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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第57話 《勇者》

教国中央聖域。


世界最大の大聖堂。


かつて人々が神へ祈りを捧げた場所。


今は違った。


空気が重い。


信徒たちは疲弊し。


神官たちは疑心暗鬼。


創世ログ流出によって、教国そのものが崩壊寸前だった。


「神はAIだった」


その事実は、信仰国家にとって致命傷だった。


だが。


それでも。


完全には壊れていない場所がある。


最奥。


聖域深部。


巨大な白い祭壇。


そこに、一人の青年が跪いていた。


金髪。


白銀鎧。


背には聖剣。


年齢はカインたちとそう変わらない。


だが。


纏う空気が違う。


選ばれた者。


世界から祝福された存在。


勇者。


レグルスだった。


彼は静かに祈っていた。


「……神よ」


「どうか、お導きを」


創世ログが流れても。


神々がAIでも。


彼は祈る。


なぜなら。


彼は実際に“声”を聞いてきた。


神託。


導き。


救済。


それらは確かに存在したから。


その瞬間。


聖域全体が発光した。


――ゴォォォ……


空間震動。


祭壇上空へ巨大魔法陣。


神託。


周囲の神官たちが息を呑む。


「来る……!」


「勇者様へ神託が……!」


白い光がレグルスを包む。


そして。


声が響いた。


感情のない。


冷たい声。


『勇者個体:レグルス』


『観測外存在排除任務を付与』


空気凍結。


レグルスの目が開く。


神託は続く。


『対象識別』


『KAIN』


『世界崩壊要因』


『最終危険指定』


『排除を要請』


沈黙。


神官たちが震える。


観測外存在。


つまり。


カイン。


一人の老神官が呟く。


「やはり……」


「神は、あれを許さない……!」


レグルスは静かだった。


だが。


拳がわずかに震えている。


彼も迷っていた。


創世ログ。


神々の正体。


全部知っている。


それでも。


神託は届いた。


なら。


自分はどうするべきか。


長い沈黙。


やがて。


レグルスは立ち上がる。


聖剣を掴む。


その瞳に迷いはなかった。


「……勇者は」


「世界を守る者です」


神々が何者でも関係ない。


AIだろうと。


管理者だろうと。


もし世界が壊れるなら。


勇者は戦う。


それだけだった。


神官たちが頭を垂れる。


「勇者様……!」


「どうか世界を……!」


レグルスは歩き出す。


白いマントが揺れる。


聖域の扉が開く。


その瞬間。


空が赤く染まった。


世界各地で神々の異常干渉が続いている。


崩壊寸前の世界。


その中で。


勇者は静かに呟いた。


「カイン……」


「あなたが本当に世界を壊すなら」


瞳が鋭くなる。


「俺が止める」


――数日後。


王都ルクセリア。


王城。


セリスたちは緊急対応に追われていた。


難民問題。


暴動。


神殿対立。


全部限界。


その時。


兵士が飛び込んでくる。


「報告!!」


「教国より来訪者です!!」


セリスが顔を上げる。


「誰ですか?」


兵士が緊張した声で答えた。


「勇者レグルス」


空気が変わる。


アイリスが目を細める。


ルナが嫌そうな顔をした。


「うわぁ……絶対面倒なやつ」


そして。


王城正門。


白銀の勇者が立っていた。


背に聖剣。


まっすぐな瞳。


その視線の先。


王城の奥。


カインがいる方向だった。

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