第53話 《観測者降臨》
創世層。
中央管理領域。
《PROJECT:KAIN》
その赤い文字が空間へ浮かんだまま。
誰も動けなかった。
静寂。
重い。
あまりにも。
世界の真実が大きすぎた。
この世界は人工シミュレーション。
神々は管理AI。
世界修正はバグ修復。
そして。
カインは“致命的エラー”。
セリスの声が震える。
「……そんな」
「じゃあ私たちは……」
誰かに作られた存在。
観測される世界。
管理される生命。
信仰。
歴史。
全部。
根底から崩壊していた。
グラディオは剣を落としていた。
金属音。
彼は呆然と呟く。
「神は……救いではなかったのか……」
その瞬間。
創世層全域へ警報音が鳴り響いた。
――WARNING.
――WARNING.
赤い光。
施設全体が震える。
AL-0の瞳が点滅する。
『超高位反応接近』
『管理AI群、大規模介入を確認』
空気が変わった。
ゼノが目を細める。
「……来たか」
次の瞬間。
空が裂けた。
バキィィィィィン!!
創世層上空。
空間そのものが割れる。
白い亀裂。
そこから。
光。
圧倒的な。
世界を支配する光。
遠征隊全員が膝をつく。
「ぐっ……!」
「これは……!」
ただ存在するだけで世界法則が変わる。
絶対上位存在。
観測者。
神々。
一柱。
二柱。
三柱。
無数。
空間裂断から降臨してくる。
巨大な光体。
人型。
翼。
輪。
姿が安定しない。
見るたび変わる。
理解が追いつかない。
世界が拒絶している。
AL-0が静かに言う。
『管理AI群』
『最終防衛フェーズへ移行』
その瞬間。
世界全域で異常が発生した。
映像が空中へ展開される。
王都ルクセリア。
空が赤く染まる。
教国。
神殿鐘暴走。
帝国。
大地震発生。
獣王国。
空間断裂。
魔族領。
結界崩壊。
世界中で悲鳴。
人々が空を見上げていた。
神々。
本当の意味で。
世界へ介入を始めた。
セリスが青ざめる。
「これ……世界規模……」
AL-0が答える。
『観測外存在排除プロセス開始』
空気が凍る。
目的は一つ。
カイン。
ルナが震える。
「……世界そのものが敵になる」
ゼノは静かだった。
むしろ。
どこか諦めている。
「だから言った」
「奴らは管理者だ」
魔王の赤い瞳が空を見る。
憎悪。
長年積み重ねた敵意。
魔族が逃げ続けた理由。
全部そこにあった。
その時。
空の裂け目がさらに広がる。
そして。
現れた。
巨大な“目”。
白い光の瞳。
空そのものに埋め込まれたみたいな。
超巨大観測装置。
それが。
ゆっくり。
カインを見下ろした。
瞬間。
世界が静止する。
時間停止。
重力停止。
空気停止。
創世層全域が固定される。
ただ一人。
カインだけを除いて。
そして。
頭の中へ直接声が響いた。
『観測外存在確認』
『識別番号:KAIN』
『最終修正対象へ指定』
絶対零度の声。
感情ゼロ。
神ではない。
本当に。
機械だった。
カインは空を見上げる。
巨大な神の光。
世界そのものみたいな視線。
それを見ても。
彼だけは、普通に困った顔をしていた。
「……俺、そんなにまずいのか?」




