アゴスティーナ
アゴスティーナは赤い、露出の多いドレスのような服を着ていた。
髪は金髪だ。
アゴスティーナは兵器開発部門代表だ。
彼女はフィリアを追うため、赤い戦艦クレオパトラに乗っていた。
「それで、星の娘の居場所は特定できたの?」
「はっ! 現在、ニンフの里に滞在しているとの情報です」
「ふうん……ニンフの里ねえ……ニンフって強いのかしら?」
「は?」
「ああ、いいのよ。独り言だから」
アゴスティーナは自分の言葉を理解できなかった兵士を無視した。
彼女はかなりの武闘派だ。
その点はゲオルギーと同じくらいだ。
今回のニンフの里での活動……。
やはり、最新の兵器をテストしてみたい。
それによって、ニンフの里は蹂躙されるが、そんなことはアゴスティーナにとってどうでもよい。
要は兵器が活動できる口実さえあればいくらでも動かせるのだ。
「それにしても、星の娘も物好きねえ……こんな辺鄙なところに来るなんて……まったく。やってられないわ」
アゴスティーナは一人の兵士にうちわであおがせていた。
これは自分の権力を可視化するためだ。
アゴスティーナは権威主義者だった。
「いつでも出撃できるように、パワードスーツ部隊を待機させておきなさい」
「はっ!」
「ああ、それと、私の愛機『シメオン』も準備させておくのよ、わかった?」
「はっ! かしこまりました!」
「ウフフフフ……星の娘はともかく、里にはセリオン・シベルスクがいる……この好機を逃すわけにはいかないわ。この私がじきじきに殺してあ・げ・る」
アゴスティーナは残酷な表情を浮かべた。
それは獲物を狙う豹のような顔だった。
セリオンとフィリアはヘクバの家に案内された。
ヘクバはお茶を出して、二人をもてなした。
「アリアのことを話しましょうか」
「はい」
「ああ」
「アリアは小さいころから美しかった。まるできれいに咲く花のようだった。アリアの母は、つまりあなたの祖母は厳しい人でした。しつけには厳しく、それにアリアは反発したようです。アリアはどちらかといえば、活発で明るく、光のようでした」
「幼いころの母はどのようでしたか?」
「そうですね。おばの私によく甘えてきました。今思えば、それは正しいことだったのでしょう。アリアは可憐な花に似ていました。そのころのアリアはとてもかわいらしかった」
「母は幸せだったんですね」
「そうですね。ただ……」
「ただ?」
「アリアはニンフの閉鎖的な在り方に疑問を抱きました。なぜ、ニンフはこんなところに閉じこもっていいるのか? なぜ、ニンフは他種族と交流しないのか? なぜ、ニンフは自然のままに暮らすのか? そう言った疑問を、アリアは自分の母にぶつけました。当然、アリアと彼女の母は険悪なムードとなりました」
「母は自由に生きたかったんでしょうか?」
「今思えば、そうだったんでしょう。アリアからすれば、里の掟はただの因習にすぎなかったのかもしれません。アリアはことごとくそれらに反発しました」
「母は自由な人でしたから……」
「彼女が里を飛び出すのは必然だったのでしょう。アリアは里を去りました。それからのことは私も知りません。アリアはあなたを産んだ。ただ、その事実があるだけです。あなたからはアリアの面影を感じます」
「そうですか……」
「里を自由に観察する権利を与えましょう。あなたがたはアリアがこの里でどう育ったか、想像してみるといいと思いますよ」
「ありがとうございました。いろいろと教えていただいて」
「フィリア、これからどうする?」
「そうだね……せっかくだから、この里を見て回ろうかな」
「でしたら、里の湖に行ってみてください。いい景色を楽しめると思いますよ」
「じゃあ、セリオン、行ってみよう!」
「ああ」
「ここが湖かあ……きれいな緑色をしているね」
「ああ、確かになかなか目にかかれないところだ」
セリオンとフィリアはエメラルドグリーンの色をした湖を訪れていた。
ヘクバが勧めていただけのことはある。
「……」
「セリオン?」
「ああ、俺はアドヴェント社の動きが気になってな」
「アドヴェント社……」
「あのヘリコプターは里の前でひるがえした。それが気になっている」
「あきらめて帰ったんじゃない?」
「そうだろうか? あいつらがこんな簡単に引き下がるような連中とは俺には思えないんだ」
「空はこんなに気持ちがいいのにねえ……アドヴェント社もよく働くね」
「ん?」
セリオンは空に浮かぶ船を見つけた。
あれはかなり大きい。それにドンドン近づいてくる。
「あれは!?」
「どうしたの?」
「あれを見ろ」
「あ!?」
「おそらくアドヴェント社だ。俺たちを追ってきたんだろう。あれは戦艦クラスだ」
「目的は、『私』?」
「そうだろうな。赤い戦艦か。内部に兵士を格納しているに違いない」
赤い戦艦は湖の上空で停止した。
そのまま、内部から機械化兵士を下ろしてくる。
あれはパワードスーツだ。
最新のテクノロジーによって作られた機械化部隊。
そんなものがあるとは聞いていたが、実際に見るとは思わなかった。
パワードスーツはセリオンたちを取り囲む。
「きさまたちにはおとなしくシュヴェリーンに帰ってもらう」
「いやだと言ったら?」
「いやでもそうしてもらう」
「従う気はない。さっさと帰れ」
「なら、力づくで帰らせる。その許可は得ている」
「なら、やるか?」
「セリオン……」
「フィリアは隠れていろ」
「私も戦うよ!」
「フィリア?」
「私だって戦えるんだから!」
フィリアの顔には闘志があった。
これはむげにするのは難しそうだ。
セリオンは戦闘の許可を出した。
「いいだろう。ただし、気をつけろよ?」
「うん!」
セリオンは大剣を出した。
「ほう……我々にたてつく気か。我々は最新の技術で武装している。たかが剣でどうするつもりだ?」
「さあな。やってみなければ分からないな」
セリオンにはこのパワードスーツを無力化できるという確信があった。
これはセリオンの長年の戦いの経験から来るものだ。
セリオンはパワードスーツを大剣で攻撃した。
上からたたき斬ろうとする。
すると、兵士はビームサーベルでセリオンの攻撃を防いだ。
「!?」
「クックック! そんな剣など通じん!」
「なら、これはどうだ? 紫電剣!」
セリオンは紫の雷を大剣にまとわせた。
そのままセリオンは兵士を斬る。
「ぐああああああああ!?」
機械のボディーは斬れなくても、中の人間は雷で感電する。
この技は機械に対して有効な攻撃技だった。
パワードスーツが機能不全に陥り、倒れる。
「まだまだ行くぞ!」
セリオンは次々とパワードスーツを倒していった。
一方、フィリアは杖を出し、その先からマジカルシュートを出してパワードスーツを破壊する。
「こいつ、星の娘か!」
「数で抑えろ!」
フィリアの攻撃は物理攻撃ではなく、魔法攻撃だ。
物理と魔法は原理が違う。
それは防御にも言えた。
フィリアはパワードスーツに魔法攻撃を仕掛けた。
それはパワードスーツの物理耐性を貫通した。
「サンダーストライク!」
フィリアはかなり加減して、雷の攻撃を放った。
フィリアとしても死人を出すのは目覚めが悪い。
「フィリア、強いな。こんなに強かったのか」
セリオンは驚いたくらいだ。
「まだまだこれからだよ!」
戦いは始まったばかりだ。




