第58話 《各国争奪戦》
王都ルクセリア。
世界会議第二幕。
場所は王城中央議会場。
かつては外交と平和の象徴だった巨大円卓。
今は違う。
空気が殺気立っていた。
理由は一つ。
カイン。
世界中が、彼をどう扱うべきかで割れていた。
円卓には各国代表が並ぶ。
王国。
帝国。
教国。
魔導連盟。
獣王国。
魔族。
誰もが疲弊している。
だが。
その目だけは鋭かった。
世界の命運。
それが本気で関わっているから。
議会中央。
セリスが静かに言う。
「議題を開始します」
「観測外存在――カイン様について」
その瞬間。
空気がさらに重くなる。
最初に口を開いたのは帝国代表。
将軍ヴァレリアだった。
ヴァレリア
「結論は簡単だろ」
脚を組み。
不敵に笑う。
「保護だ」
帝国側がざわつく。
ヴァレリアは続ける。
「神々が敵なら、あいつは唯一の対抗戦力だ」
「敵に回すとか論外」
合理的だった。
軍人らしい判断。
だが。
即座に反対の声が飛ぶ。
「危険思想だ!」
教国代表。
聖騎士グラディオ。
グラディオ
彼は机を叩く。
「観測外存在は世界崩壊要因!」
「神託でも危険指定されている!」
「存在そのものが災厄だ!」
教国側が同調する。
「抹殺すべきだ!」
「世界を守るために!」
一気に空気悪化。
対して。
魔導連盟代表の老人が目を輝かせていた。
「いやいやいや」
「消すなど愚か」
「研究こそ最優先ですぞ!」
ルナが嫌そうな顔をする。
「あー、同類だ……」
老人は興奮していた。
「観測外存在ですよ!?」
「世界法則を書き換える生命体!」
「こんなの歴史上存在しない!!」
研究者たちが一斉同意。
完全に危険。
さらに。
魔族代表席。
ゼノではなく代理として来ていた高位魔族が静かに言う。
「我々は接触を望む」
「観測外存在は“外”に繋がる可能性がある」
各国が睨み合う。
空気が張り詰める。
完全に争奪戦だった。
本人の意思無視で。
その頃。
当の本人。
カインは王城中庭でパンを食べていた。
「……平和だな」
平和ではない。
世界会議中です。
隣ではリィナがもぐもぐしている。
「このパン好き」
「そっか」
めちゃくちゃ平和。
そこへ。
ルナが会議室から逃げてきた。
「無理」
「頭痛い」
ベンチへ崩れ落ちる。
「各国首脳がカイン争奪戦してる」
「俺、物じゃないんだけど……」
「ほんとそれ」
一方。
会議室は限界だった。
「教国は排除を要求する!」
「帝国は保護を主張!」
「王国は中立維持!」
「魔導連盟へ研究権を!」
「ふざけるな!」
怒号。
罵声。
世界トップたちが本気で揉めていた。
その時。
静かだった勇者レグルスが口を開く。
全員止まる。
勇者。
世界最大級の影響力。
彼は静かに言った。
「……俺は」
「まだ判断できません」
意外だった。
教国側がざわめく。
レグルスは続ける。
「ですが」
「もし彼が本当に世界を壊すなら」
聖剣へ手を置く。
「勇者として止めます」
静かな宣言。
空気が凍る。
その頃。
王城地下。
暗闇。
黒装束たちが動いていた。
気配遮断。
完全武装。
各国混乱の裏で送り込まれた暗殺部隊。
目標。
観測外存在。
カイン。
隊長が低く言う。
「任務確認」
「対象を処理する」
「成功率は?」
沈黙。
誰も答えない。
答えられない。
相手が異常すぎるから。
それでも。
命令は命令。
暗殺者たちは静かに王城内部へ侵入した。
そして。
その瞬間。
王城の結界が。
わずかに軋んだ。




