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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第76話 《時間神》

空が逆流した。


王都上空。


崩壊していた雲が巻き戻る。


砕けた建物が戻る。


消えた瓦礫が浮き上がる。


血が空中を逆流し。


折れた剣が再生し。


死んだ兵士たちの身体が巻き戻っていく。


世界そのものが逆再生されていた。


AL-0が警報を鳴らす。


『超高次時間干渉確認』


『時間軸巻き戻し開始』


『対象範囲――世界全域』


AL-0


誰も理解できない。


ただ。


本能だけが叫んでいた。


ヤバい。


これは人類が触れていい力じゃない。


空間裂断。


そこから現れたのは、一柱の神。


巨大な時計輪を背負った男。


白銀の長髪。


瞳の中で秒針が回っている。


時間神クロノス。


クロノス


彼が一歩踏み出すたび、世界の時間軸が軋む。


クロノスは感情のない声で告げた。


『現在時刻を修正します』


『観測外存在出現以前の状態へ巻き戻し開始』


次の瞬間。


世界が反転した。


ゴォォォォォォ!!


空間崩壊。


時間流逆転。


人類側は理解する暇もない。


意識。


記憶。


存在。


全部が時間へ呑まれていく。


そして。


世界は数時間前へ巻き戻った。


静寂。


王都中央広場。


まだ戦争が本格化する前。


人々が普通に歩いている。


空も崩壊していない。


神々の侵攻も始まっていない。


まるで何事もなかったような世界。


――のはずだった。


「……え?」


カインだけが立ち止まった。


周囲を見る。


普通の王都。


戻っている。


完全に。


「いや待て」


「今、絶対なんか戻ったよな?」


記憶が残っている。


全部。


神々。


戦争。


神殺し。


全部覚えている。


その瞬間。


遠くの空間が揺れた。


クロノス。


神域からこちらを見ている。


そして。


初めて神が表情を崩した。


『……なぜ記憶を保持している』


あり得ない。


時間巻き戻しとは、世界状態そのものを過去へ戻す行為。


つまり。


記憶も戻る。


例外など存在しない。


だが。


カインだけ。


時間軸へ従っていない。


カインは頭を掻いた。


「いや俺に聞かれても……」


クロノスが演算を開始する。


時間固定。


因果補正。


歴史修復。


全部投入。


しかし。


カインの時間情報だけ取得できない。


現在。


過去。


未来。


全部不定。


世界時間軸から浮いている。


クロノスの声がわずかに揺れる。


『……外部時間軸存在?』


神ですら理解不能。


その時。


王都の一部が突然停止した。


空中の鳥が止まる。


風が止まる。


人々も固定。


クロノスが空間を切り離した。


『隔離時間領域展開』


カイン閉じ込め。


完全停止空間。


時間神の絶対領域。


そこでは時間流そのものが存在しない。


普通の存在なら。


永遠に停止する。


だが。


カインは普通に歩いた。


「うわ、またこれか」


慣れてきてる。


クロノスの瞳が見開かれる。


『停止しない……?』


カインは壁みたいに固定された空間へ触れる。


透明な時間障壁。


普通なら絶対破壊不可能。


時間そのものだから。


しかし。


カインは少し考えて。


「邪魔だな」


バキィッ!!


割った。


時間停止空間が。


ガラスみたいに砕け散る。


クロノスが絶句する。


時間の破壊。


概念崩壊。


神ですら不可能。


なのに。


カインは普通にやった。


砕けた停止空間が光になって崩れる。


世界時間軸が悲鳴を上げる。


クロノスが後退した。


神が。


明確に。


恐怖していた。


カインは砕けた空間を見ながら首を傾げる。


「……これ、壊しちゃダメなやつだった?」

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