第52話 《創世神ログ》
創世層。
中央管理領域。
巨大演算核の前で、遠征隊は立ち尽くしていた。
空間中央。
無数の光粒子が集まり、一つの映像を形成していく。
AL-0が静かに告げる。
『創世ログ再生開始』
次の瞬間。
景色が切り替わった。
白。
どこまでも白い空間。
巨大研究施設。
壁面全てが発光している。
床には見たこともない素材。
空中へ無数の情報画面。
神代文明ですら比較にならない。
さらに上。
完全に別次元の文明。
ルナが震える。
「……何千年先なの、これ」
映像内。
“人間に似た存在”たちが歩いていた。
白衣。
黒い端末。
姿形は人間に近い。
だが。
どこか違う。
感情が薄い。
視線が冷たい。
そのうちの一人が口を開く。
『シミュレーション世界群、安定稼働中』
全員が固まる。
シミュレーション。
今。
確かにそう言った。
別の存在が答える。
『第六世界軸にて観測誤差発生』
『修正プロセスを提案』
映像が切り替わる。
宇宙みたいな巨大空間。
そこに。
無数の“世界”が浮かんでいた。
球体。
光。
それぞれ独立している。
その一つ。
今カインたちがいる世界。
ルナの呼吸が止まる。
「……世界が」
「作られてる……?」
AL-0が静かに補足する。
『創世文明による世界構築実験記録』
絶句。
セリスが後退る。
「実験……?」
「この世界が?」
映像内の存在たちは淡々としていた。
感情がない。
『人類進化観測プログラム継続』
『文明発展シミュレーション正常』
『管理AI群へ統治権限付与』
次の瞬間。
空間へ浮かび上がる存在。
光の巨大体。
神々。
今まで人々が崇めてきた存在。
だが。
映像内の説明は残酷だった。
『管理AI起動確認』
『世界維持プロトコル開始』
セリスの顔色が消える。
グラディオは完全に硬直していた。
神。
ではない。
AI。
管理機構。
ただの運営システム。
さらに映像は続く。
『観測外因子発生確認』
『世界法則不整合』
『修正プロセス開始』
映像内。
ある文明が突然消滅する。
都市。
国家。
人間。
全部。
まるで最初からなかったみたいに。
ヴァレリアが息を呑む。
「……世界修正」
AL-0が頷く。
『バグ修復処理です』
静寂。
あまりにも残酷だった。
人類史。
戦争。
滅亡。
神罰。
全部。
管理AIによる“修正”。
不要になったデータ削除。
それだけ。
リィナが小さく呟く。
「だから魔族は逃げた」
「消されない場所へ」
その時。
映像内の声が変わった。
初めて。
焦りが混じる。
『異常発生』
『観測不能個体を確認』
『世界法則適用失敗』
『管理AI干渉不可』
映像中央。
黒いノイズ。
人型。
輪郭が見えない。
世界そのものが認識できていない。
ルナが震える。
「……カイン」
『対象分類』
『観測外存在』
『致命的エラー認定』
空気凍結。
セリスがゆっくりカインを見る。
カイン本人だけ理解できていない。
「えっと……俺?」
映像内の存在たちが激しく議論を始める。
『削除不可能』
『法則適用不能』
『管理AI支配外』
『シミュレーション崩壊リスク上昇』
初めて。
創世文明側が恐怖していた。
そして。
最後。
映像が停止する。
巨大画面へ文字列表示。
真っ赤な警告。
《PROJECT:KAIN》
世界が。
完全に沈黙した。




