アドリアーノ
セリオンがフィリアに連れられて、教会から出ようとした時。
「ちょっと、失礼するぜ?」
「? 何だ、おまえは?」
セリオンたちの前に兵士を従えた集団が現れた。
全員武装している。
中心となっているのは赤い髪の男だ。
彼は兵士が銃で武装しているのに対して、青いスーツを着ていた。
「あんた、セリオン・シベルスクだろ?」
「そうだ」
「困るんだよねえ、あんたみたいな人と彼女が接触するのは」
「何が困るんだ?」
「それは言えないねえ。ウチにはウチらの都合があってね」
「その武器と服……おまえたちはアドヴェント社の者か?」
「へえ……正解だ。よく俺たちのことが分かったなあ?」
「当然だ。親友の所属会社だからな」
「ああ、そうだった。あんたはサタナエルの親友だったな」
「アドヴェント社が何の目的で動いている?」
「ははは、あんたには関係ないことさ。さ、おとなしく、この件から手を引きな」
「この件? フィリアがアドヴェント社と何の関係がある?」
「それは俺も知らないんだ。詳しく聞きたかったら、ウチの社の上層部に聞くんだな」
「話にならないな。それでおまえは何をしていたんだ?」
「俺の役目はフィリアの監視だ」
「監視?」
セリオンはフィリアを見た。
フィリアは顔を横に振った。
「セリオン、ボディーガード、お願い!」
「ああ、わかってる」
セリオンは大剣を出した。
セリオンは友人が怪しげな連中に連れ去られるのを許すほど薄情ではない。
「へえ……俺たちとやるってか? いいのかよ? いくらあの英雄セリオン・シベルスクだからってただでは済まないぜ?」
「そちらこそフィリアに手を出そうとしてただで済むと思うな?」
「はっはっはっは! いいねえ! 俺はこんな任務には面白みがないと思っていたんだ! おい、おまえたち! やれ!」
兵士たちが銃でセリオンを狙い撃つ。
セリオンは大剣でガードする。
セリオンの大剣に銃弾が当たる。
セリオンはすばやく接近する。
セリオンの大剣が振るわれる。
「がっ!?」
「ぐふうっ!?」
「ぎはっ!?」
「うおおおっ!?」
兵士たちが宙を舞った。
セリオンの大剣、神剣サンダルフォンは刃を斬れなくすることもできる。
今はこの状態で兵士を斬っていた。
これなら兵士を殺すこともない。
兵士たちはほんの数分で全滅した。
「はっはっはっは! いいねえ! 燃えてきたぜ!」
アドリアーノは武器を取りだした。
それは短めのロッドだった。
セリオンが目を細める。
アドリアーノがセリオンに接近する。
アドリアーノはセリオンの背後を取った。
セリオンは大剣でアドリアーノのロッドを受け止める。
「へえ! このスピードに反応するか!」
「そのロッド……電磁ロッドだな?」
「それも見抜くかい! おおりゃ!」
アドリアーノが体術を繰り出す。
出してきたのは蹴りだ。
アドリアーノはセリオンの大剣を蹴った。
「くっ!?」
アドリアーノはさらに攻めてくる。
「はっはっはっはっはっは! 楽しいなああ! せりゃあああああ!」
アドリアーノの攻撃は一撃でもうけたらセリオンはショックでマヒするだろう。
セリオンとしてはかすることさえ許されない。
セリオンは蒼気を放出した。
「うおっ!?」
アドリアーノが警戒して後退する。
「へへへ! 闘気かい! いいねえ! でなきゃ、楽しめないぜ!」
アドリアーノが電磁ロッドで攻撃してくる。
セリオンは蒼気をまとわせた大剣で、電磁ロッドを斬る。
「!? 何だと!? ちいっ!」
「どうする? フィリアのことをあきらめるなら、ここまでにしておくが?」
「へっ、なめんな! 俺はまだ戦える! はああああ!」
アドリアーノが雷の拳を繰り出す。
さらに雷の蹴りだ。
アドリアーノは雷を操れるらしい。
「これで終いだ! 大雷電拳!」
アドリアーノが等身大の雷を作り出す。
雷撃が激しいスパークを巻き起こす。
セリオンはそれに耐えた。
セリオンは雷を放出してそれを中和した。
「紫電剣!」
セリオンは雷の一撃を繰り出した。
「ぐおあああ!?」
それはアドリアーノにヒットした。
アドリアーノはふらついてそのまま倒れた。
「勝負あり、だな」
セリオンが大剣の切っ先をアドリアーノの顔に突き付ける。
「ぐっ!?」
アドリアーノの顔が苦渋で歪む。
「殺しはしない。そのままアドヴェント社に帰れ」
「セリオン、もういいよ!」
フィリアがもう十分だと伝えてきた。
フィリアは争いを好まない性格だ。
これ以上は無用だろう。
「セリオン、裏の入口があるの。そこから出よう!」
「こいつはどうする?」
「いいよ、そのままで」
「いいのか?」
「うん、もう十分」
「わかった。命拾いしたな」
セリオンは大剣をしまった。
セリオンとフィリアは教会の裏側に回った。
セリオンはフィリアの後ろからついて行く。
「フィリアはアドヴェント社に狙われているのか?」
「狙われているっていうか、まあ、そうなんだけど……」
「俺には分からない。どうしてフィリアが狙われるんだ?」
「それは……私がハーフニンフだから」
「ハーフニンフ?」
「私のお父さんはアドヴェント社の研究員だったの」
「そうか。それでアドヴェント社は君を追っていたのか」
「私の母がニンフなんだ。だから私はハーフニンフなんだ」
「どうして、ネーベルハイムで暮らしていたんだ?」
「あの村はアドヴェント社の関係者で構成されていたの。私はアドヴェント社の監視を生まれた時から受けていたんだ」
「そうだったのか。今でもアドヴェント社が監視しているんだな?」
「うん、そう。さっきの人もアドヴェント社のエージェントだよ」
「アドリアーノとは知り合いか?」
「まあ、ね。ほかにもエージェントはいるけれど。ねえ、セリオン? 私は人間として生きればいいのかな? それともニンフとして生きればいいのかな?」
「それは……」
正直セリオンにはわからなかった。
セリオンはハーフではない。
セリオン自身は人間だ。
フィリアは今は人間として暮らしているのだろう。
だが、彼女にはどこかニンフとしての自覚がある。
ハーフニンフは貴重な存在だ。
ニンフは人里ななれた場所で暮らしている。
ニンフは人間とはかかわらないようにしているからだ。
聞くところによれば、ニンフは人間が嫌いだという。
「私はアドヴェント社にとっては貴重なんだって」
「貴重?」
「アドヴェント社は私を研究したいんだよ」
「研究か」
「暗い話になっちゃったね。じゃあ、孤児院に行こうか」




