カーチェイス
そのころ、社長室では……。
「ぐはああっ!?」
「フッフフフ……」
フョードル社長が刀に突き刺される。
刺しているのはサタナエルだ。
サタナエルはこの俗物に死をもたらせることを快感としていた。
「この、裏切り者め!」
フョードルがサタナエルを罵倒する。
だが、サタナエルはそれにまったく表情を変えなかった。
「フッ、私がここに戻って来たのは、アドヴェント社に復讐するつもりだったからだ。私の人生は私が決める。アドヴェント社が決めるわけではない」
「フフフフフ……」
「? 何がおかしい?」
「わしはもうじき死ぬが、それを恐れてはいない。わしはきさまの正体を知っているぞ!」
「……」
「この〇〇〇の息子め!」
「きさまは知っていたのか?」
「べレニーチェはわしの愛人の一人だったのだ! きさまの母は腹黒い女だったわ!」
「それがどうした? そんなことで私が動揺すると思ったか?」
「きさまの目的は何だ?」
「私の目的……それはこの星を滅ぼすことだ。すべての生きとし生けるものは滅び去る」
「ふははははは!」
「……」
「きさま一人で何ができる? きさまは孤独だな」
「私にはマグノリアがある。それに部下もいる。私一人だけで、世界を破滅させられるとは思っていない」
サタナエルはぞっとするような冷たい表情をした。
フョードル社長はそれに寒気を覚えた。
「フン! きさまはそれでも孤独だ! おまえは一人だけだ! どこまでも一人で生きていけ……ぐっ……」
そのままフョードルは息を引き取った。
サタナエルはフョードルが呪詛を放ったと思った。
フョードルはサタナエルを孤独だと言った。
サタナエル自身は栄誉ある孤立だと思っている。
それに自分は本当に一人か?
サタナエルには友がいる。
彼を自分の側に招けば、自分は一人ではない。
フョードルこそ孤独だったのではないか?
サタナエルはそう考えた。
この男は大勢の部下がいても、その本心を語れる者はいなかった。
息子のアルカージーにさえ、本心を明らかにしなかった。
結局はフョードルこそ孤独だったのだ。
サタナエルは野太刀をフョードルから引き抜いた。
サタナエルはフョードルを見つめる。
「私には私の目的がある。それを邪魔する者は死あるのみだ」
サタナエルは影の中に沈んでいった。
セリオンたちはアドヴェント社から脱出した。
もうアドヴェント社に用はない。
このままテンペルまで帰るだけである。
アンシャルは地下駐車場の車で、セリオンたちを待っていた。
セリオンたちはアンシャルの車に戻ってきた。
「よく戻って来たな。見事だよ。さて、このままフィリアを連れてテンペルに帰るぞ? 車に乗ってくれ」
エスカローネが助手席に、フィリアが後部座席に座った。
「セリオン?」
「俺はバイクで行く。この車に追手が差し向けられたら、俺が対処する」
「わかった。セリオンは後からついてきてくれ。それでは車を出すぞ?」
アンシャルが車を発進させた。
セリオンはバイクに乗ってそれに続く。
アンシャルは車を車道に乗せる。
車は混雑していた。
「このままではアドヴェント社の追手に追い付かれるな。セリオン! アウトバーンに入るぞ!」
「わかった!」
セリオンとアンシャルはアウトバーンに入った。
アウトバーンは比較的、すいていた。
夜だからだろう。
アドヴェント社のエージェントが車で、兵士がバイクで迫ってきた。
アドヴェント社の車には拳銃で武装したエージェントが乗っていた。
エージェントは車をアンシャルの車の近づける。
「アンシャル! 撃ってくるぞ!」
「ちいっ!」
エージェントは二人乗りで、一人は銃を持っていた。
エージェントの銃撃。
バン、バン、バン!
銃弾がアンシャルの車に当たる。
アンシャルの車は防弾仕様だった。
セリオンはエージェントの車に近づくと、大剣で車の車輪を斬りつけた。
たちまち、スピンして車が後方に去っていった。
ジープが後方から迫っていた。
乗っている兵士が銃撃してくる。
セリオンはジープに回り込むと、それを蒼波斬で斬った。
ジープは後方に置き去りになった。
バイク兵が接近してくる。
彼らはセリオンは狙わず、アンシャルの車を狙っていた。
「新手か……」
兵士はバイクに乗りながら、銃撃してくる。
セリオンは後方に下がって、バイク兵に蒼波刃を放った。
バイク兵はバイクを破壊されて、路上に落ちた。
セリオンがアンシャルに近づく。
「追手はこれまでか?」
「そうかもしれないな。とにかく、テンペルに着きさえすれば私たちの勝利だ。セリオン、その間の守りを頼むぞ?」
「ああ、任せておけ」
「セリオン、何か、来るわ!」
「何?」
セリオンたちの後方から四輪駆動の兵器がやって来た。
人型の上半身を備えていた。
アドヴェント社の兵器ナフタリである。
「あんなものまで、差し向けてきたのか、アドヴェント社は!」
「アンシャル、俺はあれをくい止める。その間、耐えてくれ」
「セリオン、頼むぞ?」
「ああ」
ナフタリはアンシャルの車に執拗に近づこうとする。
セリオンはナフタリに接近して、それをくい止める。
セリオンは大剣でナフタリの車輪を斬りつけた。
「くっ!? 硬い!」
セリオンは蒼気の斬撃でナフタリの車輪を破壊する。
ナフタリがセリオンに向きなおった。
どうやら、セリオンを排除することを最優先にしたらしい。
ナフタリの両腕から炎が噴き出た。
火炎放射だ。
セリオンはスピードを緩めて、それを避ける。
セリオンは蒼波刃を連発した。
ナフタリの腕が破壊される。
ナフタリはさらなる攻撃手段を持っていた。
頭部バルカン砲である。
セリオンは大剣を前に持ってきてそれを防ぐ。
セリオンは蒼波刃をナフタリの頭部に向けて放った。
ナフタリの頭部が吹き飛んだ。
それでもナフタリは動きを止めない。
セリオンはもう反対側に移動して、車輪を破壊した。
ナフタリの胸にエネルギーがともった。
セリオンはブレーキをかけてそれを避ける。
ナフタリの胸からビームキャノンが発射された。
あんなものを受けたらひとたまりもない。
防弾ガラスでも防げないだろう。
セリオンはアクセルを入れた。
そのままナフタリを横切る。
セリオンは蒼気の斬撃をナフタリ胸部に向けて斬りつけた。
ナフタリが機能不全を引き起こし。ナフタリはその場で爆発した。
セリオンはアンシャルに近づく。
「アンシャル、このままアウトバーンを降りてくれ。後は俺が何とかする」
「わかった。私たちはこのままテンペルに帰る。それでは成功を祈る」
「ああ」
アンシャルの車はアウトバーンを降りて行った。
セリオンがバイクから降りると、ライトを最大にしたトラックが迫ってきた。
運転しているのはエージェントだ。
セリオンはその正面に立つ。
エージェントはセリオンをトラックでひき殺すつもりだ。
セリオンはまったく恐れなかった。
セリオンは大剣を上にかかげた。
そのまま膨大な蒼気を練り上げる。
「くらえ。覇蒼斬!」
セリオンが連なる蒼気の刃をトラックに向けて放った。
トラックは一刀両断にされて、そのまま左右に分割された。
トラックは外壁にぶつかり、そのまま横倒しになり、爆破・炎上した。




