エピソード6.俺の異世界生活がこんなに順調な訳がない!❹
先制攻撃を仕掛けてからティティスはずっと、青虫の攻撃を身軽なフットワークで避け、隙を突き確実にダメージを与えていってる。
「勇者っ!お願いっ!!」
そしてティティスに意識が逸れている間に、勇者が長時間詠唱の連続爆裂魔法を青虫に放つ。
ーーゴォォォォン!ゴォォォォン!ゴォォォォン!
ティティスは爆発が収まるまで退避、その後に再び先程の流れを繰り返し青虫の隙を突き確実にダメージを与えながら、大火力である連続爆裂魔法の詠唱時間を稼ぐと言うめちゃくちゃ効率の良い戦い方を行い、戦況は誰がどう見てもこちら側が優勢な状況だった。
「おうおうおうおうおおおおん」
青虫の苦痛に歪む悲鳴も本当に気持ち悪い。
ティティスは相変わらず素晴らしい動きで完全に青虫を翻弄している、テュランノス戦での一件以来彼女は本当に迷いの無い良い動きをする、それだけでは無く前よりも増して勇者との連携も呼吸が合っている。
ーー逃げ損なったローパーを駆除しながら、二人の戦闘を見守る俺は完全にボス戦で出番を失っていた、しかしそれだけ事が順調なのだ。
青虫は恐らくめちゃくちゃ強いのだろう、しかし俺の仲間は更にめちゃくちゃ強かった、戦況を見守る俺は『勝利』を確信した。
「勇者っ!」
「はい」
ティティスの声に、相変わらずブレない口調で答える勇者は何度目になるか分からない連続爆裂魔法を放つ。
ーーゴォォォン!ゴォォォン!ゴォォォン!ゴォォォン!ゴォォォン!
そして爆風が収まる前に、二人は息のあった動きで共に青虫目掛けて同時物理攻撃を仕掛ける。
「とどめよっ!!」
先程の爆裂魔法で完全に怯んだ青虫は勇者の剣撃とティティスの打撃による連続攻撃を防げる術は無かった。
「おうおうおうおうっ!?」
気味の悪い声で鳴き叫ぶ青虫。
そしてとうとう二人の攻撃で青虫の息の根を止めたのか、先程の鳴き声を最後に青虫の肉体はドロドロに溶けて消えた。
「つ、つえー。…二人ともまじで、つえーー」
まじで、今のでボス戦終わっちまった。
俺の仲間は確実にパワーアップしている、この二人が居たら本当に占い師の予言通りに魔王だって倒せるかも知れない。
あんなに派手な登場をしてきたのに本当に呆気なく終わった青虫戦を見て本気でそう思えてきたのだった。
ーー俺達は王様に報告をする為に例のアイテムを使い王都に戻る事にした。
本当に瞬き一つで、王都に戻ってきており改めてこのアイテムの凄さと異世界っぽい展開にテンションが上がる。
「おおお!まじで一瞬じゃん!」
王都を見回しながら俺は弾んだ声をあげる。
「ほら、はしゃいでないで。早く王様に報告に行きましょう」
ティティスに急かされ俺達は王城に向かう。
「イチロー様!皆んな!良くご無事でっ!」
「ティティスっ!良かった!」
王城前で門番をしていた、コーネリオンとフォルトゥナが俺達の姿を見つけるなり嬉しそうな表情で駆け寄ってきた。
「ふふ、もうオーバーなんだから。…大丈夫だっていつも言ってるでしょ?」
抱き付いてくるフォルトゥナの背中をポンポンと叩きながらティティスが優しく呟く。
女子の友情と言う奴だ。
「…うんっ……分かってるけど、長期で何日も魔の森に入ってたんだもん、やっぱり心配よ。……勇者様も、イチロー様も…本当にいつもありがとうございます」
フォルトゥナは俺と勇者に対して、丁寧に頭を下げた。
「いいえ」
勇者はこんな時でも本当にブレない返事を返している。
俺に関しては逆に二人に助けられている立場だ、俺は返事の代わりに二人がどれだけ凄い功績をあげてきたのかをフォルトゥナとコーネリオンに伝えた。
「四天王の青虫をコイツ等まじでソッコー倒してさ?分かってたけど、ほんっとつえーわこの二人、マジで俺の出番今回はなかったもんな」
「…勇者のおかげよ、別に私はそんなに活躍してないわ…」
照れ臭そうにティティスが呟く。
「いやいや、ティティスなんて青虫の動きを完全に読んでたし、それにずっと最前で一人で青虫を相手したじゃん!勇者もそうだけど、お前の活躍もあってこそだよ!な?勇者?」
俺は『いつもの二人のやり取りを真似て』勇者に同意を求める。
「はい」
勇者からの返事が来た。
あれ?何かコレ結構楽しいかも知れないぞ?
「凄い!流石ティティスね!」
「あぁ!やっぱお前は自慢の幼なじみだぜ!」
幼なじみ二人組から称賛されるティティスは、居心地が悪そうにしているが少しだけ嬉しそうな表情をしたのを俺は見逃さなかった。
まったく、本当に素直じゃない奴だ。
俺は調子に乗って、更にティティスの活躍を二人に伝える。
「いや、すげーのなんのって…こう、こうやって…こんな感じの動きでっ……避けて、そして青虫の隙を見て、拳を打ち込む!的なさ?な?勇者?」
ティティスの動きを実際に身体を使い真似て見せ、最後に再び勇者に同意を求める。
「はい」
定期的に勇者に『ね?勇者?』と尋ねるティティスの気持ちが今初めて分かった気がした。
「…アンタ…私の事馬鹿にしてる…?」
ティティスがジト目で俺を冷たく見つめてくるが、正直照れ隠しにしか思えない。
まったく、本当に素直じゃない奴だ。
「…何よ、その分かりきったような表情は?…なんかムカつくわね…」
ティティスは清々しいくらい今日も相変わらずのツンデレ具合だ、俺は彼女の攻撃的な呟きを軽くスルーして勇者に声を掛ける。
「おーし、じゃあさっさと王様に報告に行きますか?な?勇者?」
「はい」
笑顔の俺は勇者を引き連れて門を開ける。
「王様はこの門の扉を開き真っ直ぐ進んだ部屋におられます!」
コーネリオンは一瞬でモブ化したかのように相変わらずのテンプレートな言葉をスラスラと述べた。
「お仕事ご苦労!」
俺はコーネリオンに労いの言葉を投げかける、そしてそんな彼は俺の言葉にドヤ顔で応えた。
「…ちょ、ちょっと!何スルーしてんのよっ!?」
不機嫌そうに俺の後を追いかけてくるティティス。
俺自身もティティスに対する気持ちが『レッド!』と魂のシャウトをした夜を境に整理出来ており、至って自然な感じでティティスに以前のように接せれるようになっていた。
やはり、彼女とはこんな感じで絡める方が楽しい。
四天王も着々と倒し、仲間との絆も深まり、初期の頃と比べ改めて考えると、俺の異世界生活がこんなに順調で良いのかと思えるくらいだった。




