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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第65話 《運命神》

空が砕けていた。


世界の外側。


そこに“何か”がいた。


王都上空。


大陸全域。


いや。


世界そのものが静まり返る。


誰も呼吸できない。


本能が理解していた。


来てはいけないものが来た。


裂けた空間の向こう。


無限の白。


その中心から。


ゆっくりと。


一人の存在が降りてくる。


女性の姿。


銀白の長髪。


星空みたいな瞳。


純白の衣。


背後には無数の運命線。


糸のように世界中へ繋がっている。


その存在を見た瞬間。


人々は理解した。


神。


しかも。


今までの使徒や執行体とは格が違う。


もっと根源。


もっと上位。


AL-0が初めて警告音を暴走させた。


『超高位管理存在確認』


『識別名――』


『運命神アストラ』


アストラ


その瞬間。


世界が止まった。


――……。


風停止。


炎停止。


音停止。


人停止。


空中で瓦礫が止まり。


崩壊していた大地が静止し。


飛んでいた鳥すら固定される。


完全停止。


時間ではない。


もっと上。


“世界そのもの”が停止した。


ヴァレリアも。


アイリスも。


セリスも。


レグルスも。


全員動かない。


表情すら固定。


まるで絵画。


アストラは静かに世界を見下ろした。


感情は薄い。


ただ。


処理するために来た。


『観測外存在』


声が直接世界へ響く。


『世界安定を著しく阻害』


『修正を開始します』


だが。


そこで。


彼女は止まる。


初めて。


視線が揺れた。


そこに。


一人だけ。


動いている存在がいた。


カイン。


彼だけが普通に立っていた。


「……え?」


カインは周囲を見回す。


「みんな止まってる……?」


アストラが沈黙する。


あり得ない。


世界停止。


管理権限による絶対固定。


神代文明ですら抵抗不能。


なのに。


カインは普通に動いている。


アストラの瞳が細くなる。


『……認識不能』


初めて。


神が困惑した。


カインは逆に戸惑っていた。


「あの……」


「君、誰?」


世界が凍る。


神へ向ける態度じゃない。


だが。


カインにとっては本当に知らない相手だった。


アストラは静かに降り立つ。


王都上空。


空間へ足を乗せる。


その一歩だけで、世界法則が軋む。


彼女はカインを見つめた。


じっと。


解析するみたいに。


だが。


理解できない。


情報取得不可。


演算不能。


存在定義失敗。


全部エラー。


神である彼女ですら。


カインを認識しきれない。


その事実が。


アストラに初めて“感情”を発生させる。


動揺。


『なぜ……』


小さな声。


『なぜ動けるのですか』


カインは困った顔。


「いや、俺にもわからないけど……」


本当にわからない。


アストラの周囲で運命線が暴走する。


世界中へ伸びる糸。


人類。


国家。


文明。


全部繋がっている。


だが。


一本だけ。


カインへ繋がらない。


存在しない。


運命そのものが届かない。


アストラの瞳が初めて揺れる。


恐怖にも似た困惑。


『あり得ない』


『あなたは世界内存在ではない』


カインが眉をひそめる。


「……世界内?」


アストラは一歩近づく。


神。


管理者。


世界法則そのもの。


そんな彼女が。


初めて理解できない存在を前にしていた。


そして。


静かに問う。


『なぜ』


『あなたは存在しているの?』

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