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ヘルデンリート・フィナーレ Das Heldenlied Finale ~Mein Bester Freund~  作者: 野原 ヒロユキ
俺は新しい時代の扉を開ける Ich will die Tür der neuen Zeit aufmachen
8/18

サタナエルの憎しみ

夜、サタナエルはPCを操作する母に近づいた。

その顔にはどこか覚悟があった。

「なあ、母さん……」

「どうしたの、サタナエル?」

「ずっと、ずっと聞きたかったことがあるんだ」

「何?」

サタナエルはしばらく黙った。

それには覚悟が必要であった。

「俺の父親は誰だ?」

「フッフフフフ……」

ベレニーチェは妖艶な笑みを浮かべた。

サタナエルは不安になった。

これは何か邪悪なものを秘めているのではないか?

「どうしたの? セリオン・シベルスクに当てられた? そんなことはあなたには関係ないことよ」

その声はぞっとするほど冷たかった。

「俺はどうしても真実を知りたいんだ。教えてくれ」

「いいでしょう……あなたの父は〇〇〇様よ」

「なっ!?」

サタナエルは驚愕した。

それはサタナエルには思いもつかないことであった。

それは本当なのか?

「それは事実なのか!?」

「フッフフフフ、何動揺してるの? それがあなたが知りたかったことよ。あなたは〇〇〇様の息子」

「俺は、俺は幼いころから自分が特別だと思っていた! だが、それはこんな意味じゃない!」

「あなたは特別なのよ。あなたは〇〇〇様の息子なのだから、セリオン・シベルスクの敵となる」

「違う!」

サタナエルは野太刀を取り出した。

そしてそれでベレニーチェの心臓を刺した。

サタナエルは激高していた。

「俺は……俺は……」

サタナエルの心は憎しみに支配された。




「セリオン! 大変!」

「どうした、フィリア?」

「サタナエルが! サタナエルが!」

フィリアは息を切らしてセリオンがいる宿屋まで来た。

どうしたんだろう? フィリアがこんなに取り乱すなんて?

「サタナエルが、村人を虐殺したの!」

「なっ!?」

セリオンは驚きを隠せなかった。

サタナエルはそんなことをする奴じゃない。

何かの間違いじゃないか?

「とにかく、外に出て!」

セリオンは宿屋の外に出た。

「これは……」

セリオンは絶句した。

そこは死の世界だった。

氷と雪に覆われた世界。

これは明らかにサタナエルによるものだ。

氷雪が村人を包み込む。

セリオンは倒れている村人に近づく。

その人は血を流して倒れていた。

セリオンは傷を調べているのだ。

セリオンにはこれがサタナエルによるものではないという一途の希望を抱いていた。

親友がそんなことをするはずがない。

そう信じたかったのだ。

その傷は刀によるものだった。

それも大型の刀だ。

サタナエルの野太刀で間違いなさそうだ。

セリオンは村人の目を閉じた。

「これはサタナエルに間違いなさそうだな……いったい何があった?」

「わからない。突然、人が変わったようになって……」

「ベレニーチェさんは?」

「私が行った時にはもう……」

「そうか……」

「セリオン……」

「サタナエルはどこだ?」

「サタナエルは山頂に行ったよ」

「わかった。サタナエルとは俺が話をつける。フィリアはここにいるんだ」

「う、うん……」

セリオンはサタナエルを追ってニーフェル山の山頂に行った。




セリオンは山頂に向かった。

そこにはサタナエルが立っていた。

「サタナエル……」

セリオンはどう声をかけていいかわからなかった。

親友が故郷の村人を虐殺した。

サタナエルの罪は決して許されない。

だが、セリオンには親友がそんなことをしでかしたことがいまだにわからなかった。

いったいなぜ、サタナエルは村人を殺した?

これは悪い悪夢であってくれ。

「セリオンか……」

サタナエルはただ崖の上でたたずんでいた。

セリオンはそれ以上の言葉をかけられない。

言うべきことは簡単だ。

サタナエルを非難すればいい。

だが、セリオンののどから弾劾の言葉は出されなかった。

サタナエルは背を見せたまま振り返らない。

その代わり出た言葉は。

「サタナエル……いったい何があったんだ? 教えてくれ」

「……」

「何も言わないのか?」

その時サタナエルが振り返った。

手には血が付いた野太刀が握られていた。

「セリオン……私はおまえの敵だ」

「敵? なぜだ? 友は敵じゃない」

「友? フハハ、フッハハハハハハハハハハハハ!」

サタナエルは声を上げて笑った。

セリオンにはサタナエルがどうしてそんなことをするのか分からない。

「セリオン……青き狼、英雄、救済者、そして神の子。それがおまえだ」

「ああ。そうだ」

「私の父は人間じゃない」

「人間じゃない? どういうことだ?」

「私は悪魔の子なのだ。私の父は悪魔だ」

「それで、母を、村人を殺したのか?」

「悪魔は世にあだなす。私がもたらすのは死と殺戮だ」

「サタナエル……」

セリオンはサタナエルの目を見た。

そこにあるのは憎しみだった。

憎しみの炎が彼を支配している。

愛する友は敵となった。

「セリオン、武器を出せ。私と戦え」

サタナエルが野太刀を向ける。

「友とは戦えない!」

セリオンは大剣を出すが、セリオンにはサタナエルと戦う意思がない。

「フッ!」

サタナエルはセリオンに攻撃を仕掛けてきた。

サタナエルがセリオンを斬ってくる。

セリオンは大剣で防戦する。

これはサタナエルが自らセリオンに剣で攻撃させるためだ。

「くっ!? やめろ!」

セリオンはサタナエルを斬る気にはなれなかった。

セリオンの中ではいまだに友に剣を向けることへの忌避感があった。

サタナエルは剣のスピードを上げてくる。

サタナエルはセリオンのようなパワーファイターではない。

セリオンの武器は大剣だ。

これは叩き斬るのに適した武器だ。

それに対してサタナエルの武器は野太刀。

この武器は斬るスピードに主眼が置かれている武器だ。

セリオンは追いつめられる。

それでもセリオンはサタナエルに剣を振るうことができなかった。

「セリオン、ここで私を倒さなかったら、次に死ぬのはエスカローネだ。私は彼女を殺す」

「!?」

「どうする? エスカローネを助けるにはここで私を殺すしかないぞ?」

「そんなことはさせない!」

セリオンは大剣を本気で振るった。

サタナエルが吹き飛んだ。

サタナエルはそのまま崖から川に落ちていった。

「はあ……はあ……はあ……」

セリオンは本気で殺すつもりで大剣を振るった。

そこにあったのは怒りだった。

セリオンは川を見る。

サタナエルの生死は不明だ。

「俺は……この手で友を……」

セリオンは自己嫌悪にさいなまれる。

セリオンは自分の手で友を殺した。

サタナエルはセリオンにとってかけがいのない親友だった。

それをセリオンは永久に失った。




セリオンは下山してきた。

朝日がセリオンの背を照らす。

氷雪は溶けていた。

「セリオン!」

「ああ、フィリア……」

セリオンは元気がなかった。

今まで起こったことは悪夢のようだ。

「サタナエルは?」

セリオンは首を横に振った。

「サタナエルは川に落ちた。生死は不明だ」

「そう……」

「それより、村人を火葬しよう。このまま死体を放置しておくわけにもいかない」

「うん、そうだね。セリオン?」

「どうした?」

「サタナエルのこと、ありがとう」

「いや、俺は自分の手で友を失った」

その後セリオンとフィリアは死体を広場で火葬した。

村人の埋葬を終えてからセリオンはネーベルハイムを去ることにした。

「フィリアはこれからどうするんだ?」

「私? うーん、シュヴェリーンに行こうと思っている」

「シュヴェリーンに?」

「うん、この村ではもう生活できないし、教会を頼ろうと思って」

「そうか。よければ、シュヴェリーンまで連れて行くぞ?」

「え? いいの?」

「ああ、俺はバイクで帰る。亜空間収納という魔術を俺は使える。亜空間の広さにもよるがいろいろと収納できるんだ」

「じゃあ、私、荷物をまとめてくる!」

「ああ、俺も準備をしておくよ」

こうして二人はシュヴェリーンに行くことにした。

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