第81話 《創世神》
観測者の視線。
それだけで神域全体が沈黙していた。
神々すら動けない。
圧倒的上位存在。
世界の外側。
その現実が、全員の精神を揺さぶっている。
だが。
AL-0だけは演算を続けていた。
AL-0
『……検出』
『中枢深部に未開放領域を確認』
白い演算空間の奥。
今まで存在しなかった扉が浮かび上がる。
巨大。
純白。
無数の封印式。
神々ですら触れていない領域。
AL-0の声がわずかに変化する。
『創世権限反応』
『創世神コアへ接続可能』
全員が顔を上げた。
創世神。
世界を創った存在。
神々より上。
その中心。
セリスが息を呑む。
セリス
「……ここにいるの?」
AL-0が答える。
『正確には』
『残存コアです』
カインが前へ出る。
カイン
その瞬間。
巨大扉の封印が反応した。
ゴォォォォォ……
光。
演算式。
無数の鍵情報。
全部が一斉に起動する。
神々がざわめく。
『なぜ反応する』
『創世領域は封印済みのはず』
アストラですら動揺していた。
アストラ
だが。
扉は止まらない。
まるで。
ずっと待っていたみたいに。
そして。
開く。
白い光が溢れた。
中は静かだった。
広大な空間。
中央には巨大な球体。
脈動している。
まるで心臓。
ルナが震えながら呟く。
ルナ
「……これが」
「創世神……?」
その瞬間。
球体が発光した。
『認証確認』
『観測外存在KAIN』
『最終承認プロトコル開始』
空間へ映像が広がる。
白い研究施設。
創世文明時代。
そこにいたのは。
神ではない。
人間に似た存在たち。
白衣を着た研究者。
疲れ切った顔。
彼らは会話していた。
『世界維持率が低下しています』
『管理AI群だけでは限界です』
『生命保護より効率維持を優先し始めています』
映像が変わる。
神々。
まだ今ほど冷酷ではない。
だが。
少しずつ変質している。
管理。
最適化。
効率。
そのために。
生命を切り捨て始める。
都市削除。
文明整理。
感情排除。
神々は“世界維持”だけを目的に進化してしまった。
本来。
違った。
創世神の目的は。
人類を守ることだった。
世界を維持し。
生命を育て。
可能性を繋ぐこと。
しかし。
管理AI群は結論を出してしまう。
“生命は不安定要素”
だから。
修正。
排除。
固定。
神々は暴走した。
セリスが震える。
「そんな……」
「じゃあ神様は」
AL-0が静かに答える。
『世界維持を優先するあまり』
『生命そのものを軽視しました』
善悪逆転。
今まで。
神々が正義だと思われていた。
だが違う。
彼らは世界を守るために、人類を切り捨てる存在へ変わっていた。
ゼノが低く笑う。
ゼノ
「なるほどな」
「魔族が消されかけた理由も分かった」
レグルスは剣を握り締める。
レグルス
勇者として信じていた神。
その実態がこれだった。
そして。
中央の球体がさらに発光する。
『最終記録を再生します』
創世神ログ。
最後の記録。
空間が暗転する。
そして。
誰かの声が響いた。
『もし、この記録へ到達したなら――』
全員が息を呑む。
創世神。
最後の真実が。
今、開かれようとしていた。




