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エピソード6.俺の異世界生活がこんなに順調な訳がない!❺

王様は俺達の顔を見るなりパッと表情が明るくなった。


「うおーーー!イチローちゃん!勇者ちゃん!ティティチュちゃん!お帰りー!聞いたよ!?聞いたよっ!?またまた四天王を倒したんだってね!?凄いじゃん!まじで凄いじゃん!!」


王様は興奮気味だからか、捲し立てるように喋ったからか、どちらが原因か分からないが明らかに『ティティス』の名前を『ティティチュ』と噛んでいた。


ーーチラッとティティスの方を見ると、明らかに『ティティチュ』と言われた事に対して気が付いているが、やはり相手が王様だからだろうか?必死に聞こえなかったフリをしようとしている。

本当に彼女は真面目だ。


「いやー、めでたい!まじでめでたい!やっぱ救世主君ぱねーわー!ほんっといつもありがとね!ほら、これは報酬のゴールドだ!!」


「あ、ありがたき幸せー!」


一応相手は王様なので、(こうべ)を垂れて報酬を受け取る、だが結構返事は適当だったりする。


「っしゃー!じゃあアレだな!こんな日はやっぱ酒だなっ!宴会をすっぞ!おい!宴会の準備だ!今日こそは王都中の民をまじで全員強制的に招集させろ!王様命令だっ!もちろん亜人の反逆組織の奴等もだっ!今夜は王城のアホみたいに空いてる客室に全員お泊まりさせっぞ!こんなめでたい日だ!王都全員で盛り上がらねーとなっ!?」


「で、ですが…王様!?」


兵士の一人が焦った様子で王様を説得に掛かる、やはり反逆組織の亜人達を招く事はリスクを生じるからだろう。

しかし、やはりと言った事か王様は一歩も引かなかった。


「アホか!?わしは王都の民全員っつっただろ!?亜人もわしが民と認めた瞬間からこの王都の民の仲間だっ!そんなんだからいつまで経っても争いが起きるんじゃボケ!?」


「…しっ…失礼致しましたっ!?」


「し、至急準備に取り掛からせて頂きますっ!?」


王様にブチギレられ兵士達は急いで宴会の準備に取り掛かり出す。


正直意外だった。

いつもふざけている王様だが、本当は熱い人なのかも知れない。

王都に亜人達を招いたのもこの人の指示だったと聞いていた、中にはこの王様のやり方を良く思わない人達も大勢いるだろうけど、だけど、俺はこの王様の言う事に初めて凄く好感を持てた。


「あー、めんごめんご!皆んなの前でマジギレしちゃってまじでめんご!…あー、宴会が始まるまでそれぞれの客室でゆっくりしちゃっててよ!おーい、コーネリオン!フォルトゥナ!」


『めんご!』に付いて突っ込む暇さえ与えてくれない王様は手をパンパンと叩きながら二人を呼んだ。


「はい、お呼びでしょうか」


ーー直ぐに王様の前に現れ膝を付く二人。

凄い、完全に仕事モードのラブコメ兵士達だ。


「三人を部屋まで案内してやってちょ!…あー、宴会が始まる時にはまた使いのものを行かせるからよっ!まーそれまで浸かり湯にでも入るなり自由にしててよ」


「はい」


浸かり湯?何だそりゃと首を傾げる俺の代わりに、勇者が一言返事を返してくれた。





コーネリオンの案内で、無限にあるんじゃないかと思えるくらい沢山ある客室の一つを俺は使わせてもらう事になった。

て言うかこんなに王城に部屋が余ってたんだったら、初日の晩王城に泊めてもらえば良かったじゃんと気が付いてしまい、軽く凹む。


「因みに今晩はイチロー様の隣の部屋を俺が使わせてもらえる事になったんで、宜しくです!」


さっきの道案内役で都合良くに業務終了になったコーネリオンが嬉しそうに言った。


「なんか前回よりもグレードアップしたお祭り騒ぎみたいになっちゃったな?」


「そりゃ四天王を二匹も倒したんですからっ!今、救世主様であるイチロー様のおかげで!人類は確実に前進出来ているんですっ!そりゃ王様もあんな事仰られるはずですよっ!!」


コーネリオンは食い気味に救世主の偉大さを熱弁してくれた、それは嬉しいしありがたいと思うのだが。

うん、でもやっぱりまじで唾飛んでっから、汚ねぇから。


「…いや、でもまぁそれに関しちゃさ…」


俺は頬に付いた不愉快極まりない(あれ)を腕で拭き取りながら言葉を続ける。


「何度も言ってるけど、まじであの二人の頑張りだよ。俺は本当に今回は何もしてねぇって」


「…いえ、やはりイチロー様の存在は凄く大きいです!ティティスの奴も帰ってきた時凄く良い表情をしてしましたから。…本当に色々とありがとうございます、俺とフォルトゥナもイチロー様が付いていてくれているからアイツの帰りを信じて待ってられるんです」


唾は汚いが本当にコイツは幼なじみ想いの良い奴だ。

きっと本人はここまで想われている事に気が付いてないんだろうが。


「…なぁ、アイツ小さい頃ってどんなんだった?」


「あー、そうですね。基本的には性格が今よりもう少し柔らかかったですよね、やっぱり」


「へー」


柔らかい性格のティティス、今では少しなら想像する事が出来る気がする。


「後は、俺の親父からイチロー様達の世界の話を聞いたりしてて…あっ、別に俺の親父も異世界マニアってだけでただの聞いたり集めたりした知識を俺達に話ししてくれてただけなんですが。まぁ、でも…今思うとあの頃は俺よりもティティスの方が異世界に対する憧れは強かったような気がします、モンスターが居ない平和な世界で家族と一緒に暮らしたいっていつも目をキラキラさせて言ってましたから」


「…………」


モンスターが居ない平和な世界で家族と暮らしたい、か。


「まぁ、色々あって…今のアイツは現実味のない夢物語よりも訓練した方がマシって言って、昔みたいに異世界の話に付き合ってくれなくなりましたけどね。ある意味大人になったんでしょうね?…俺は、ほら…まだガキなんで、未だに異世界に対する憧れが強いんですけど」


コーネリオンは笑いながら言ったが、その瞳は少し寂しそうにも見えた。


「あっ!…そう言えば、そうっ!ティティスの話をしてたら思い出しましたよ!実はイチロー様達が四天王を倒して帰って来たと聞いて、王様がこんな事を言い出すだろうなと思い、エリーゼさんやパスティちゃん達も実は王城に招待してたんですよっ!」


「え、まじ?」


エリーゼ達が来ている。

彼女の名前が出ただけで胸が弾むような気がした。


「…はい。それで、なんですけど…今女性陣は全員で、浸かり湯に行っておられます…」


また出た、本当に『浸かり湯』とは何なんだ?


「あ、ごめんなさい。…浸かり湯って言っても分からないですよね?イチロー様の世界ではこう言います温泉(うぉんせん)と」


「あー、なるほどな。浸かり湯ってそう言う意味か!」


コーネリオンは力強く頷き、そして再び熱く語り出す。


「はい!温泉(うぉんせん)には今頃、勇者様、ティティス、フォルトゥナ、エリーゼ様、パスティちゃんがおそらく入浴(にゅーよーく)しているはずです!はずなのですっ!」


「お、おぉ…」


「なら答えは一つでしょー!?イチロー様ー!?今、温泉(うぉんせん)は男達の天国(パラダイス)なのですよ!?…だったら一つしかないでしょー!?ね?分かるでしょ!?イチロー様!!」


彼は血走った目で、同意を求めて来る。


「ま、まさか…お前……」


現代の知識も豊富で、尚且つライトノベルも読み漁っているこの変態の言い出そうとしている事を理解してしまった。


「イェース」


コーネリオンは不敵な笑みを浮かべながら、メガネをスッと掛け、カッコつけたような口調でハッキリと言い切った。


「もちろん覗きですっ!!」


「……いや、ダメだろ」


バッサリと切ると、彼は身体をくねらせながら反論してきた。


「何故ですかっ!?…ラノベでも温泉(うぉんせん)のシーンは、ラッキースケベだったり!お色気イベントだったり!トラブル混浴イベントだったり!覗きイベントは必須だったでしょ!?いや、これ鉄板でしょーがぁ!?」


「いや、そうだけど…確かにお前の言いたい事は分かるけど、アレはあくまでフィクションだから…現実でそんなんしたらやばいだろ?」


「ティティスのわがままボディーや勇者様のきめ細かい肌を存分に見れますよ?」


「……いや、でもやっぱりそう言うのは…」


ジト目で俺の心に揺さぶりをかけるコーネリオン。


「パスティちゃんのぺったんこなアレも見れますよっ!?」


「………いやいや、やっぱ、まずいって……」


「実はフォルトゥナって結構胸あるんですよ?」


「……ふ、ふーん。…そうなのか」


「エリーゼ様のあの真っ白な肌を存分に見てみたいと思いませんかっ!?」


「…………」


「この俺の隻眼(せきがん)でもエリーゼ様のオパーイは把握できておらず未知数なのですが…おそらくティティス以上なんじゃないか、とは思っているのですが…確認したくないですか?」


明らかに心がぐらついている俺を見抜いて、コーネリオンは最後の追い討ちを掛けてきた。


「…あの修道服の向こう側へ一緒に行きませんか?」


肩にポンと手を置き、煩悩まみれではあるが悟りを開いたような澄んだ瞳で彼は穏やかに言った。


「…くっ………どうやら、俺の負けのようだ……」


「イチロー様と共に死ねるのなら、そこに夢の国があるのなら、俺はどんな戦場にだって行けますっ!!」


人差し指でメガネをスッと掛け直した後、コーネリオンはグッと親指を立ててきた。


「あぁ!やるか!ここは(おとこ)を見せる時だよな!そうだろ?ブラザー!?」


「イエス!」


彼はニヤリと笑う。


「YES!…んじゃあ、ちょっくら行きますか?俺らの戦場によぉ!!」


俺達はテンション爆上げで戦場に向かう事にした。

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