シミュレーター
『アードラ―(Adler)』はアドヴェント社の特殊任務部隊である。
その戦士は一騎当千で、すさまじい戦闘力を持つ。
あのサタナエルもアードラ―の一員だった。
アードラ―はA級、B級、C級、D級と四段階に分かれている。
A級が最高ランクで、サタナエルもここに属した。
セリオンたちの偽造IDはアードラ―B級と記されている。
セリオンとエスカローネはエレベーターに乗ってアードラ―のフロアに向かった。
「アードラ―か。懐かしいな」
「セリオンはアードラ―を知っているの?」
「ああ、俺はアードラ―の戦士と見覚えがある」
「ふふふ、男性の友情を感じるわね」
「まあな。サタナエルとはツヴェーデンの任務でもいっしょだったからな」
「サタナエルはどうして闇に堕ちたのかしら?」
「わからない。何か重大な秘密を知ったのかもしれない。あいつは自分が悪魔の息子だと言っていた。悪魔にも色々いる。その中の誰があいつの父親なのか、それはわからない。結局肝心なことは分からないままだ」
「セリオンはサタナエルのことを気にしている?」
「ああ、当然だ。あいつは俺の親友なんだからな。今でも俺はあいつを親友だと思っている。サタナエルが何を考えているかは分からない。いったい何をしたいんだろうな……」
そんなことをしゃべっているうちに二人はアードラ―のフロアについた。
二人はエレベーターから外に出る。
さすがにアードラ―のフロアということで、戦士たちがうろうろしていた。
「こりゃ、おまえたちか!」
「? なんだ?」
「? 何でしょうか?」
そこに教官風の老人がいた。
セリオンたちを勘違いしているようだ。
「これからシミュレーターで、模擬訓練を行う! 準備ができしだい、シミュレーションルームに来い!」
教官はそれだけ言うと、いなくなった。
セリオンとエスカローネは顔を見合わせた。
「どうする?」
「そうね。私たちのIDはアードラ―の戦士と記されているから、ここは従うべきだわ」
「そうだな。俺たちはアードラ―らしくなければならないな。つまり、このシミュレーション訓練に参加しなければならないということだ」
セリオンたちは戦士に部屋の場所を聞いて、シミュレーションルームにやって来た。
「ふむ……時間に遅れはないな。そこの若いの。訓練の内容を説明しよう」
「いったい、何をやるんだ?」
「おまえはこれを装着するのじゃ!」
「これは……」
セリオンはある装置を受け取った。
それはヘルメットで、視覚に訴える機能があった。
「ミッションの内容を説明しよう! 今回の想定では、乗客が先頭車両に閉じ込められている。テロリストが列車を占拠したという想定じゃ! おまえは見事テロリストのボスを倒し、乗客を解放するのじゃ!」
「へえ……おもしろそうだな。よし、いつでもいいぞ」
「気に入った! それでは始めるぞ! シミュレーションスタート!」
セリオンは気づくと、走る列車の上にいた。
列車はレールを走行する。
風がセリオンにかかった。
「ここがシミュレーターの中か。よし、ミッションを始めるぞ」
セリオンは列車の先頭を見た。
列車の上には銃で武装した兵士がおり、簡単には近づけない。
兵士が銃を撃ってきた。
セリオンは大剣でガードする。
セリオンは蒼気を大剣にまとわせた。
そのまま蒼気の刃を兵士に向けて放つ。
「蒼波刃!」
蒼い刃が兵士に命中する。
兵士たちは崩れて、列車から落ちた。
「よし! 行くぞ!」
セリオンは走った。
すみやかに先頭車両に行かねばならない。
兵士が固まって、銃撃した。
セリオンはジャンプしてそれを跳び越える。
セリオンは兵士たちの背後に着地した。
大剣がひらめき、セリオンによって、兵士たちが斬られる。
テロリストの兵士たちは列車から落下した。
セリオンはさらに進む。
テロリストは手りゅう弾を放ってきた。
セリオンは大剣を振るって、それをテロリストにはね返す。
テロリストの兵士は慌てた。
そのまま手りゅう弾が爆発し、彼らは列車の上に倒れる。
セリオンは先頭車両に到達した。
そこにはメットをかぶった大男がいた。
「クックック、よくここまで来れたなあ。この俺が歓迎してやるぜ!」
「おまえはボスか? おまえがこの先頭車両を占拠しているんだな?」
「まあそういうことだ。この俺様を倒せれば、ミッションはクリアだ」
「では、さっさと倒して終わらせようか」
蒼波刃が大男に放たれた。
「効かねえぜ!」
大男は大きなメイスを出して、蒼波刃を打ち捨てた。
「俺の蒼波刃を……」
「クックックック! そう簡単に俺様を倒せると思うなよ? さあ、かかってこいや! 俺の名はシラク(Schillak)だ!」
セリオンは大剣でシラクを斬りつけた。
シラクはメイスで大剣を受け止める。
この空間の中では神剣の性能は使えない。
つまり、サンダルフォンはただの大剣にすぎないということだ。
「ククク、効かねえなあ! おりゃああ!」
セリオンはシラクにはじき飛ばされた。
どうやら、シラクの能力はかなり高いらしい。
というより、かなり高めに設定されているということだ。
セリオンはうまく着地する。
「くらいやがれ! フルスイング!」
シラクがメイスを上から叩きつける。
列車の上が歪む。
セリオンは後退してかわしていた。
「がっはっはっはっはっは! よくかわすじゃねえか! だが、こいつは痛いぜ! パワークラッシュ!」
シラクはメイスで薙ぎ払ってきた。
セリオンは大剣で受け止める。
「くっ!?」
セリオンはすさまじい衝撃で弾き飛ばされる。
セリオンは本来の能力を封じられている。
このシミュレーターではあくまで設定で機能している。
シラクの能力はかなり高めに設定されているのだろう。
このシミュレーターの中では、訓練者の能力は制限されている。
「がーっはっはっはっはっは! こいつでとどめだぜ! スタンボム!」
シラクが赤く染まったメイスをセリオンに振り下ろす。
セリオンはその瞬間、ダッシュした。
すれ違いざまにセリオンはシラクを斬った。
「があっ!?」
「蒼天斬!」
セリオンは蒼気をまといつつ、大ジャンプした。
そして、落下の衝撃を利用して、そのまま大剣でシラクを斬る。
「ぐぎゃあああああ!?」
シラクは倒れた。
『ミッション・コンプリート!』
セリオンは視界が暗転するのを感じた。
セリオンは装置を外す。
「ふう……」
「よくやった! おまえはなかなか見どころがあるな! 今日の訓練はここまで!」
「あ、あの」
「何じゃ?」
「フィリアという女性について心当たりはありませんか?」
エスカローネがフィリアのことを尋ねる。
教官は思案した後。
「ふーむ。わしは知らんのう。上層部なら知っているかもしれんが」
「上層部?」
「うむ。会社の社長クラスじゃ。そういえば部門会議がそろそろ行われると聞いたが……」
「エスカローネ!」
「ええ、セリオン!」
「貴重な情報をありがとう。それでは俺たちは行く」
「ありがとうございました」
二人はシミュレーションルームを後にした。




