デート
セリオンとエスカローネは久々にデートを楽しむことにした。
エスカローネはいったん寮に帰り、支度をするようだ。
セリオンは目を覚ますと、シャワーを浴びた。
エスカローネはその時、もういなかった。
セリオンはひげがないので、剃る必要はない。
セリオンは身だしなみを整える。
デートの時はいつも服装に気をつけている。
ただ、身だしなみは清潔感さえあればそれでいいらしいので、あまりセリオンにはこだわりはない。
鏡を見てセリオンは準備が万全だと思った。
セリオンは寮の部屋の鍵を閉めて出発する。
セリオンは女子寮の前で警衛にあいさつして、エスカローネを待つ。
「今日はすてきな格好ですね。エスカローネとデートですかあ?」
スラブ系シベリ人のナターシャが警備に立っていた。
「ああ、そうなんだ、ナターシャ(Natascha)。エスカローネは戻ってきているか?」
「ええ、エスカローネは戻ってきていますよ。今は準備をしているのではないですか」
もう一人はゲルマン系シベリア人のライザ(Leisa)だ。
「待たせてもらってもいいか?」
「「はい、いいですよ!」」
二人が元気よく受ける。
その時、エスカローネが現れた。
エスカローネは黒いワンピースを着ていた。
「ナターシャちゃん、ライザちゃん、お疲れ様」
「エスカローネちゃんこそお疲れえ、うひひひ、今日はデートですかあ?」
「よかったな、エスカローネ。久しぶりにセリオン様とデートなんだろう?」
「もう、からかわないで!」
この二人は、ナターシャとライザはエスカローネの親友だ。
それなりに長い付き合いとセリオンは聞いている。
「あーあー、いーなー、私もセリオン様みたいな彼氏が欲しい!」
「フッ、おまえには望み薄だと思うがな」
「あー、それどーゆー意味? ライザちゃん、私にケンカ売っているの?」
「そう思ってくれてけっこうだ」
「むきー! 言ったなー!」
「こらこら、ケンカはしないでくれ」
セリオンがそれを止める。
まあ、この二人にはこのくらいが平常運転なのかもしれないが。
「セリオン、どうかしら?」
エスカローネが自分の恰好を尋ねてくる。
セリオンは笑顔で。
「ああ、似合ってるぞ。すてきだ」
こういう時、セリオンは女性の服装をほめるべきだと知っている。
エスカローネはほおを赤らめた。
エスカローネはセリオンの腕を取る。
エスカローネの豊かな胸がセリオンの腕に当たり形を変える。
二人はもはやこの程度で驚く間柄ではなかった。
ただ、それでもセリオンにはエスカローネとこういうことをするとドキドキするが。
「それじゃ、出発しようか」
「ええ!」
二人はシュヴェリーンの街に出て行った。
ツヴェーデン連邦共和国の首都シュヴェリーンは大きく旧市街地(Altstadt)と新市街地(Neustadt)で構成される。
旧市街は冷気的建造物や家々で構成される地区で、シュヴェリーンの伝統的な街並みが保存されていた。
新市街地は近代的なビルやオフィスが並び立つエリアで、デパートやマンションもここにある。
娯楽施設も新市街地にある。
セリオンとエスカローネはここに来ていた。
ここは人ごみでいっぱいだ。
シュヴェリーンの人口密度は高い。
セリオンとエスカローネは映画館に行った。
「いろいろ、やっているな」
「どれがいいかしら?」
「エスカローネは希望はあるか?」
「私? そうね。私はセリオンに合わせるわ」
「そうか。なら、あれがいいな」
「あれは……Der König Arthur?」
「ああ、ちょうど興味が湧いていた」
セリオンが指し示したのは、『アルトゥール王物語』だ。
アルトゥール王と円卓の騎士の物語である。
セリオンはチケットを買って中に入った。
二人は手をつないでいた。
「いい?」
「ああ、いいぞ」
セリオンは中で映画を観る。
「それにしても、こんな風に過ごせるのは久しぶりね」
「ああ、そうだな。予定では一年は旅をするつもりだったからな。サタナエルのことがなければ……」
「セリオン、気にしてる?」
「? 何をだ?」
「だって、サタナエルはあなたの親友だったじゃない? 彼がいなくなってさびしくないのかって……」
「ありがとう、エスカローネ。気にしてくれたんだな。だけれど、大丈夫だ」
「本当に?」
セリオンはしばらく押し黙った後。
「まあ、まったく気にしないでるわけじゃない。ただ、サタナエルの行動には謎が多い。それに今はサタナエルのことより、エスカローネだ。今日はエスカローネのために時間を使おうと思っている」
「セリオン……ありがとう」
「そろそろ、上映時間だな」
室内は暗くなってきた。
そろそろ映画が始まる。
セリオンは映画に集中することにした。
「おもしろかったな」
「ええ、そうね。騎士たちは味方と敵に分かれて戦い合うのが見物だったわ」
「さて……これからどうする?」
「まだ、食事には時間があるし……コーヒーショップ・スターダストに行かない?」
「そうだな。俺もちょうどそう思っていたところだ」
「じゃあ、行きましょうか」
「ああ」
こうして二人の時間はあっという間に過ぎていった。
シュヴィーデン王国(Schwieden)――。
ここは北欧と呼ばれる北国だ。
そこに氷漬けになった彫像が運び込まれていた。
「これがマグノリア(Magnolia)。それにしてもこれほど完璧に保存されていたとはね」
「考えられ得る理想的な保存状態ですね」
「フッフッフ、これを研究することができるとは、研究者冥利に尽きるな」
「しかし……大丈夫なんでしょうか?」
「? いったい何を懸念しているのかね?」
「それは……今は保存状態ですが……動き出さないかと……」
「はっはっはっはっは!」
「所長!」
女性研究員は赤くなった。彼女はバカにされたと思ったのだ。
怖くないかと言えばウソになるが……。
いくら凍っていても怪物だ。
「いや、失礼。君も若いな。だが、安心したまえ。このマグノリアは封印された状態にある」
「封印、ですか?」
女性研究員は不審に思った。
「そうだ。なぜ封印されているのかはわからないが、まあ先住民が玉砕覚悟で戦いを挑んで封印に成功したということだろう」
「そうなんですかね?」
「まあいいさ。これを研究できるのはすばらしいことなんだよ? さて、今日はもう帰るとしよう。私も娘の相手で忙しいのでね」
二人は去っていった。
マグノリアと呼ばれた怪物の目が妖しく光っていた。
その目は二人を見ていた。




