サイジョウ
セリオンは通気口から脱出した。
フィリアの居場所はわかった。
セリオンはエスカローネと合流する。
「どうだった、セリオン?」
「ああ、フィリアは研究部門のサイジョウのラボラトリーにいるらしい」
「それじゃあ、すぐに向かわないとね」
「そうだな。ようやくフィリアの手がかりが入った。これでフィリアを助け出せる」
サイジョウはラボラトリーに戻った。
「やれやれ、重役会議にはうんざりさせられる。私はそんなことより、研究に集中したいんだがねえ」
サイジョウのラボラトリーは様々な機器から成っていた。
サイジョウは黒い眼鏡をかけて、白衣を着ていた。
部屋の奥に大きなシリンダーがあった。
その中には一人の少女がいた。
少女はイスに座らされていた。
少女は反抗的な目を向けてきた。
少女には足に枷がはめられていた。
これではまるで囚人だ。
サイジョウは肩をすくめて、少女……フィリアの視線を流す。
「やれやれ、君はいつからそんなに反抗的になったのかね? 昔は従順だったというのに」
「……」
フィリアは何も答えない。
というより、それが答えだった。
サイジョウはフィリアの母アリアを研究していた。
その時から、サイジョウは娘のフィリアを知っている。
「君はセリオン・シベルスクが助けに来てくれると本気で信じているのかね?」
「……」
「セリオン・シベルスクが君を助けることに何の意味があるの言うのかね?」
「……」
「やれやれ、いい加減に従順になりたまえ。なぜ、セリオン・シベルスクが君を助けなくてはならない? アドヴェント社と敵対してまで彼は君を助けるというのかね?」
「それは俺がそう言う人間だからだ」
「!? 何!?」
大剣がサイジョウののどに当てられた。
サイジョウは硬直する。
「セリオン!」
「遅くなったな、フィリア。君を助けに来た」
セリオンはサイジョウに大剣を当てる。
へたに動けば、サイジョウは斬られる。
セリオンはフィリアの状態を見た。
フィリアはまるで囚人のように拘束されていた。
「サイジョウ博士。フィリアを解放してもらおうか?」
「わ、わかった。それなら、剣を離してくれないかね?」
「いいだろう」
サイジョウが拘束から解かれる。
サイジョウは顔を歪めて。
「ふはははははは! バカめ! この場所には緊急システムがある! それでおまえたちを始末してやる!」
サイジョウは機器を操作した。
すると、天井から液体状の魔物が現れた。
「はーっはっはっはっはっはっは! こいつはバイオスライムだ! こいつに喰われてしまうがいい!」
セリオンは背後を振り返った。
「スライムか……始末するのに時間がかかるかもしれないな。エスカローネ、フィリアを守ってくれ!」
「わかったわ」
セリオンにスライムが襲い掛かる。
スライムは内部に生物を取り込んで、それを分解、消化する。
セリオンはスライムの部分を斬った。
しかし……。
「はーっはっはっはっはっはっは! 無駄だよ! スライムに物理攻撃は通じない! 君の剣ではスライムに対抗できまい! さあ、おとなしく死ね!」
バイオスライムは斬れた部分を再びくっつけた。
スライムには心臓はない。
セリオンはスライムに向けて剣を構える。
スライムが伸びて、ジャンプしてきた。
セリオンを押しつぶす気か? 否、上から取り込むつもりだ。
セリオンはダッシュしてスライムの下をくぐる。
セリオンは振り返って再びスライムに剣を向ける。
スライムは決して弱くない。
スライムは魔物としては物理攻撃が通じないため、上位に属する。
セリオンは氷の大剣を出した。
スライムが一部を伸ばして、叩きつける。
セリオンはそれを氷の刃で斬った。
スライムの一部が凍結する。
そのまま一部は砕け散った。
「氷が弱点か。俺とは相性がいいな。氷狼牙!」
セリオンが氷の刃を飛ばす。
たちまちスライムの体が凍り付く。
スライムの質量は明らかに減少している。
「な、なんだと!?」
サイジョウが混乱する。
この展開はサイジョウにはなかったはずだ。
セリオンはスライムと距離を取って戦う。
バイオスライムにダメージを与えられたとはいえ、いまだスライムの質量は脅威だった。
接近したら、スライムに取り込まれてしまうだろう。
セリオンは再び、氷の刃・氷狼牙を撃ちだす。
スライムの一部が凍り付き、剥がれ落ちる。
このまま氷狼牙では決定的なダメージを与えることはできない。
セリオンの戦いは接近戦にある。
遠距離戦はセリオンの得意とするところではない。
「氷狼突!」
セリオンは氷の突きでスライムを急襲した。
スライムの体が凍り付いて、砕け散る。
これはかなりのダメージを与えた。
その瞬間、スライムは口のような部分を作り、セリオンを取り込もうとする。
セリオンは一瞬にして、後方に跳んだ。
スライムの口が空振りする。
セリオンが一瞬のタイミングで後退しなければ、セリオンはスライムに取り込まれていただろう。
スライムにはそもそも痛覚がない。
それゆえ、自分がダメージを受けても反撃できるのだ。
セリオンがバイオスライムを始末するのに時間がかかると考えた理由だ。
バイオスライムは体から、緑の球を二つ投げつけてきた。
あれにはものを溶かす力がある。
セリオンは氷の刃・氷結刃でそれを斬る。
球は凍って、そのまま砕け散った。
セリオンはスライムを見据える。
このままではスライムを倒すまでにかなりの時間がかかってしまう。
サイジョウがその間に何かしでかすかもしれない。
そうなる前にセリオンはバイオスライムを倒す必要があった。
それなら、もはや力を隠す必要はない。
セリオンは大剣に氷の粒子をまとわせた。
それは雪のように美しかった。
セリオンの上級・氷技『氷粒剣』である。
セリオンは一気にバイオスライムを倒すことにした。
バイオクライムがアシッド・ボムを放りつける。
セリオンはそれをくぐりぬけて、そのままバイオスライムを滅多切りにした。
スライムは完全に凍り付き、そのまま崩壊した。
「バカな!? バイオスライムが!?」
「さて、サイジョウ博士? フィリアを解放してもらおう」
「わ、わかった! フィリアは解放する!」
サイジョウはシリンダーの扉を開けて、フィリアの枷を解いた。
「セリオン! ありがとう……助けに来てくれて……」
「ああ、君が無事でよかった」
「ふはははははは!」
サイジョウは一瞬の隙をついて、エレベーターにまで走った。
「それでは諸君! アデュー!」
サイジョウがエレベーターに消える。
それから、研究施設から警報が鳴り響いた。
「セリオン、まずいわよ!」
「ああ、このままでは危険だな」
「フィリア……どこか出口はないか?」
「ごめん……この施設にはエレベーターでしか来られない」
「最悪だ」
それから銃で武装した兵士が大量に研究施設にあふれる。
「武器を捨てろ!」
「おまえたちを拘束する!」
「セリオン、どうするの?」
「ああ、ここは素直につかまろう」
三人は再び拘束された。




