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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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治療開始 2

 次の日、爽やかな感じで目覚めた。その様子は表情にも表れていた。口元が緩んでいる感覚が自分でも分かる。その様子を見た同室の患者が言った。

「さくらちゃん、今朝はご機嫌だね。昨日お見舞いに来た彼氏、夢にでも出てきたのかな?」

 鋭い指摘だった。実はその通りだったのだ。

「えへへ」

「当たった? おばさん、結構鋭いでしょう? 私で良かったら相談に乗るよ」

 そういう話をしている他の患者も話に加わってきた。

「そう、良い話だね。彼氏が見舞いに来た時、さくらちゃん、嬉しそうだもんね。気持ちが明るくなると病気も逃げ出すよ。応援するからね」

「ありがとう。でも、坂本君はクラス委員だから来てくれているんだよ。彼、結構イケメンでしょう? クラスの女子にも人気なんだ。私なんか・・・」

「そんなことないよ。自分の魅力は自分じゃ分からないことがある。だからいろんなことを考え合わせるんだ。坂本君っていうの、彼はさくらちゃんに気があるわよ。私も気になる男の子にはマメにアプローチしていた。私が太鼓判を押す」

 そう言うと別の患者さんが口を開いた。

「工藤さんの太鼓判は分からないけど、私も単にクラス委員だからって感じじゃないと思う。頼るところは頼っていいんじゃない?」

 周りの人からいろいろ言われ、嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちになった。だからかもしれないが、朝食がとても美味しかった。

 食べ終わってしばらくすると、看護師さんがやってきた。検温など、様子を見るためだ。その時も朝の雰囲気が継続しており、病室の空気は明るかった。

「あらあら、どうしたのかしら。今朝はとっても和やかね。楽しい話でもしていたのかしら」

 担当の看護師は開口一番、病室の様子がいつもと違うことに驚いた。

「さくらちゃんの恋バナで盛り上がっていたんです」

「そうなんですか? もしかして昨日、見舞いに来ていた人のこと?」

「そうそう、さくらちゃん、彼氏のこと、夢で見たんだって。嬉しいことだから、その話で盛り上がっていたんです」

「私もその話、聞きたいな。今はちょっとドタバタしているけど、後で時間取れたら聞かせてね」

 その看護師さんは優しく微笑んで私に言った。そして検温したが、特別な変化は無いということだった。その話を聞いて周りの人はまた口を挟んだ。

「えっ、そう? 私は恋の病で熱があるものだと思ったけれど」

「あら、入院患者に熱があるなんて良くないわ。さくらちゃん、ごめんね。変なことを言っちゃったね」

「いえいえ、まったく気にしていません。ありがとうございます、気を遣わせてしまいましたね」

 検温からしばらくして、薬の投与になった。点滴の形式で行なわれ、病室で行なわれる。この日で2回目になるが、特別な変化を感じていない分、日常の一部のような感覚でいた。


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