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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第5話 《測れない存在》

アルディア中央神殿。


その大広間は、異様な緊張に包まれていた。


白い大理石の床。


天井近くまで伸びる神柱。


普段なら荘厳さを感じさせる場所だが、今は空気そのものが張り詰めている。


集められているのは、この街で最も権威を持つ者たちだった。


神官。


学者。


上級冒険者。


ギルド幹部。


さらには領主直属の役人までいる。


視線の中心にいるのは、一人の少年。


カイン・ヴェルクロフト。


広間の中央に立たされた彼は、居心地悪そうに周囲を見回していた。


まるで罪人扱いだった。


神官長が重々しく口を開く。


「これより、《再測定》を行う」


ざわめきが広がる。


神殿最奥に保管されていた大型測定水晶。


本来なら都市級神殿にしか存在しない高位装置だ。


昨日の簡易測定器とは性能が違う。


学者の一人が眼鏡を押し上げながら言う。


「この装置なら神代級適性でも測定可能だ」


「原因究明を優先するべきだろう」


「……もし人ではないなら?」


小声が混じる。


空気がさらに冷えた。


カインは黙ったまま立っていた。


自分が何を疑われているのか、なんとなく分かってしまう。


神官長が杖を鳴らした。


「カイン・ヴェルクロフト。水晶へ手を」


カインは静かに前へ出る。


巨大な水晶は、淡い銀光を放っていた。


周囲の学者たちが記録板を構える。


魔力観測陣が展開される。


異常検知用の結界まで張られた。


まるで災害実験だった。


カインは少し躊躇いながら、水晶へ手を置く。


瞬間。


光が消えた。


「……え?」


誰かが呟く。


次の瞬間。


水晶表面に赤黒い文字列が浮かぶ。


《ERROR》


空気が震えた。


直後。


《ERROR》

《ERROR》

《ERROR》


文字列が増殖する。


水晶内部を赤い光が暴走し始めた。


「ま、魔力制御が――!」


学者が叫ぶ。


ビィィィィィィィッ!!


神殿全体に警告音が響く。


壁に刻まれた術式が次々と点滅する。


照明魔法が消えた。


結界が崩れる。


祭壇の魔導具が火花を散らす。


神官たちが悲鳴を上げた。


「止めろ!」


「停止術式を!」


「間に合いません!!」


カインが慌てて手を離す。


だが遅い。


ゴォン!!


重い音と共に、水晶が真っ二つに割れた。


同時に。


神殿全域の術式が沈黙する。


灯りが消える。


空気が静まり返った。


完全停止。


アルディア神殿の全機能が落ちた。


沈黙。


数秒後。


ざわめきが爆発する。


「なんだあれ……!」


「あり得ない!」


「神殿機能が落ちたぞ!?」


「呪われてるんじゃ……」


誰かがそう呟いた瞬間、空気が変わった。


恐怖だ。


理解できないものへの。


「魔族では?」


「いや、古代災害かもしれん……!」


「人間じゃない!」


「化け物だ!」


声が大きくなる。


後ずさる者までいた。


冒険者たちは剣に手をかけ始める。


カインは何も言えなかった。


自分でも分からない。


なぜこうなるのか。


ただ、周囲が自分を恐れていることだけは分かった。


胸の奥が少し痛んだ。


その時だった。


「違います!!」


澄んだ声が響く。


全員が振り返る。


フィアだった。


彼女はカインの前へ出る。


まるで庇うように。


「この人は危険じゃありません!」


神官が顔をしかめる。


「フィア君、下がりなさい!」


「でもっ!」


フィアは震えながらも引かなかった。


「確かに変です! 普通じゃないです!」


広間が静まる。


彼女はカインを見た。


困ったように立ち尽くしている少年。


昨日、温かいスープを「ありがとう」と笑って食べた少年。


少なくとも、怪物には見えなかった。


「でも、この人は誰も傷つけてません!」


その言葉に、カインがわずかに目を見開く。


フィアは必死だった。


周囲の恐怖が分かるからこそ。


それでも、一人だけでも味方でいたかった。


冒険者の一人が吐き捨てる。


「今は、な」


空気が再び冷える。


誰も完全には否定できない。


山を消した力。


測定不能。


神殿停止。


危険すぎる。


カインは俯いた。


やっぱり自分は、おかしいのかもしれない。


その時。


――ドンッ!!


神殿正門が開かれた。


重い金属音が響く。


外から足音。


整然とした鎧の音。


群衆がざわつく。


「騎士団……!」


「王国騎士団だ!」


赤銀の甲冑を纏った騎士たちが列を成して入ってくる。


その中央。


一人の女性が歩いていた。


長い金髪。


鋭い蒼眼。


腰に佩いた白銀の剣。


空気そのものを支配するような存在感。


彼女が姿を現した瞬間、冒険者たちの顔色が変わる。


「《戦姫》……」


「アイリス・ヴァルハルト……!」


王国最強騎士。


Sランク。


国家戦力級。


アイリスは静かに広間を見渡す。


そして最後に、カインへ視線を止めた。


その瞬間。


彼女の眉が、わずかに動いた。


まるで。


“そこに何も存在しない”ものを見るように。

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