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エピソード4.戦士の休息❸

オルガ少年とロリエルフのパスティちゃんにどうしてもお礼をさせて欲しいとの事で、彼等の家にお邪魔させてもらう事になった。


「…って、家ってここなの?」


その建物は王都の栄えている住宅街からかなり離れている場所にポツンと建っている見覚えのある教会だった。


「違うよ!オイラ達の家はこの教会の裏側さ!」


オルガ少年とパスティちゃんは堂々と教会の敷地内に入り込み裏庭をぐんぐん進んで行く、不法侵入になるんじゃないかと俺が一瞬躊躇っていると、そんな俺に対しオルガ少年が早く早く!と無邪気に手を振ってくる。


「…はいはい、今行くよ…」


まるで少年達の仲間に入れてもらい秘密基地に招かれているようだ。


「…嘘、イチローさん?」


聞きお覚えのある声に振り向く、前と違い完全に髪が隠れるように修道服のベールを被り雰囲気がちょっと違う様子ではあるが、すぐにエリーゼだと分かった、って言うか美人だから分かった。


「あ、エリーゼ!?…ごめん、ちょっとコイツ等の家に招かれちゃって、別に不法侵入してる訳じゃ」


「…その傷どうしたんですか!?」


「あ、これ?…ちょっと色々あって、いや、別にもう血も固まったし大丈夫っちゃ大丈夫だと思うんだけど」


「……こっちに来て下さい…」


エリーゼに腕を掴まれ、ほぼ強制的な形で教会の横にある建物に俺は連れ込まれてしまった。


ーー黙々と傷の手当て済ましてくれたエリーゼは、安堵のため息をついた。


「…それで、一体何があったんですか?」


「オイラがやられてる所を救世主様が助けてくれたんだよ!」


「うんっ!…私が救世主様にお願いしたの!」


捲し立てるように事を順に説明する二人、エリーゼはそんな二人に対し頷いたりしながら静かに話を聞いている。

まるで弟や妹の面倒を見るお姉さんって感じだ。


「…イチローさんありがとうございました…」


話を聞き終わった後エリーゼはオルガを助けてくれた事に対し深々と頭を下げてきた。


「いや、別に?…まぁ、昔からいじめ?嫌いだからな」


照れ臭さもあり少しカッコ付けた喋り方で答える。


「…流石、救世主様ですね…」


そんな俺のふざけた言い方などスルーの彼女は嬉しそうに微笑んだ、だが言葉とは裏腹に瞳は今にも泣き出しそうになっていた。

あれ?もしかして俺何かまずい事言っちゃった?それとも今の言い方に不快感を感じちゃった、とか?


「ど、どうかした?」


「…いえ…ごめんなさい………本当に素敵な方だなって感動しちゃって…」


彼女は微笑みながら目尻の涙を指で拭った。

正直童貞の俺からしたら、不意に泣かれると何かやらかしたんじゃないかってビビってしまう、エリーゼのような美人なら尚更だ。


「救世主様はオイラ達にとっても救世主様なんだぜ!」


「…うんっ!…皆んなの救世主様っ!」


オルガとパスティの声に、エリーゼは優しく頷く。


「えぇ…本当に皆んなの救世主様ね?」


「おわっ!?」


子供達は無邪気に左右の腕に抱き付いてきた。


「ねぇねぇ!早くオイラ達の家に行こうぜ?」


「…早く行こう!ご飯食べさせてあげる!」


「わ、分かったって!ちょっと引っ張るなって!」


「ごめんなさい。この子達、早くイチロー様にお礼がしたいようです。…ほら、二人とも?イチロー様が困ってるでしょ?」


「はーい、ごめんなさい」


どうやらエリーゼの言葉は素直に聞くようだ。

そしてなんだかんだで亜人の子供達の家で少し早めの夕飯を頂く事になった。


ーー今日支給されたばかりなんだと、オルガは嬉しそうに袋から果物や野菜など食料を取り出し、水で洗いそのままお皿に盛り付ける、彼がいじめられながらもずっと大切に守っていた食料だ。


「…ご飯いっぱいだね!オルガ!」


パスティは早く食べたいと言わんばかりに目をキラキラさせている。


「えぇ、本当に御馳走だわ」


お姉ちゃんも一緒に!と二人からの熱烈アタックに負け、エリーゼも一緒の食卓を囲んでいる。

料理すると言う概念がないのだろうが、食卓に並んでいる野菜や果物はとても新鮮そうで美味しそうだ、それに大人数でご飯を食べるって何だか一つの家族みたいで、こうゆうの凄く良いなって思った。


ーー黙々と夕食を平らげた後はオルガやパスティから色々な話を聞かされた、元々亜人やエルフ達は人里から離れた環境で暮らしていたらしいのだが、魔の森の影響で住む場所を失ったらしい、だが王の指示で全ての亜人達にも人権を与え、同じ人としてこの王都で生活させて貰える事になったらしいのだが。

ここからはエリーゼからの補足も入り説明を受ける事になった、全ての種族が同じ王都で人権を貰えたのだが、それを良しと思わない人間達が殆どで、王都の影では亜人達に対する差別や迫害、酷い時には人徳に反する行為なども受けているらしい、この二人は同じ亜人達の仲間からも反感を買ってしまい、住む場所を追い出されてしまい、そこをエリーゼに助けてもらったらしい。


「仲間は人間なんかにヘコヘコすんなって言うけどさ、オイラはやっぱり人間好きなんだよ」


少年達にあんな扱いをされていたにも関わらず、オルガは笑顔でそう言った。


「時には嫌な事言われたり、酷い事されるけどさ。…でも良い人間だって一杯いるし!オイラ知ってんだぜ?」


「うんっ!エリーゼお姉ちゃんとか!救世主様とか!」


エリーゼは無邪気に抱き付いてくるパスティの頭を優しく撫でた。


「あー、ずるいぞ!パスティばっか!エリーゼお姉ちゃん!オイラもオイラも!」


オルガもエリーゼに頭を撫でてもらおうと擦り寄り俯いて見せた。


「うん…オルガも、良くその子達に手をあげなかったわね?本当に良い子」


エリーゼはオルガの頭も優しく撫でる。


「へへ、オイラは人間の子よりも力が強いから絶対に皆んなに手をあげたりしないよ、エリーゼお姉ちゃんとも約束したし」


「そうね、うん。二人とも本当に良い子ね」


「へへ」


慈愛に満ちた表情のエリーゼと彼女に擦り寄る亜人の子供達の光景は、まるで芸術的なファンタジー映画のワンシーンのようにも見えた、しかしコレは映画などではない、そう、現在だ、彼等はちゃんと息をして、そして俺も同じ空間に生きている。

現代でも人種差別や争い事は絶えなかった、それは異世界でも同じみたいだ、どんなに一方的に攻撃されても、それでも人間が好きだと無邪気に笑うこの少年を一瞬でもあの時の亜人達と一緒かと思ってしまった自分が恥ずかしい、一方通行の悪意を前にしてそれでも光を見つめ続けられる事が、同じ事が俺にできるのだろうか?この少年は本当に強い子だと思った。


ーーいつの間にか日も暮れ、外は闇に包まれていた。

はしゃぎ疲れたのか客人を招いておきながら当の子供達は寝息を立てている、本当に人間の子供と変わらない。


「…この子達は本当に真っ直ぐで純粋な良い子達なんです」


パスティの髪を優しく撫でながらエリーゼは呟く。


「あぁ、それは今日一日一緒に居て分かったよ」


「…ふふ、オルガなんて本当にイチロー様にべったりです。…救世主様に庇ってもらえて本当に嬉しかったんだと思います」


「俺からしたらコイツの方がすげーよあんな目に合っておきながら、それなのにコイツの瞳すげーキラキラしてんの。…俺にはきっと真似できねぇよ」


「…そう、ですね…………」


少し間が空いた後に彼女は言葉を続けた。


「………でも、やっぱりこの子達にとって、皆んなにとってイチロー様は特別なんだと思います」


「……俺にはよくわからねぇよ。何の能力もないし、勇者やティティスの足引っ張ってばっかだし。…正直この先四天王を倒せるのかだって不安だし…」


「そんな事はありませんっ!」


彼女らしからぬ行動にドキッとする、エリーゼは俺の両手を握り締め、突然熱く語り出した。


「…イチロー様が中心となって、もう既に色んな人に影響を与えています、あなたは確かにこの世界の希望なんですよ」


言い終えた後、突然我に返り恥ずかしそうに手を離すエリーゼ。


「…ご…ごめんなさいっ………あの、なので…あまりご自分を卑下されないで下さい………偉そうにすみません…」


頬を赤らめながらエリーゼはボソボソと呟く、彼女なりに俺を励まそうとしてくれたようだ。


「悪い、何か変な事言っちまって…逆に気を使わせちゃったみたいだな…」


「い、いえ…私の方こそ…出過ぎた事を言ってしまい……」


「そんな事ねぇよ。あんな風に言ってもらえて、嬉しかったし、もっと頑張ろうって思えた」


それにしても今日は本当に充実した一日だった、最初は変な子供達に絡まれたって思ったが、この家に来て良かった、亜人達の事を知れたって事もあるし、オルガのような少年と出会えた事もそうだ、それにこの三人と過ごす時間はとても暖かくて、ずっとここに居たいと思える程の居心地の良さだ、でもその一番の理由はエリーゼなのかも知れない、彼女と再び会って、彼女が子供達や俺に察してくれる態度や雰囲気や仕草一つ一つが、俺の心を魅了する。

俺はもしかしたら彼女に惹かれているのかも知れない、それを確かめる為にもまた会いたいって強く思った。


「あ、あのさっ」


「…は、はい!?」


「また、会いに来てもいいかな?もちろんコイツ等にも」


彼女は一瞬ビックリしたような表情をして、その後になんとも言えない表情で微笑み返してきた。


「…はい、もちろんです」

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ゲームを再プレイして、オルガ君の純粋さに思わずうるっとしちゃいました。そして僕が大事に育てようとも思いました。

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