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ヘルデンリート・フィナーレ Das Heldenlied Finale ~Mein Bester Freund~  作者: 野原 ヒロユキ
俺は新しい時代の扉を開ける Ich will die Tür der neuen Zeit aufmachen
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重役会議

セリオンとエスカローネは重役の会議が開かれるフロアに向かった。

二人はエレベーターから出る。

だが、当然、部屋にはガードマンがいるし、会議室に入れるわけでもない。

「セリオン、会議室には入れないわ。どうしたらいいかしら?」

「ほかの方法を探そう。どこかで会議を盗み聞きしたい」

セリオンは休憩室にやって来た。

そこには自動販売機があり、缶コーヒーが売られていた。

セリオンはとりあえず、コーヒーを買った。

「さて……どう会議を盗み聞きするか……ん?」

「? どうかしたの?」

「ああ、あれだ」

「あれ?」

セリオンの視線をエスカローネが追った。

そこには通気口があった。

「あの大きさ、俺でも入れるな。あそこから会議室に行けるかもしれない」

「それは妙案ね!」

「エスカローネはここで見張っていてくれないか?」

「ええ、もちろん」

「よし、侵入しよう」

セリオンは通気口から侵入した。

セリオンは道を通って、会議室に進む。

やがて声が聞こえてきた。

ビンゴだ。

セリオンは会議室の通気口から内部をのぞき見る。

そこにはフョードル以下、重役たちが集まっていた。

フョードルが口を開く。

「星の娘はどうしているか?」

「フィリアは私のもとで預かっているとも。丁重にな。クヒャハハハハハ!」

サイジョウが不快な笑い声をあげる。

この会議に列席している人間は誰も丁重などということは信じなかった。

「いやー、実に興味深い。ハーフニンフと言えどニンフであることに変わりはないからねえ」

「私はこの処置に反対です」

「その理由は? クサナギ?」

「はっ、アドヴェント社が前面に出ると、何かと政府から苦情が出るかと。それに約束の地を探すなら、泳がせておいた方が良いのではありませんか?」

「だが、そのやり方ではいつまでたっても約束の地を見つけられないではないか? 私には時間がないのだ」

フョードルには時間がない? 

どういうことだ?

どうやらフィリアがさらわれたのはフョードルの意思によるところが大きいようだ。

それが何かはおいおいわかるだろう。

「もう諸君らが知ってのところ、わしは癌に侵されている。そう長くは生きられん。わしは生きているあいだに約束の地を見たい。この目でな。そのためにはフィリアを強引にでも使う必要があったのだ。わしの次はアルカージーだ」

「父上……」

フョードルはでぶでぶと太った肉体に、不健康そうな顔をしていた。

病に侵されたのもうなずける。

彼は後継人事を決めていた。

息子のアルカージー・フョードロヴィチが次の社長のようだ。

すでに重役会議では決定されていたのだろう。

「それで、フィリアから何か情報は得られたか?」

「それがねえ……かなり頑固でね。何もはかんよ。まあ、目下のところ、ニンフの遺跡があるらしいのだがね、そこが怪しいと踏んでいるよ」

サイジョウが陰湿に答えた。

この男の言葉は周囲を不快にさせた。

セリオンから見ても、ゲオルギーやアゴスティーナは眉をひそめているようだ。

「で、フィリアは今どうしている?」

「今のところ、私のラボで預かっているよ。まあ食事は食べているようだから、死にはしないがね。ただ……」

「ただ、何だ?」

「フィリアには希望があるようだ」

「希望だと?」

「そうなのだよ。彼女は誰か白馬の王子様が助けに来てくれるとでも思っているのではないかな?」

「例の、フィリアのボディーガードか?」

「確か、何と言ったかな?」

「セリオン・シベルスクです」

クサナギが答えた。

「セリオン・シベルスク……暴龍ファーブニルを倒した英雄か」

「父上、セリオン・シベルスクを敵に回すのは危険なのではありませんか?」

「そうだな。できれば敵には回したくない。政府はカネでどうにかなるが、セリオン・シベルスクは買収とは無縁だ。厄介だな」

「厄介と言えば、サタナエルもそうですな?」

ゲオルギーが発言した。

「サタナエル……」

フョードルが忌々しそうにはき出す。

「目下、捜索しておりますが、サタナエルの消息は不明です」

「フン、奴が何を考えていようが、アドヴェント社は揺るぎはせん。軍事部門はサタナエルの抹殺を最優先にせよ。情報部門はサタナエルの消息を探れ」

「はい」

「はっ!」

「それでえ、セリオン・シベルスクについてはどうするんですか?」

アゴスティーナが言った。

アゴスティーナはセリオンに苦汁を味あわせた。

彼女はセリオンのことに嫌なイメージを抱いているだろう。

「セリオン・シベルスクは懐柔できないのかね? どう思う、諸君?」

「父上、セリオン・シベルスクは高潔な人物だと聞いています。そのような人物は絶対に金銭と引き換えに魂を売ることはないでしょう」

「私も副社長の意見に同感です。セリオン・シベルスクは汚い手段には断固反対するでしょう」

ゲオルギーがそれに続く。

「セリオン・シベルスクの大切なものを人質にするというのはどうでしょうか? 例えば、恋人とか、母親とか……」

アゴスティーナが陰険な表情をする。

セリオンは吐き気がした。

「セリオン・シベルスクにはテンペルがついています。セリオン・シベルスクと敵対することは好ましくありません。テンペルとの対立になってしまいます。それは避けるべきかと」

「何が根拠があるのかね、クサナギ?」

「はい、テンペルには聖導騎士団という軍事力があります。この軍事力はツヴェーデン軍でも手を焼くほどです。聖導騎士団と正面から戦いになった場合、我が方も壊滅的な打撃を受けるでしょう。セリオン・シベルスクの恋人や母親を人質になどすればテンペルを烈火のごとく怒らせるでしょう。それは危険極まりないかと」

「クサナギの意見は的を得ているな。では、セリオン・シベルスクには監視のものを派遣すればよい」

「それが……」

「? どうかしたのかね?」

「ことごとく、監視がばれております。セリオン・シベルスクは人の視線に敏感なので……」

「まあいい。セリオン・シベルスクといえどたかが若造だ。アドヴェント社の敵にはなりえまい。それでは、会議を終えることにする」

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