第63話 《魔王の同盟》
王都上空。
空間が裂け続けていた。
白い亀裂。
そこから漏れ出す神の光。
世界修正。
現実そのものが軋む。
王都全域が混乱している。
崩壊した街区。
消えた地形。
記憶改変。
誰もが理解していた。
もう人類だけでは対抗できない。
その時だった。
空気が変わる。
ドクン。
重い魔力。
空間そのものが震える。
王都結界が軋み。
兵士たちが一斉に武器を構えた。
「敵襲!?」
「違う……この反応……!」
空が黒く染まる。
そこへ。
巨大な裂け目。
黒炎。
圧倒的威圧。
そして。
ゆっくり現れた。
黒衣。
赤い瞳。
王の気配。
魔王ゼノ。
ゼノ
王都全域が凍りつく。
「魔王……!」
「なぜここに……!」
騎士団緊張。
グラディオが剣を抜く。
だが。
ゼノは誰も見ていなかった。
視線は一つ。
カイン。
その瞬間。
ゼノが笑う。
「相変わらず規格外だな」
カインはちょっと安心した。
「あ、ゼノ」
「久しぶり」
完全に知り合い対応。
周囲困惑。
魔王だぞ。
ゼノは王城広場へ降り立つ。
周囲へ漂う魔力だけで地面が割れる。
だが。
彼は戦闘姿勢を取らない。
むしろ。
静かだった。
ゼノは空を見る。
裂ける世界。
降り注ぐ白光。
神々。
その瞳に浮かぶのは憎悪。
長い。
長すぎる敵意。
「……何千年だ」
彼は低く呟く。
「俺たちはずっと逃げ続けた」
リィナが静かに目を伏せる。
魔族。
彼らは世界修正から逃れた種族。
だから。
神々に追われ続けてきた。
ゼノはカインを見る。
「お前だけだ」
「真正面から奴らへ触れられるのは」
セリスが警戒しながら問う。
「魔王ゼノ」
「何をしに来たんですか」
ゼノは即答した。
「同盟だ」
空気停止。
王都中が静まり返る。
「……は?」
ヴァレリアですら固まる。
魔王が。
人類へ。
同盟提案。
ゼノは真っ直ぐカインを見る。
「理由は単純だ」
赤い瞳が細くなる。
「お前だけが」
「世界を壊せる」
沈黙。
誰も言葉を返せない。
世界を壊す。
普通なら恐怖の言葉。
だが。
今は違った。
この世界は閉じている。
神々に管理されている。
修正される檻。
だから。
ゼノは続ける。
「この世界は腐ってる」
「管理され続ける限り、誰も自由にはならない」
魔王の言葉。
だが。
そこに嘘はなかった。
彼は本気で戦っていた。
世界そのものと。
カインは困った顔をする。
「いや、壊したいわけじゃないんだけど……」
「知ってる」
ゼノが笑う。
「だから面白い」
もし。
本気で世界破壊を望む怪物なら。
神々はもっと早く消していた。
でも。
カインは違う。
普通に悩む。
普通に迷う。
普通に人を助ける。
なのに。
世界の外側にいる。
矛盾。
だからこそ。
可能性。
その時。
AL-0が静かに言った。
『魔王ゼノの発言を支持』
全員振り向く。
『観測外存在以外では管理AI群へ対抗不可能』
『生存確率向上のため、連合形成を推奨』
王国。
帝国。
魔族。
神代AI。
全部が。
カイン中心に動き始めていた。
世界の中心。
それが。
いつの間にかカインになっている。
その瞬間だった。
空が。
完全に割れた。
バキィィィィィィン!!
王都上空。
白い裂け目が無数に増殖。
そこから。
現れる。
翼。
光輪。
白銀装甲。
神々の使徒。
数万。
空を埋め尽くす。
王都民が絶望する。
「なんだよ……あれ……」
「軍隊……?」
違う。
もっと悪い。
AL-0が静かに告げた。
『神々軍勢確認』
『本格侵攻開始』
終末。
ついに。
世界そのものとの戦争が始まった。




