エピソード5.未知なる森へ❶
俺はある事に気が付いてしまった。
山本一郎18歳、現在異世界生活何日目かの朝である、恥ずかしながら俺の異世界生活はチートなパラメーターで無双しまくるとか、美少女にモテまくりのハーレムルートなどと言った事もなく、全くと言って爽快感のない地道な訓練の毎日と今だにどの美少女からも好意を寄せられていない非リア充の毎日を送っている。
しかしながら俺はある事に気が付いてしまった。
俺は異世界に来て自分に何か特別な力があるんじゃないかと散々色々試してみたが実はまだ一つ試していないものがあった、それにふと気が付いてしまったのだ。
そう、何を隠そう、それは『死に戻り』の能力である。
俺みたいな一般人の主人公が異世界に来て、死に戻りの能力により何度も過去に戻りループを繰り返し、ヒロインを救う的な作品をちょっと前に読んだ事があった。
死ぬのは怖いので迂闊に試そうとは思わない、思わないが、俺にも『死に戻り』を使える可能性があるかも知れないのだ。
魔の森に入り、二日目の朝を迎えた俺達はリザードフライを蹴散らしながら再度ヨトゥンと戦った洞窟を目指していた。
「なぁ?確かあの洞窟ってもうすぐだったよな?」
「はい」
先頭を歩くティティスは昨日から引き続きすこぶるテンションが低めで口数が少ない、おかげで昨日からずっと勇者に相槌をうってもらう日々を送っていた。
「…ティティスの奴テンション低いよな?」
「はい」
「…俺、何かやらかしちまったかな?」
「いいえ」
俺に思い当たる節があるとすれば、昨晩野宿する時に先日の恨みと言わんばかりに干し肉を食べ過ぎちまった事くらいだ、しかしながら勇者曰くそれも原因ではないようだ。
こうなったら直接本人に聞くしかない。
「おーい、ティティスー!ティティスさーん!」
「何?」
「大丈夫か?」
「…何がよ?」
俺のうざ絡みに鬱陶しそうに答えるティティス。
「いやいや。昨日から何かテンション低いなーって思ってさ」
「…別に、そんな事ないわよ…」
某売れっ子女優のように『別に』と答えるティティスは明らかに別にそんな事ない様子でもなかった。
ココはアレである、過去に様々な小説を読み漁り培った俺のコミュケーション能力が試される時である、こう言う時には何気ない雑談を挟み、場の雰囲気を変えるのが大事だ。
俺は共通の話題をティティスに振ってみた。
「あ、そー言えばさ?……昨日魔の森に向かう前に王様の息子だっけ?その人が持ってきてくれたアイテムまじですげーよな?早く試してみたいぜ!」
「……………そうね…」
あれー、明らかに逆効果なんだけどー?もしかして話題ミスったのか?…しかし、ここで焦るのが素人だ、俺くらいになるとこれくらいで焦ったりしないぜ!とりあえずもう一度同じ話題を振って様子を見る事にしよう。
「…いや、だってよ?五個しか貰えなかったけど、あれ使うと一瞬で王都まで帰れるんだろ?ワープ的な?まじですげーじゃん!まじで異世界バンザイ!」
「……今回から未知なる領域に足を踏み入れる訳だから…本当に貴重なアイテムだけど、王様は私達に託してくれたのよ…間違っても面白半分で使ったりしないでよね?」
「分かってるよ」
アイテムの話を詳しくすると意外と受け答えをしっかりとしてくれた、話題をミスった訳ではないようだ。
「…ところで、あの王様の息子さんだけどさ?見た所俺達とそんな変わんない年齢に見えたけど、本当に息子なのかな?孫とかじゃなくてさ?」
「…………」
もしかしてコレか?この話題がアウトなのか?…俺は試しに王様の息子の話をもう一度振ってみる事にした。
「…だってあんな若い息子がいるなんて思わないだろー?ビックリしたよー、突然父上から忘れ物を預かっているって現れてさ?しかもあの息子結構イケメンだったし、きっとモテるんだろうなー」
「…………………そうね」
うわー、すげー低いトーンの『そうね』だ、これ確実に王様の息子の話題が地雷だろ!?…思い返せば、昨日魔の森に向かう前に王様の息子と会ってからティティスはずっとテンション低かった気がする。
俺は勇者に向かい『もしかして、王様の息子?』と口パクでメッセージを送る、見事メッセージを受信した勇者はコクンと頷き返事を返してくれた。
「な、なぁ?…お前王様の息子と何かあったの?」
「…何がよ?」
「……もしかして、元彼?」
「……ねぇ?本気で殴っていい?」
どうやら本気でキレさせてしまったようだ。
「…くだらない事言ってないで少しは気を引き締めたら?」
ティティスの言う通り、そんなこんなしている間に例の洞窟の入り口にまで来ていた。
俺達の目指す場所はヨトゥンと戦ったあの洞窟の先にある、過去に何度もヨトゥンに敗北していた人類にとって、あの洞窟の先は未知なる領域であり、その先に残りの四天王も居るはずなのだ。
「相変わらず空気が悪いよな…ここ…」
前回の戦いを思い出しながら洞窟内を暫く進んで行くとやっと出口が見えてきた。
「すっっっげーーー!!」
洞窟を抜けた先の景色を見て俺は興奮気味に声をあげた。
未知なる領域と呼ばれるその場所は、洞窟を抜ける前みたく樹々に囲まれた森に変わりはないのだが、遠くの方にはビックリするくらいに馬鹿でかい滝が流れている、これ程にでかい滝が現代にあれば余裕で世界遺産登録されるだろうってレベルだ。
「すっっっげーーー!!流石異世界!!自然半端ね」ー!!」
ここから滝までの距離は結構離れている筈なのにも関わらず少量の水しぶきが飛んでくる。
「……セリーヌ滝……」
「え?」
ティティスが俺とは正反対な暗い表情で呟く、どうやらあの滝を知っているようだった。
「……まさか、ここがあの場所だなんて……」
「てか…ここに来た事あんのか?」
「……ずっと前に、ね……」
この場所は人類にとっても未知なる領域だと聞いていた筈だが、何故かティティスはここに来た事があると言った。
「……本当に嫌になるわ……この世界……」
そう吐き捨てるように呟いた彼女の声は凄く憎しみがこもっているように聞こえた。
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二匹目の四天王を倒す為、魔の森の更に奥地へ。
ここからシリアスパートがどんどん増えて行きます!




