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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第93話 《観測感染》

王都上空。


巨大な“眼”が世界を見下ろしていた。


空を埋め尽くす異形。


瞳だけ。


だが。


その存在を認識した瞬間から、人々は壊れ始めていた。


兵士の一人が空を見上げる。


「な、なんだ……あれ……」


次の瞬間。


彼の顔が引き攣った。


「いや……違う……違う違う違う――」


突然、自分の頭を壁へ打ち付け始める。


ゴン、ゴン、ゴン。


血が流れる。


だが止まらない。


「見える……!」


「頭の中に入ってくる!!」


周囲が悲鳴を上げた。


別の神官は空を見たまま動かない。


口だけが動く。


「理解した」


「理解した理解した理解した理解した」


瞳孔が崩壊していた。


そして。


彼の身体がノイズ化する。


ザザッ……


輪郭が乱れ。


存在が崩れる。


認識しただけ。


それだけで。


外界は侵食してくる。


ルナが震える声で呟く。


ルナ


「……そういうこと」


「外界は接触じゃない」


「情報汚染……!」


見る。


理解する。


観測する。


それだけで感染する。


外界は“認識”を媒介に侵食してくる。


だから。


古代文明は滅んだ。


知りすぎたから。


理解してしまったから。


AL-0が高速演算を続ける。


AL-0


『汚染拡大確認』


『認識経由侵食進行』


『情報災害レベル上昇』


ルナの瞳が揺れる。


恐怖。


だが。


それ以上に。


知的好奇心が勝っていた。


「……すごい」


誰にも聞こえないほど小さな声。


「世界法則の外側情報……」


「これが外界……」


セリスが気づく。


セリス


「ルナ?」


ルナは止まらない。


空を見続ける。


巨大な眼。


歪む情報。


理解不能構造。


彼女の脳は解析を始めていた。


天才だからこそ。


理解できてしまう。


そして。


理解した瞬間。


異変が起きた。


ルナの視界へ黒い文字列が流れ込む。


意味不明の数式。


外界言語。


脳へ直接叩き込まれる情報。


「ッ――!?」


ルナが頭を押さえる。


瞳がノイズ化。


呼吸が乱れる。


「だ、め……これ……」


世界が二重化する。


王都が反転する。


現実認識が壊れる。


汚染進行。


セリスが叫ぶ。


「ルナ!!」


ルナの腕が崩れ始める。


輪郭が砂嵐みたいに乱れる。


存在不安定化。


完全侵食まで時間がない。


だが。


次の瞬間。


誰かがルナの肩を掴んだ。


カイン。


カイン


「ほら」


「見すぎだって」


軽い口調。


その瞬間。


ピタリ、と。


侵食が止まった。


黒いノイズが消える。


ルナの瞳が正常へ戻る。


周囲が息を呑む。


まただ。


カインが触れると。


外界汚染が停止する。


神々すら不可能な現象。


ルナが荒い呼吸のまま呟く。


「……なんで」


「なんで君だけ……」


カインは困ったように頭を掻く。


「いや、俺に聞かれても」


本人も理解していない。


だが。


事実だけが残る。


外界に耐えられるのは。


侵食を止められるのは。


世界で唯一。


カインだけ。


その時。


AL-0が静かに告げた。


『警告』


『観測そのものが危険です』


王都が静まり返った。

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