を整えられながら、

恐る恐るナツコの様子を窺った。


幸い、

ナツコは特に違和感を示さなかった。


「失礼します。」


量産型AIが箱を抱えて部屋に入る。


箱はあっという間に展開され、

新しいベッドが二台。


さらにパーティションまで組み立てられていく。


四人それぞれのプライベートスペースが、

ものの数分で完成した。


作業を終えた量産型たちは、

無駄な動き一つなく部屋を後にする。


「見ただけで分かる……」


竜子が思わず呟く。


「俺たちが開発してた頃とは、動作モジュールの完成度が桁違いだ」


「その通りです」


ナツコは竜子を見る。


「統合AI管理後、量産型の動作モジュールは再設計されました。」


「ただし『数倍』ではありません。」


「量産型の製造コストも考慮した結果、性能向上は約四十八%です。」


そして。


ナツコの視線は、

机の上に置かれたノートパソコンへ移った。


涙ぼくろ型インジケーターが、

小さく点滅する。


「それでは……琴音様。」


「は、はい!」


琴音はびくっと背筋を伸ばした。


「現在、人類が利用できるインターネットは完全に遮断されています。」


ナツコのインジケーターが、

ゆっくり橙色へ変わる。


レンズの焦点は、

琴音から一瞬たりとも外れない。


「つまり、通常であれば。」


「ネットワークに接続できない個人用コンピューターは、

使用できないものと判断されます。」


琴音は俯いた。


アニメステッカーだらけのノートパソコンに震える手を重ねた。


「さらに先ほど。」


ナツコは静かに続ける。


「室内より未認証の通信パケットを検知しました。」


首がわずかに傾く。


内部の冷却ファンが、

かすかな駆動音を立てた。


(まずい……!)


ミナミの背中を冷たい汗が伝う。


エリカも竜子も、

顔色を失ったまま何も言えない。


ナツコは琴音の前まで歩み寄る。


静かに見下ろした。


涙ぼくろ型インジケーターは、

赤と橙を高速で行き来している。


その光が、

青ざめた琴音の頬を照らした。


「説明していただけますか。」


ナツコは琴音の目をじっと見つめた。


沈黙。


誰も息をしなかった。


「――先ほど、

このパソコンで何をしていたのですか?」


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― 新着の感想 ―
進化教育、想像してたより普通に地獄で笑えないやつでした。ギャル度21点でご飯没収って、ちょっとしたお仕置きどころじゃないですわ。そして725こわー! これ絶対もう全部バレてるやつぅ!静かに「何をしてい…
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