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エピソード4.戦士の休息❹

翌日、再び早朝から俺とティティスは魔の森で、リザードフライを狩り続けた、ティティス先生は相変わらずの攻撃力でガンガンリザードフライを倒して行くそれまでは昨日と同じ光景だ、しかし今日の俺は昨日とは違う、既に俺は五匹以上のリザードフライを自力で倒す事に成功していたのだ。


「はぁはぁ…よっし!……これで、五匹目!」


昨日の午前中に散々リザードフライと戦闘した経験と感覚、そして午後にも散々した素振りが今日の俺の成果を確実に上げていた。


「よっし!…はぁはぁ…次、行こうぜ!」


筋肉痛で身体中が痛いが今日の俺はまだまだやれそうだ。


「………」


ずっと俺を呆れた表情で見つめ続けていたティティスが口を開いた。


「何?」


「はい?何って何が?」


「………じゃあまず、その額の奴何?」


ティティスは俺の額のガーゼを指摘してきた、昨日エリーゼに手当てしてもらった奴だ。


「あー、いやコレは、ちょっと昨日子供の喧嘩に首を突っ込んじゃって。まぁ、今はもう全然大丈夫なんだけど」


「ふーん」


「あ、昨日あの後ちゃんと素振りしてたからな?サボってないぜ?」


「あ、うん。それはアンタの掌見たら分かるけど」


「じゃあ何だよ?逆にどうかしたのか?」


「…じゃあもう一つ、アンタ何か良い事あった?」


え?何々エスパー?何故俺の心の中が読めるんだ?


「…えっと、何で?」


ゴクリと生唾を飲み込み、逆に尋ね返してみる。


「昨日よりも生き生きしていて凄く気持ち悪いなって思って」


あー、俺がそんだけダダ漏れな雰囲気出してたのねー、しかしそれだけで気持ち悪いって、ティティスは相変わらずの毒舌っぷりだ。


「まー、ちゃんと集中してくれるなら別に問題はないけど。…じゃあ次行く?」


「お、おう!もちろんだ!」


結局この日は計十三匹のリザードフライを倒す事ができた、約束の時間になり俺達は王都に帰る事に。


「休暇は今日で終わりだから、午後の訓練が終わったら直ぐに身体を休めておいてね?明日からまた四天王を倒しに魔の森の最深部に入るんだから」


「分かってるよ」


「明日の早朝王城前に集合、分かった?」


「あぁ」


今日で休暇も終わりだ、明日からまた別の四天王を倒しに向かうのだ、そう思うと今から緊張してしまいそうだ。


「あれ?救世主様!?」


突然人懐っこい声が響くその主の方に振り返るとオルガの姿がそこにあった。


「おー、お前か!…ってか、何してんだ?」


オルガは明らかに土木作業員のような仕事を手伝っているように見える。


「オイラは今仕事中だよ!一杯頑張ったらご褒美もらえるんだ!…あっいっけね、お話ししてたら親方に怒られるんだ、救世主様またね!」


重たそうな木材を運びオルガを再び仕事に戻っていった。


「アイツ…あんな重労働をしてたのか」


「意外だわ」


「え?」


「アンタてっきり、あの子のような赤鬼の亜人を見たら怖がるかと思った」


「赤鬼の亜人?」


どうやらオルガの正式な種族名のようだ。


「そう、あの亜人の子は赤鬼の亜人。…最初アンタを襲っていた地下の洞窟に居たのは青鬼の亜人の種族よ、赤鬼の亜人は人の言葉も話せて人間に近い文化を築いてきてたけれど、青鬼の亜人達は正直野生のモンスターと変わらないわ、でも、元々先祖は同じ種族みたいなの」


それでオルガを見た時にあの時の亜人達と重なったのか、まぁ中身は本当に似ても似つかないが。


「…昨日、仲良くなったんだよ。それにあの子はあの亜人達とは違うって分かってるし」


「…なるほどね。でも、一つ忠告。青鬼意外の亜人は皆んな平和的だなんて事も思わない方がいいわよ?…確かに亜人に酷い事をする人間も居るけど、それは逆も然りよ、亜人を王都に受け入れてから現在まで、亜人達による犯行もまだまだ無くなってないんだから」


「そう、なのか…?」


そう言えばオルガは人間にヘコヘコすると言う理由で仲間の家から追い出されたと言っていた、という事はティティスの言う人間に対して攻撃的な亜人達もこの王都に居るって事だ。


「じゃあ、私はここで」


住宅街付近まで来た所でティティスが淡々と別れを告げる。


「……そう言えばよく解散した後にそそくさと帰って行くけど何か用事あんのか?」


「は?…家に帰るだけだけど」


あ、家ね!言われてみればコイツらと旅している訳じゃないから普通に自分の家があるのか、でもそれにしても、もうちょっとパーティーメンバーと同行する時間増やしてもいいんじゃないのか?ってかどんだけお前は家に早く帰りたいんだよ!と心の中で突っ込んでみた、あくまでも心の中での話だ。


「何よ?悪い?」


不機嫌そうなティティスさん、どうやら少し気分を害してしまったようだ、ここは一つ新ネタで場の空気を変える事にしよう。


「いやいや…家ってさ!最高だよなっ!」


ビシッと凛々しい顔でポーズを取ってみる、昨日からハマっているポージングだ。


「…うん、それに関しては私もそう思うけど。…てか何?そのポーズと顔は…凄く気持ち悪いんだけど、しかも何か腹立つわ…」


どうやら火に油を注いでしまったようだ。


「あ、何かすみませんでした…」


「…………じゃあ私帰るから」


ティティスは立ち去るギリギリまで俺を白い目で見ていた、やはりあの決めポーズは亜人にしか評価されないようだ。


ーー日が暮れ始める頃、昨日と同じ広場でひたすら剣の素振りをしていると、珍しくフォルトゥナ(ラブコメ兵士二号)に声をかけられた。


「あ、あのっ救世主様!」


「お前はコーネリオンの彼女」


「アイツの彼女なんかじゃありませんよ!…あっ…その、失礼しました…」


フォルトゥナは瞬発的に否定し、突然我に返りあたふたしている。

うん、中々良いリアクションだ。


「で、どうした?」


「…あ、はい。実は…」


フォルトゥナが言うには子供達が数人行方不明になっているらしい、行方不明者の子供の家にはゴールドと引き換えに子供を返してやると置き紙がしてあったそうだ。


「…それで、あの…恐らくですが、亜人の犯行の可能性もあると考えているのですが。…失礼ですが、イチロー様、昨日この場所で亜人の子供と一緒に居なかったでしょうか?」


亜人の犯行、先程のティティスの言葉が頭を過ぎる。


「……一緒に居たけど。それがどうかしたのか?」


「…その、行方不明になっている子供達と言うのが、昨日この場所でその亜人の少年と揉めていた子供達なんです」


「………それで、俺に何か用?」


「…はい、その亜人の少年も探しているのですが中々見つからなくて、もし行きそうな場所などがあれば教えて頂けないかと」


犯人は亜人の可能性がある、被害者は昨日オルガをいじめていた少年達、そして今フォルトゥナ達はオルガの居場所を探している、まるでアイツが犯人じゃないかと言ってるようなもんだ。


「…ちょっと待ってくれ。お前もしかして、オルガを疑ってんのか?」


「……いえ、あくまで可能性の一つとして調査しているだけでその亜人の少年が必ずしも犯人だとは断定してはいない…」


「アイツは絶対そんな事しねぇって!」


フォルトゥナが話終える前に食い気味で口を挟む、オルガを疑っているってだけで凄く腹が立ったからだ。


「俺がその子達を見つけてきてやる!んで、オルガの無実を証明してやる!」


「あ、あのっ!…イチロー様!?」


フォルトゥナの制止を無視して走り出した、まずはオルガが無事に帰って来ているか確認する所からだ。


ーー教会の裏庭の奥にあるオルガ達の家まで全力で走って来た為、息切れが限界まで達していた。


「はぁはぁ……パスティ!…オルガは居るか!?」


「救世主様!…どうしよう、オルガが帰って来ない!」


室内には泣きじゃくるパスティとそれをなだめるエリーゼの姿しかなかった。


「…まだ、帰って来ていないのか?」


「…はい。いつもは夕方までには帰って来るのですが…」


大丈夫よとパスティをなだめてはいるが、正直エリーゼも不安そうな表情をしていた。


「…分かった。二人は絶対に外に出るなよ?」


子供達の親は確実にオルガを疑っているだろう、もしかすると逆上して変な気を起こすかもしれない、パスティも外に出ない方がいいだろう。


「…は、はい。…あの、イチロー様どうかされたのですか?」


「悪い、説明は後だ。…とにかくオルガは俺が連れて帰って来るから」


ーー息が整う前に走り出す、次は昼過ぎにオルガと会った職場を目指す。


「…すっ……すみません!……あのっ…ここで働いている亜人の少年はっ!?」


「アンタは!救世主様じゃねぇか?…オルガならもうとっくの前に帰ったぞ?」


仕事道具を整理しながら親方は気になる事をポツリと呟いた。


「あ、そう言えばさっきも男達が数人やって来てオルガの事を探してる感じだったけどな」


「それは、兵士達とかではなくて?」


「あ、あぁ。普通の人間の大人達だったが。オルガの野郎何かやらかしたのか?」


間違いない、子供の親達だ。


「いえ、変なゴタゴタに勝手に巻き込まれてるだけです!ありがとうございましたっ!」


職場にも居なかったとなると、まじでもう本当にどこを探せばいいのか分からない、それでもとにかく街と言う街を走り回る事にした。


『オイラは人間の子よりも力が強いから絶対に皆んなに手をあげたりしないよ』


『時には嫌な事言われたり、酷い事されるけどさ、それでもオイラは人間が好きなんだよ』


笑いながらそんな事を言っていたオルガが、あんなにキラキラした瞳の少年が疑われて良い訳ない。

肺が限界だと悲鳴を上げている、それを無視してひたすら俺は走り続けた。

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勇者さんはもう少しお休みです。

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