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ヘルデンリート・フィナーレ Das Heldenlied Finale ~Mein Bester Freund~  作者: 野原 ヒロユキ
俺は新しい時代の扉を開ける Ich will die Tür der neuen Zeit aufmachen
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サタナエル・モルティフェル

「……やるな、セリオン」

「サタナエル……これまでだ」

セリオンが大剣を突き付ける。

サタナエルは動じない。

彼は笑っていた。

「フッフフフフ……」

「? 何がおかしい?」

「私の力はこんなものではない。セリオン、おまえが強くなったように、私も進化したのだ」

「進化、だと?」

セリオンがけげんな目を向ける。

サタナエルが手を握りしめた。

その場に闇があふれる。

サタナエルは闇に包まれた。

「フフフフフ! フハハハハハハハハハ!」

サタナエルの哄笑が響く。

サタナエルから膨大な魔力が吹き出る。

それはあのマグノリア以上だった。

サタナエルがその姿を大きく変える。

サタナエルは膨れ上がり、その姿を巨大な異形の化け物へと変えた。

まるで、魚類のようなひれを持ち、直立する大きな魔物。

体の色は緑だった。

サタナエルの目が赤く開く。

左右の腕からサタナエルは氷の塊を降り注がせた。

サタナエル=ネプトゥヌス(Satanael-Neptunus)である。

「これは……なんて攻撃だ!」

セリオンは走ってそれをよける。

サタナエルは腕で攻撃してくる。

セリオンは後退して回避する。

セリオンは蒼気を放出した。

セリオンの大剣に蒼気がいきわたる。

セリオンは蒼気の斬撃を繰り出した。

セリオンの攻撃がサタナエルにヒットする。

サタナエルは胸に傷を作った。

だが、それもあっさりと再生する。

「この攻撃も効果がないか」

サタナエルが氷雪の嵐を巻き起こす。

もはや逃げ場はなかった。

セリオンは蒼気を噴き上がた。

それによって氷雪を無力化する。

セリオンはそのまま蒼気の大剣でサタナエルを斬りつけた。

サタナエルから出血が起きる。

彼の血は意外に赤かった。

だが、これほどの質量を持つ敵を攻撃するには半端な攻撃では通じない。

サタナエルに致命傷を与えるには、頭か、心臓か、いずれを狙う必要がある。

心臓の位置は不確定だが、サタナエルの頭は確定している。

セリオンはサタナエルの頭を狙うことにした。

サタナエルが腕を振るう。

巨大な腕から巻き起こる風がセリオンに吹き付ける。

セリオンは跳んだ。

狙いはサタナエルの額だ。

セリオンはサタナエルの額に蒼気の大剣をそのまま突き入れた。

「ぐおおおおおおおおおお!?」

サタナエルがもがく。

セリオンは確かな手ごたえを感じた。

サタナエルは巨大化したが、それがあだとなった形だ。

しかし、サタナエルはセリオンが思ったようにはいかなかった。

サタナエルの体は崩壊して行ったが、黒い粒子が新しく起こっていた。

サタナエルの銀色の髪に、人の上半身、脚に黒い翼を二対持つ、まるで水生動物のようなシルエット。

これがサタナエルの真の姿。

サタナエル=モルティフェル(Satanael-Mortifer)だ。

サタナエルが周囲に亜空間を広げた。

おそらく、サタナエルは全力で戦えるように亜空間へとセリオンをいざなったのだろう。

まるで、白い雲の上に浮かんでいるかのような空間だった。

名づけるなら、ミルヒ・シュトラーセだろうか。

サタナエルが手をセリオンに向けた。

セリオンの足元に魔力が集まった。

セリオンは本能的に後ろに跳んだ。

セリオンがいたところから黒い爆発が噴き上がった。

「くっ……なんて攻撃だ。あんなものをくらったら一撃でアウトだ」

セリオンは光を大剣に収束した。

セリオンは光の刃をサタナエルに飛ばした。

だが、それがバリアに弾かれる。

「!? バリアか!」

サタナエルは手に闇を集めた。

サタナエルから闇が放出される。

闇黒砲あんこくほう』だ。

セリオンは光を大剣にまとわせてそれを防ぐ。

「くうっ!?」

セリオンは押された。

セリオンは判断を間違えたと思った。

受け止めるのではなく、回避すべきだった。

だが、もう遅い。

サタナエルの闇がセリオンを包み込もうとする。

そこに、光が魔法陣の上から噴出した。

これは光の大魔法『聖光陣せいこうじん』だ。

セリオンがやったのではない。

セリオンは魔法は使えない。

ということは……。

「セリオン、助けに来たわ」

「エスカローネ?」

「私もこの空間に囚われたみたい」

「そうか。あいつは強いぞ?」

「セリオンといっしょなら負けないわ!」

「ああ、俺たちは二人なら、サタナエルに後れをとらない!」

「ラング・リヒト・シュペーア!」

エスカローネがハルバードの先端から光の刃を伸ばす。

長い光の刃がサタナエルに振りかざされた。

サタナエルはそれを魔法の盾で受け止める。

少なくとも、エスカローネの攻撃はバリアでは受けきれないということだろう。

でなければ、わざわざ魔法の盾を出す必要がない。

これは希望だった。

サタナエルにはこちらの攻撃は通じる。

サタナエルが上昇した。

サタナエルが闇の粒子を集めた。

これは『カスマ・エクスプロズィオーン』だ。

闇の粒子が爆発を引き起こす。

セリオンもエスカローネも左右に割れた。

セリオンが跳んだ。

そのまま大剣を振り下ろす。

サタナエルは片手でそれをガードした。

セリオンが下がる。

サタナエルは両手に魔力を集めた。

サタナエルから隕石が降り注がれる。

白い雲を埋め尽くすように、逃げ場がなくサタナエルは隕石を降り注がせた。

「うおあああああああ!?」

「きゃあああああああ!?」

この攻撃は二人に大きなダメージを与えた。

「はあ……はあ……はあ……」

「セリオン、大丈夫?」

「ああ、なんとかな。あんな攻撃を連続で出されたら、お終いだ」

「でも、さっきの攻撃は続かないわね? もしかして、連続では出せないんじゃないかしら?」

「だとしたら、次にあの攻撃が来るまでにサタナエルを倒さねばならないな」

「セリオン、連携技を試しましょう!」

「わかった!」

セリオンとエスカローネは近づいた。

エスカローネが金色の光をセリオンの大剣に宿らせる。

セリオンは跳んだ。

「はっ! くらえ! ゴルデン・ブルーフ!」

セリオンが金色の刃を次々とサタナエルに向かって撃ちだした。

サタナエルはバリアで対抗するが、それが破られる。

「今よ! セリオン!」

「ああ! 決める!」

セリオンは光の粒子を大剣に集めた。

セリオンは流れるようにサタナエルに斬りつける。

エスカローネが足場を作り、サタナエルを縦横無尽にセリオンが斬りつける。

セリオンの連携技『天地神気斬てんちしんきざん』であった。

サタナエルは上下、左右から縦横に斬られる。

セリオンはとどめの一撃をサタナエルの脳天に叩きつけた。

サタナエルは崩壊して行った。

白い雲の亜空間が壊れて、元の空間に戻る。

セリオンたちは高台にいた。

「亜空間が消えたか」

サタナエルは上半身が裸だった。

折れた刀を持ているが、体がフラフラだ。

「くっ……まだだ……まだ終わらん……」

「サタナエル……もう終わりにしよう」

「そこまでよ、セリオン、サタナエル」

そこに一人の貴婦人が現れた。

それは。

「!? 母さん? どうしてここに?」

「私はサタナエルを救うために来たの」

「私を救うだと? 私に救いなどない。ディオドラ、死にたいか?」

「できるのなら、やってみなさい」

「母さん、危険だ!」

「ディオドラさん!」

セリオンもエスカローネも、ディオドラを止めた。

だが、彼女はひるまなかった。

「なめるな。こんな刀でもおまえくらい簡単に殺せる」

「なら、やってみなさい」

ディオドラがサタナエルに近づいていく。

サタナエルが折れた刀を振るった。

威嚇だ。

ディオドラの服が傷つく。

それでもディオドラは歩みを止めない。

「く、来るな!」

「サタナエル……」

ディオドラはサタナエルを優しく包み込む。

それはサタナエルが知らないものだった。

「あなたはもういいのよ。あなたは『これ』が知らなかったのね」

「私は……」

サタナエルは刀を落とした。

サタナエルが涙を流す。

サタナエルが知らなかったもの……それは愛だった。

「俺は……俺は悪いことをたくさんした……」

「うん、うん」

「だから、償わなくてはならない……」

「うん、そうね」

「セリオン……私が闇に堕ちた理由を教えよう。私は『サタン』の息子だ」

「なっ!?」

「サタンの息子!?」

「サタンは闇の王だ。私の母はそれをわかっていて、サタンの子供を身ごもった。だから、私は闇に堕ちた。セリオン、それが真実だ。気をつけろ。サタンはおまえを狙っている。それでは、セリオン、Auf Wiedersehen」

「ああ、Auf Wiedersehen」

サタナエルはきれいな粒子と化して消えていった。

こうしてサタナエルは救われた。

「エスカローネ、フィリアは?」

エスカローネは首を振った。

フィリアは助からなかった、そういうことだ。

「そうか……」

セリオンは悔いた。

結局、セリオンはフィリアを助けられなかった。

自分は傲慢なんだろうか?

セリオンも全能ではない。

いくらセリオンが望んでも、助けられない命はある。

「セリオン、この娘は私が天へと連れて行く」

「!? スラオシャ?」

セリオンの背後に、フィリアを抱きかかえたスラオシャが立っていた。

「私も、できる限りの手は打ってみよう」

「フィリアはどうなるんだ?」

「彼女は天使になる」

「天使に?」

「まあ、位はあまり高くないが。それでも一つの命が救われる。また会える時が来るだろう。それまでしばしの別れだ」

「フィリアを頼む」

「わかっているよ」

そうしてスラオシャは天へと上がって行った。

セリオンはそれをずっと眺めていた。

「それにしても、母さんも無理をしたな」

「ふふふ、結局はサタナエルもいい子だったのよ」

とそこに飛空艇がやって来た。

「おにいちゃーん! 迎えに来たよ!」

「みんな、待っていますー」

「シエルにノエルか。エスカローネ、行こう」

「ええ!」



それを遠くから眺めていた男がいた。

男は禿頭で、黒いマントをまとっていた。

マントの上からも屈強な肉体が浮き出ている。

闇の王フューラー(Führer)であった。

「サタナエルは敗れたか。フッフッフッフ、セリオン・シベルスクめ、サタナエルを退けたか。それでは、この私が自ら、姿を現す必要があるな。フフフフフ、フハハハハハハハ、ファーハハハハハハハハハハ!!」

空に、フューラーの哄笑が響き渡った。

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