第68話 《観測不能戦争》
終わりが始まった。
その日。
世界中で同時に空が裂けた。
王国。
帝国。
教国。
魔導連盟。
獣王国。
魔族領。
全部。
白い亀裂が空を覆う。
そして。
神々の軍勢が降り立つ。
無数の使徒。
観測執行体。
白い光。
人類史上最大規模。
いや。
文明開始以来初めての。
“世界そのもの”との戦争。
帝国首都。
巨大魔導要塞が神光で蒸発。
教国聖域。
神殿群が崩壊。
信徒たちが逃げ惑う。
獣王国。
大森林が白く消失。
魔導連盟本部。
空間ごと削除。
世界各地同時崩壊。
もはや局地戦ではない。
終末。
そのものだった。
王都ルクセリア。
王城中央指揮室。
巨大魔導モニターへ映る各地映像。
全部地獄。
セリスの顔が青ざめる。
「こんな……」
「止められるんですか……?」
誰も答えない。
ヴァレリアですら無言。
勇者レグルスも歯を食いしばっている。
その時。
AL-0が静かに前へ出た。
AL-0
ホログラムの瞳が赤く光る。
『確認』
『管理AI群、本格介入開始』
『文明維持確率』
わずかな沈黙。
『0.003%』
空気凍結。
低すぎる。
絶望的。
ルナが掠れ声で言う。
「……ゼロじゃん」
AL-0は否定しなかった。
『これは文明存続戦争ではありません』
『世界定義戦争です』
世界定義。
つまり。
どちらの法則が世界を支配するか。
神々による管理か。
観測外存在による例外か。
その衝突。
AL-0は静かに告げた。
『最終戦争です』
重い言葉だった。
誰も軽口を叩けない。
その瞬間。
王都全域警報。
赤い光。
『超高位反応』
『全世界同時発生』
モニター切替。
世界各地。
神々軍勢がさらに増殖していた。
空を埋め尽くす白。
海から巨大執行体出現。
山脈級存在。
都市サイズの神代兵器。
完全に人類側戦力を超えている。
その時。
カインが静かに前へ出た。
みんな視線を向ける。
彼は窓の外を見ていた。
崩壊する世界。
燃える空。
逃げ惑う人々。
カインは小さく呟く。
「……もう」
「止めるしかないんだな」
誰よりも普通の口調。
なのに。
その言葉だけで空気が変わる。
アイリスが剣を握る。
「行くのか」
カインは頷く。
「みんなを守りたい」
シンプル。
理由はそれだけ。
だからこそ強い。
その瞬間。
空の裂け目がさらに拡大した。
バキバキバキィィィィ!!
世界全域。
空間断裂。
大気震動。
海が荒れる。
大陸が揺れる。
そして。
夜空。
誰もが見上げた。
月。
世界を照らしていた白い月。
そこへ。
巨大な白い線が走る。
静寂。
次の瞬間。
月が。
割れた。




