第30話 《魔法革命》
「――というわけで!」
ルナは満面の笑みで宣言した。
「カイン理論、試してみました!!」
嫌な予感しかしなかった。
王立魔導学園・中央研究棟。
現在。
ここは戦場になっていた。
論文。
数式。
怒号。
悲鳴。
魔導投影。
あらゆるものが飛び交っている。
理由は一つ。
昨日の研究発表。
《カイン現象》。
その影響だった。
カイン本人は部屋の隅で小さくなっていた。
「なんでこうなるんだろ……」
セリスが遠い目をする。
「あなたが原因です」
最近ずっとこれ。
ルナは研究机へ大量の魔導式を広げていた。
目が完全に寝てない。
危険。
「いやー革命起きたね!!」
「起こさないでくださいよ……」
だが。
実際、革命だった。
ルナは黒板へ魔法式を書く。
「従来理論だと!」
「火属性は火属性魔力が必要!」
「属性適性が必要!」
「術式理解が必要!」
これは常識。
誰もが知っている。
魔法は才能。
適性。
血統。
それが絶対だった。
しかし。
ルナはニヤリと笑う。
「でもカイン式だと関係ない!」
指を鳴らす。
ボンッ。
火球出現。
さらに。
氷。
雷。
風。
全部同時発動。
教師たちが絶句する。
「属性干渉無し……?」
「馬鹿な……!」
ルナは楽しそうだった。
「だって“世界へ命令”してるだけだから!」
「属性理論いらないんだよね!」
学園が壊れ始めた。
その日の午後。
緊急教師会議。
完全に修羅場だった。
「待て待て待て!!」
「属性理論が崩れるぞ!?」
「基礎魔法教育どうする!?」
「階級制度は!?」
「魔力測定基準は!?」
大混乱。
当然である。
今まで魔法社会は、
火属性貴族
高魔力量
上級術式適性
で序列が決まっていた。
だが。
カイン理論では。
その全部が“絶対条件ではない”。
つまり。
魔法階級制度そのものが揺らぐ。
貴族たちは青ざめた。
教師たちは怒鳴り合う。
研究者は興奮している。
地獄だった。
その頃。
学園内でも異常事態が起きていた。
「え、できた!?」
「マジかよ!」
「属性適性なしで発火した!?」
生徒たちがルナ理論を真似し始めた。
もちろん。
本物には程遠い。
だが。
一部成立してしまった。
今まで“不可能”だったことが。
その瞬間。
学園中の常識が崩壊した。
ある教師は頭を抱える。
「今までの教科書全部書き直しか……?」
別の教師は机を叩く。
「認めん!!」
「こんなもの魔法じゃない!!」
さらに別室では。
宮廷魔術師たちが大論争していた。
「これは神代級発見だ!」
「いや危険思想だ!」
「世界法則への直接干渉など制御不能!」
「だが再現性が――」
議論が止まらない。
学会側はもっと酷かった。
王国魔導学会。
論文提出。
結果。
大炎上。
《魔法理論否定論文》
《既存体系崩壊》
《属性理論再検証要求》
学者同士で殴り合い寸前。
歴史的大事件だった。
一方その頃。
カインは普通にパンを食べていた。
「なんでみんな怒ってるんだろ」
本人だけ平和。
ルナが興奮気味に言う。
「だって革命だよ!?」
「数百年分の常識壊れたんだから!」
「そんな簡単に壊れるんですか!?」
「壊れた!!」
即答。
その時。
研究室扉が勢いよく開いた。
教師が飛び込んでくる。
「ルナ!!」
「大変だ!!」
ルナが振り向く。
「ん?」
教師は息を切らしていた。
「禁書庫だ!!」
「封印術式が反応している!!」
空気が変わる。
ルナの目が見開かれた。
「……は?」
禁書庫。
学園地下最深部。
神代文明関連の危険文書が封印されている区域。
数百年間、一度も開かなかった。
そこが。
突然起動した。
教師が震える声で続ける。
「原因不明……いや」
ゆっくり。
全員の視線が、カインへ向く。
カインが固まる。
「え、俺ですか?」
その瞬間。
研究棟全体が揺れた。
――ゴォォォォォン。
地下深くから響く重低音。
そして。
学園地下方向へ、青白い光柱が立ち上った。




