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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第67話 《人間》

夜。


王都ルクセリア。


世界停止は解除された。


だが。


空気は重いままだった。


崩壊した街区。


消えた人々。


空に残る巨大な裂け目。


世界はもう限界だった。


その中で。


カインは一人、王城の屋上に座っていた。


夜風。


静かな空。


だが。


彼の表情は暗い。


「……俺は」


小さく呟く。


「何なんだろうな」


誰もいない場所。


だからこそ。


初めて弱音が漏れた。


神々は自分を“観測外存在”と呼ぶ。


運命神は、自分を世界の外だと言った。


未来すら存在しない。


世界法則も通じない。


人間じゃない。


そんな言葉ばかり増えていく。


カインは拳を握った。


「俺……」


「本当に人間なのか……?」


怖かった。


力じゃない。


正体がわからないことが。


もし。


本当に自分が“人間ではない何か”なら。


今までの全部は何だったのか。


辺境で暮らして。


荷物持ちして。


笑って。


仲間と過ごして。


あれは全部偽物だったのか。


その時。


後ろから足音。


「ここにいたんですね」


セリスだった。


セリス


彼女だけじゃない。


アイリス。


ルナ。


リィナ。


みんな来ていた。


カインは少し慌てる。


「あ、いや……」


「別に大したことじゃ」


「嘘ですね」


即バレ。


セリスはカインの隣へ座る。


静かに。


王女じゃない。


一人の少女として。


「怖いんですか?」


カインは答えなかった。


でも。


沈黙が答えだった。


アイリスが壁へ寄りかかる。


アイリス


「まあ」


「自分が何かわからないのはキツいだろうな」


珍しく柔らかい声。


ルナも腕を組む。


ルナ


「世界法則の外とか言われたら普通病む」


「むしろ今まで平然としてたのが異常」


ひどい。


でも事実。


リィナはカインの隣で尻尾を揺らす。


リィナ


「でもカイン、カインだよ?」


シンプル。


でも。


少し救われる。


カインは苦笑した。


「簡単に言うなぁ……」


夜風が吹く。


静寂。


やがて。


カインは小さく言った。


「もし俺が」


「本当に人間じゃなかったら?」


声が弱い。


最強。


世界最悪の異常存在。


なのに。


今はただ不安な少年だった。


セリスは少し考える。


それから。


静かに答えた。


「関係ありません」


カインが振り向く。


セリスは真っ直ぐ彼を見る。


「あなたが何者でも」


「私たちを助けてくれた事実は変わらない」


「怖いくらい優しくて」


「お人好しで」


「自分より他人を優先して」


少し笑う。


「むしろ危なっかしいくらいです」


ルナが頷く。


「それはある」


アイリスも同意。


「あるな」


リィナも。


「ある」


全員一致。


カインちょっと傷つく。


セリスは続けた。


「神々が何を言おうと」


「世界が何を定義しようと」


「私はあなたを知っています」


優しい声。


王女ではない。


一人の少女の言葉。


そして。


静かに告げた。


「あなたはあなたです」


その瞬間。


カインの中で張り詰めていた何かが、少しだけ緩んだ。


理解されないと思っていた。


怖がられると思っていた。


でも。


ここに。


ちゃんと見てくれる人たちがいる。


カインは小さく笑った。


「……ありがと」


夜空の裂け目はまだ消えない。


世界は崩壊へ向かっている。


神々との戦争も終わっていない。


それでも。


今だけは。


少しだけ。


救われた気がした。

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