シュヴィーデン王国へ
飛空艇シーベリオン(Siyberion)。
テンペルが保有する、空飛ぶ船。
スルトは船の前で、メンバーの到着を待っていた。
今回のシュヴィーデン行きに参加するのは、セリオン、エスカローネ、アンシャル、スルト、サラゴン、アリオン、シエル、ノエルである。
「集まったか」
「スルト、出発の準備はOKだ」
セリオンが代表して報告する。
「わかった。我々はこれより、シュヴィーデン王国に向かう。今回はあくまでミッションのために行くのであって、観光をしに行くわけではない」
スルトの言葉に全員が引き締める。
ここにいる者でスルトの言葉を誤解する者はいない。
スルトはこれは軍事活動だと言っているのだ。
「ミッションこそ最も重視しなければならないものだ。ただし、今回の旅は王宮での晩餐会なども予定している。外国だからと羽目を外すことがないようにな。ただし、シュヴィーデンに行っただけでは味気ない。したがって、自由行動の時間も設けられている。シュヴィーデン王国の首都はシュトックホルムだ。羽を伸ばせるときは自由にしてよろしい。では、飛空艇に乗り込むぞ!」
「「「は!」」」
セリオンたちは飛空艇に乗り込んだ。
艦長席にはスルトが座る。
アンシャルは副長席に座った。
サラゴンが舵を持ち、シエルとノエルがオペレーターの席に座す。
セリオンやエスカローネ、アリオンには定位置はない。
飛空艇はそうしてツヴェーデンを発った。
飛空艇は順調にシュヴィーデンに到着した。
シーベリオンは湖に着水する。
セリオンたちは窓からシュトックホルム(Stockholm)の風景を見ることができた。
透明な湖がきれいだった。
「きれーい……」
エスカローネが息をのんだ。
セリオンもエスカローネと同じ気持ちだった。
白鳥が窓枠を横切っていく。
シーベリオンはゆっくりと湖を進んでいく。
「すっごい! こんな風景なんて初めて! おに―ちゃーん! 見て見て!」
シエルがはしゃぐ。
「白鳥だー! わああああ!」
ノエルも興奮しているようだ。
「ふーん、きれいだけど、俺にはよくわからないなあ。まっ、おいしいものが食べられれば俺はそれでいいんだけど」
アリオンが興味なさそうに言う。
アリオンは旅はグルメだと思っているふしがある。
セリオンはこの美しい光景に圧倒された。
ここが湖畔の都シュトックホルム。
それはまるで芸術のようにきれいで、新鮮だった。
「! スルト総長! シュヴィーデン当局から連絡が来ています」
シエルが真剣な表情で応対する。
「私たちの船の入港許可を申請するようですー」
「うむ、つないでくれ」
「未確認の飛空艇に連絡します。こちらはシュヴィーデン港湾局。入国の目的を確認します」
「我々はシュヴィーデン王国から招待されたテンペルの者だ」
「テンペル? シベリア人の? はい、確認いたしました。入港許可が出ています。飛空艇シーベリオンと認識しました。間違ってはいませんね?」
「そのシーベリオンで合っている」
「それでは湖をそのままお進みください。それではあなたがたの滞在が良きものになることを願っています。シュヴィーデンにようこそ!」
「かたじけない。感謝する」
「それでは本艦は湖をそのまま進みますぞ?」
サラゴンがスルトを見る。
スルトは首を縦に振った。
こうして、セリオンたちのシュヴィーデン滞在が始まった。
セリオンたちはブリッジから降りた。
セリオンたちはシュヴィーデン側の要人から迎え入れられた。
「ようこそ、シュヴィーデンへ! 私たちはあなたがたを歓迎したします!」
シュヴィーデンの面々が敬礼をする。
出迎えに現れたのは近衛騎士団だろうか。
ひときわ、目立つ金髪の青年がいた。
彼は騎士団の前に立っていた。
「私は宰相のオルフェオ・オクセンシェルナ(Orfeo Oxensjerna)です。今回の招待を企画したのは私です。スルト総長、初めまして」
「初めまして、宰相閣下。お会いできてうれしい。私はスルト・ボルグだ。テンペルの総長を務めている」
スルトとオルフェオがあいさつし、握手する。
「私はアンシャル・シベルスクです。初めまして。お会いできてうれしいです」
アンシャルもオルフェオとあいさつをする。
セリオンはそれをじっと眺めていた。
ふと、セリオンは何かを感じた。
「何だ?」
セリオンは周囲を見渡す。
なんだろう? どこか悪意のようなものをセリオンは感じた。
それが何かは分からないが、セリオンには明確に感じられるものだった。
「あなたがセリオン・シベルスク殿? その名はシュヴィーデンにも轟いております。初めまして」
オルフェオが手を出す。
「いったいどういううわさかは知らないが、うわさには責任を持てないぞ? 初めまして」
「フフフフ、セリオン殿は冗談がお好きのようだ」
セリオンはオルフェオと握手した。
オルフェオはセリオンの後ろにいたエスカローネに視線を向ける。
「美しいフラウ、よろしければお名前をうかがっても?」
「はい、エスカローネ・シベルスカと申します。セリオンの恋人です」
「なんと。セリオン殿はこれほどの美女を恋人にしておられるとは。わたくし、嫉妬してしまいそうだ。初めまして。できればあなたとお近づきになれたらいいのですが」
「……」
「オルフェオ閣下! そろそろ時間が来ています! 歓迎式典に臨みましょう!」
オルフェオの部下らしい女性が間に入る。
「ふむ……もうそんな時間か。わかった。それでは皆様、シュヴィーデンは遠路はるばるやって来た皆様を歓迎します。どうぞ、このままお進みください」
オルフェオが一礼した。
スルトが先頭に立って、進んでいく。
「あの宰相! エスカローネに色目を使った!」
セリオンが怒りをぶちまけた。
セリオンとしては自分の恋人にアプローチされるのはおもしろくない。
「これ以上、言い寄られなければいいんだけれど……」
エスカローネも不安なようだ。
エスカローネはあまりあの手のナルシスティックなやからは苦手だ。
エスカローネからすれば話が合わないのだろうが。
一方的に話されるのが嫌なのだ。
かくして、シュヴィーデン側の式典が行われた。




