闘牛団
闇がかすかな光に照らされている空間。
ここは闘牛団のアジトだった。
闘牛団はリザードマンを多数従える暴力組織だった。
この組織を率いるのはリント(Rind)というミノタウロスだった。
リントは机に脚を乗せてくつろいでいた。
「最近の調子はどうかね?」
「!?」
そこにいきなり、気配もなく一人の男が侵入してきた。
リントは内心の動揺を抑えて男に話しかける。
「何だ、『先生』か。びっくりさせるなよ」
「フッフッフ、その様子では暇を持て余しているようだな?」
『先生』と呼ばれた男は禿頭に黒いマントで全身を覆っている男だった。
彼は自らを闇の王『フューラー』と名乗った。
この男は闘牛団に接触すると、たちまちのうちに内部を掌握した。
今のリントたちは彼の言いなりである。
もっとも、彼らもそれにメリットがあるからこそ、協力しているのだが。
「最近、現れなかったじゃないか。そのせいで、部下たちは爆発寸前だ」
「そうかね。では、そろそろ次の獲物を狙ってもいいころだな」
「おっ、仕事の話しかい?」
「そうだ。街道をキャラバンが通る。そこを通る商人を襲撃するのだ。カネはたんまり手に入るぞ」
「そいつはうれしいねえ。血が猛る」
リントにとって襲撃は快感であった。
特に弱者をいたぶって殺すことはリントたちに無上の快感をもたらす。
次の襲撃を与えられて、リントは喜んだ。
それから闘牛団は外に出て、商人を襲撃した。
「ぎゃはははははは!」
「殺せ! 殺せえ!」
「がっはははははは!」
闘牛団のメンバーはいずれも『生き生きと』していた。
彼らには弱者をなぶることが快楽なのだ。
リザードマンたちは商人の護衛を殺しつくした。
後は商人を尋問してカネをいただくだけである。
「頼む! カネなら払う! だから、命だけは助けてくれ!」
「ヒャッハッハッハッハッハ! どうするう?」
「かわいそうだ、命だけは助けてやれよ」
「もっとも、その分カネはたんまりいただくがなあ!」
「わかった! カネは出す! 私には家族がいる! 私は死ぬわけにはいかないんだ!」
商人が必死に命乞いをする。
商人は締め上げれば、莫大なカネを出すだろう。
リザードマンたちはそれが分かっているからこそ、陰険な顔を浮かべる。
「じゃあ、まずは手持ちの利益を出せよ!」
「すぐに渡す!」
商人は馬車からカネが入ったケースを取り出す。
首都ではもはや硬貨は使われていないが、田舎では今でも硬貨が流通していた。
「ギャーハハハハハ! こいつはいいねえ!」
「おら! さっさと渡せ!」
「約束だ! 命は助けてくれ!」
「約束?」
「あーん?」
リザードマンたちは互いに顔を見合わせた。
それからおもむろにリザードマンは商人の心臓めがけて剣を突き刺した。
「がっ!? なっ! そんな!? 約束が、違う……」
「ギャーハッハッハッハッハ!」
「俺たちが約束なんてしたかあ?」
「お幸せな奴だなあ!」
商人はその場で崩れ落ちた。
リザードマンは商人の死を見届ける。
「クックック、やっているかね?」
「これは『先生』!」
「お疲れさまっです!」
そこに現れたのは闇の王フューラーだった。
彼はリザードマンの残酷さに満足を覚えた。
キャラバンは皆殺しにされていた。
誰一人生き残ったものはいない。
もし、生き残りがいるなら、それは逃亡に成功した者だけだろう。
「そろそろ次の目標を与えてもよさそうだな」
フューラーはリザードマンなどよりはるかに邪悪な笑みを浮かべたのだった。
「先生、パワーアップをお願いしますよ?」
「クックック、わかっているとも。そのために君たちには商人を襲わせたのだからな。君たちが強くなれば、ツヴェーデン軍でも太刀打ちできまい」
残酷な陰謀が始まっていた。
「うおおおおおおおお!? これは!?」
「クックック、どうかね? パワーアップの効果は?」
部屋の中でリントは雄たけびを上げた。
リントの体中から力がみなぎる。
こんなに気分が高揚するのは初めてだ。
「これはすごい! こんな力を持てば、ツヴェーデン軍なんて目じゃないぜ!」
「この程度で驚いてもらっては困る。私にかかれば君たちをさらに狂化できる!」
「へっへっへっへ! 先生よお、あんたの技術には感謝しているぜ? これで俺たちに勝てるやつはいない!」
「赤き祝福は気に入ってくれたかね? 次はシュヴェリーンだ。シュヴェリーンにいるセリオン・シベルスクを襲うのだ! 彼の血を採取すれば、君たちはこの地上で最強の存在になれる! そのためには、もっと強い人間を襲うことが必要だ! そしてもっともっと血を集めるのだ! そうすれば、私が君たちを最狂の戦士にしてやろう!」
だが、リントはセリオン・シベルスクと聞くと怯えを見せ始めた。
リントたち、闘牛団も『セリオン・シベルスク』の名は知っている。
「だがよう、先生。これ以上危ない橋は渡れないぜ。今だって十分危険なことをしているんだ。これでセリオン・シベルスクなんかに目をつけられたら、俺たちは破滅してしまう……ここいらで終わらせてくれねえか?」
リントの提案に、闇の王フューラーは非常に落胆した。
失望、そんな顔をする。
「ふう……協力しないというのか。君たちには失望した。だが、おまえたちにはこの程度で十分かもしれんな。だが、肝心なデータがそろっていない! 最強の戦士のデータが!」
「先生……あんた、俺たちを利用してやがったのか! 俺たちはセリオン・シベルスクには手を出さねえ! あんたとはここで縁を斬る!」
「フッ、無駄なことを。それでは無理やりいうことを聞かせるしかないな」
「何をする!?」
「クックック、君は従わなくとも、彼らはどうかな?」
フューラーの背後に、二人のミノタウロスとリザードマンたちが現れた。
「おい、おまえたち! どうした!?」
「クハハハハハハハ! 彼らには狂化の恩返しをしてもらおうと思ってね! さあ、どうする? 彼らをもとに戻してほしければ、私の言うことを聞くんだ」
「くそったれ!」
「セリオン・シベルスクを襲い、彼の血を手に入れろ」




