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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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主治医からの告知 1

 次の日、昨日の坂本の見舞いの関係で朝から気分が良い。看護師さんが病室にやってきていつもの検温などを行ないながら、話しかけてきた。

「さくらちゃん、今朝はご機嫌ね。何か良いことあったの?」

 その言葉に反応したのは私ではなく、同室の患者さんだった。

「昨日、さくらちゃんの彼氏が見舞いに来てくれて、その後からすごい笑顔なんだよ」

「そうなの、さくらちゃん、良かったわね」

「違うの、彼氏じゃない。クラス委員の坂本君。気を遣ってくれているだけ」

 私は顔を赤らめながら否定した。しかし、それは恥ずかしいからだけで、私自身はそうなりたいと思っていることなので、周りからはそう見えるのかな、と思いながら嬉しい気持ちでいた。

「さくらちゃん、そういう良いことは体調の回復には大切なことだから、良かったわね」

 担当の看護師はそう言って病室を離れた。

 その後、いつものよう昼食を食べ、ゆっくりしていた。いつもなら母親が身の回りの世話のためにやってくる時間になったが、この日はいつもの時刻になっても現れない。もしかすると何か急用が入って遅れているのかな、と呑気に考えていた。

 その時、いつもの看護師が病室にやってきた。

「高野さん、先生がお話があるということで診察室でお待ちです」

 私は退院の話と思い、元気な声で返事した。

「あら、元気な返事ね。やっぱり昨日のことが影響しているんでしょうね。良かったわ」

 良い話が聞けるものと思っていた私は、元気な足取りで診察室に向かった。

 ドアをノックして診察室に入ると、母親がそこにいた。先生とお話をしていたので病室に来れなかったのだと勝手に理解し、先生の前の椅子に座った。

 ただ、雰囲気がちょっと違う。何か空気が重いのだ。てっきり退院の話と思い込んでいた私はその様子に違和感があった。

 次第に私の表情も固くなっていく様子を感じる。そのため、つい私のほうから口を開いた。

「あのう、何かありましたか?」

 私の言葉に主治医の先生も母も表情が曇っている。

「さくらちゃん、大切なお話だから先生からきちんと聞いてね」

 その時の声のトーンから、私は軽く聞けるようなことではないことを直感した。その瞬間、私は表情だけでなく、心にも緊張が走った。

「今、自分で感じる体調はどうですか?」

「これまでと違うという感じはありません。咳は波があり、気になるくらいの時もあれば、落ち着いている時もあります。薬で何とかなるんじゃないんですか? まさかこの咳、結核とかじゃないんでしょうね」

 私は咳というところが気になり、最初に思い付いた結核への懸念について質問した。

「いいえ、結核ではありません」

 結核の可能性はきっぱり否定された。

 しかし、何か言い淀んでいる様子は私にも分かった。

 言われたらその内容次第ではショックだろうが、言われなければ疑心暗鬼になる。正直、それも辛い。聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが私の心の中で交錯する。ただ、こういった時間を過ごすだけならそれこそ針のムシロだ。3人の間で無言の時間が流れる。実際にはそんなに長い時間ではないかもしれないが、こういう時の時間は無限にも感じることがある。診察室に入った時より重い空気になっている。

 そういう流れの中で、母が口を開いた。

「さくらちゃん、とっても言いにくいんだけど、あなたが気にしている本当の年齢に見えないこと、実はウェルナー症候群という病気なの」

「そのことか。私、先生からはっきりとは聞いていないけれど、今はパソコンやスマホで何でも調べることができる。中学生の時から変な感じになっていって気になっていた。でも、お父さん、お母さんに相談できないでいた。私が気にしていることを知ったら、お母さんたちが悲しむと思った。実際の年齢よりも年を取ったように見える早老症っていうらしいわね。いくつかあるみたいだけど、ウェルナー症候群じゃないかってことは思っていた。はっきり聞けて、逆に安心した。今日はその話だったの?」

 私の言葉とその時の様子から主治医と母は逆に驚いていた。


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