ユグドラシル地区
フィリアはアドヴェント社最深部ユグドラシル地区にいた。
彼女はイスに座っていた。
彼女の前にいるのは、赤いコートを着た男。
アードラ―のA級戦士ジェニウス(Jchenius)だった。
「何を考えている?」
「……別に何も考えていません」
「まったく、つまらない任務だ。おまえのような小娘を守る役目とはな」
「……」
「何か言ったらどうだ? 世間話くらいには乗るぞ?」
「いい加減に私を解放してもらいたいです」
「それはできない。方針が変わったんだ。フョードル社長の厳命だ」
「私はどうなるんですか?」
「それは適切な質問ではないね。君が問うべきは『私は何をすればいいのですか』だ」
「……」
ジェニウスはこの少女と話をしてもつまらないと思った。
ため息を出す。
ジェニウスの任務はフィリアを外敵から守ることだ。
アドヴェント社のために。
「いい加減に軟化しろ。アドヴェント社に協力するんだ。そうすればおまえは自由になれる」
「私はアドヴェント社に協力したくありません」
「それでは、監獄生活は続くだろうな」
「そうはいかない」
「誰だ!?」
「セリオン!」
エレベーターからセリオンとエスカローネが躍り出た。
セリオンは大剣を出した。
赤いコートの男性は赤い剣を持っている。
「おまえがセリオン・シベルスクか。私はジェニウス。アードラ―A級戦士だ」
「俺の紹介は不要だな。フィリアを俺たちは助けに来た。フィリアを渡してもらおう」
「それは拒否する。フィリアの守りを私は仰せつかっている。おまえは排除する」
「エスカローネ、フィリアを頼む」
「ええ」
「ははははは! 私はずっとセリオン・シベルスクと戦いたかった! 今日その望みがかなう!」
ジェニウスが赤い剣をセリオンに向ける。
「紅炎剣!」
ジェニウスの剣が赤い炎を帯びる。
「はっ!」
ジェニウスがセリオンを攻撃した。
ジェニウスの剣はセリオンを押しつぶそうとする。
ジェニウスは狂ったようにセリオンを斬りつける。
それは赤い舞だ。
「ははははははは! どうした? 反撃してみろ! おまえの力はこの程度か!」
ジェニウスが笑う。
ジェニウスはセリオンを押していると本気で思っていた。
実際、ジェニウスは強かった。
さすがにA級戦士なだけはある。
「はっ! 紅炎斬!」
ジェニウスが紅の斬撃を放つ。
セリオンはそれに呑み込まれた。
「はっはっはっはっは! 所詮はセリオン・シベルスクもこんなものか! 私の相手にもならなかったな!」
ジェニウスがエスカローネを見る。
「悪いが、女だからと言って見逃すわけにはいかない」
「それで、私をどうするのかしら?」
「君にはセリオン・シベルスクの後を追ってもらう」
「セリオンはやられてないわ」
「フッ、現実を見ろ。セリオン・シベルスクは……!?」
ジェニウスに蒼波刃が放たれた。
紅の炎の中からセリオンが姿を現した。
「な、何だと!?」
「おしいな。腕は悪くない。だが、相手が悪かった。俺でなければ倒せていただろう」
「あの炎を耐えたのか!?」
「さて、今度はこちらから行くぞ?」
「くっ!?」
セリオンがジェニウスに斬りかかる。
セリオンの大剣がひらめいた。
今度はジェニウスが防戦一方となった。
「ぐっ!? この!」
セリオンは蒼気で、ジェニウスを斬りつける。
セリオンが大剣でジェニウスの剣を斬りはらった。
ジェニウスが後退する。
それから再び紅炎剣を出した。
セリオンが斬りつけてくる。
ジェニウスはそれをガードする。
「うおおおお!? 邪魔だあ!」
ジェニウスが強引に攻撃を仕掛けた。
セリオンの蒼気の大剣がそれを叩き潰す。
ジェニウスの剣は折れた。
「ぐああああ!?」
折れた剣がジェニウスの肩をかすった。
「これまでだな」
「くうううっ!?」
ジェニウスが肩を手で押さえる。
血が肩から流れていた。
ジェニウスは剣をセリオンに投げつけた。
セリオンはそれをはじく。
だが、その一瞬でジェニウスには十分だった。
ジェニウスはエレベーターに走り、そのまま消えていった。
「逃げた、か」
「セリオン、フィリアを解放したわ」
「大丈夫か、フィリア?」
「ありがとう、セリオン。セリオンなら必ず、助けに来てくれるって信じてた」
「そう、か」
セリオンは照れた。
その時、轟音が鳴った。
「!? なんだ!?」
「これは星の敵の存在だよ」
「星の敵?」
「マグノリア……アドヴェント社の人はそう呼んでいた」
「マグノリア!?」
「知っているの?」
「私たちはシュヴィーデンでマグノリアと戦ったのよ」
「来るよ!」
「エスカローネ、フィリア、戦えるな?」
「ええ、当然よ!」
「もちろん!」
セリオンたちの前にマグノリアが現れた。
マグノリアはサタナエルと行動を共にしていたはずだ。
サタナエルがアドヴェント社にいるなら、マグノリアがここにいてもおかしくはない。
「マジカルシュート!」
フィリアが魔法攻撃を仕掛ける。
魔法の光線がマグノリアを貫いた。
だが、マグノリアはすぐさま再生した。
マグノリアには強力な再生能力がある。
マグノリアを倒すには、高レベルの必殺技を叩き込むしかない。
そのためには、マグノリアに隙を作る必要がある。
セリオンは大剣で斬り込んだ。
この程度でひるむほど、マグノリアは弱くない。
「エスカローネ、ゴッテス・ハウホを唱えてくれ!」
「ええ、わかったわ!」
エスカローネが大魔法の詠唱に入る。
エスカローネに青い魔力が光った。
その間、セリオンとフィリアはマグノリアの足止めだ。
マグノリアの尾がセリオンを捉えようとする。
セリオンはジャンプしてそれを回避した。
さらに落下と同時に蒼気の斬撃を叩き込む。
セリオンの技『蒼天斬』だ。
マグノリアがぐらついた。
「フォイアー!」
フィリアが炎の魔法でマグノリアを焼く。
マグノリアは全身を炎で包まれた。
マグノリアの周囲に光点がいくつも集まった。
これは……。
「フィリア! マグノリアからの反撃だ! レーザーが来るぞ!」
マグノリアは全身を炎に包まれながら反撃してきた。
マグノリアの『ジェノサイド』である。
「危ない!」
フィリアはエスカローネの守る。
エスカローネは大魔法の準備のため、無防備だった。
「これで決めるわ! 聖なる光よ! 降り注げ! ゴッテス・ハウホ!」
聖なる、青白い光の柱がマグノリアに降り注ぐ。
その光景は神秘的だった。
「これで決める! 蒼気凄晶斬!」
セリオンは練り上げた蒼気の刃で、マグノリアを斬った。
マグノリアが声にならない叫び声を出す。
それはこの空間に響き渡った。
マグノリアは叫び声を上げながら、さらなる地下に落ちていった。
「やったな。さすが、エスカローネだ」
「すごい魔法だった!」
「ほめ殺しにしないで。それじゃあ、アンシャルさんのところに戻りましょう!」
三人はエレベーターで脱出した。




