第22話 《王都襲撃》
その異変は、深夜に始まった。
王都ルクセリア外縁。
巨大結界監視塔。
警報水晶が突然、赤く染まる。
《超高密度魔力反応検知》
監視術師が顔色を変えた。
「……は?」
次の瞬間。
遠方の森が、動いた。
いや。
“押し寄せてきた”。
黒い群れ。
無数。
地平線を埋め尽くすほどの巨大魔獣群。
狼型。
飛竜型。
甲殻型。
さらに。
通常存在しない災害級個体まで混ざっている。
監視術師が絶叫した。
「魔獣災害ぁぁぁぁ!!」
王都へ警鐘が響き渡る。
ゴォォォォン!!
巨大警鐘。
王都全域が一気に覚醒する。
「敵襲!?」
「魔獣群だ!!」
「数が異常だぞ!!」
人々がパニックになる。
騎士団出動。
結界師集結。
魔術師団臨戦態勢。
王都最大級防衛戦が始まった。
――王城。
セリスが即座に指示を飛ばしていた。
「東区避難誘導!」
「第二結界起動!」
「民間区域優先です!」
完全に戦時指揮官の顔だった。
アイリスは既に鎧姿。
蒼銀の剣を抜く。
「先行迎撃へ出る」
「お願いします」
その時。
カインだけ状況についていけてなかった。
「え、何起きてるんです?」
ルナが窓から外を見て青ざめる。
「数おかしい……」
彼女の声が震えていた。
「なんで災害級があんなにいるの……?」
普通ではない。
あり得ない。
魔獣とは基本、縄張りで争う。
群れること自体が異常。
しかも。
王都を狙ったように一直線。
まるで。
誰かが操っているようだった。
――そして。
戦闘開始。
王都外壁。
騎士団が激突する。
「迎撃開始!!」
炎魔法。
雷撃。
弩砲。
魔導砲撃。
夜空が閃光で染まる。
だが。
止まらない。
魔獣の数が多すぎた。
結界へ激突。
ドゴォォォォン!!
巨大振動。
結界師たちが吐血する。
「維持が間に合わない!」
飛竜群が空から侵入。
市街地へ降下。
悲鳴。
炎上。
地獄だった。
アイリスが前線を駆ける。
「《蒼刃一閃》!!」
超高速斬撃。
大型魔獣数十体を一撃両断。
だが次々湧いてくる。
騎士たちが叫ぶ。
「数が減らない!!」
魔術師団も押され始めていた。
エルグレインが歯を食いしばる。
「こんな規模……国家戦争級だぞ……!」
その時。
空中。
誰にも見えない位置。
漆黒の神影が王都を見下ろしていた。
感情のない瞳。
神の使徒。
地上干渉個体。
『確認』
静かな声。
『観測外存在への圧力試験を開始』
その瞬間。
さらに巨大な魔力波動が発生する。
地面が割れた。
そこから現れたのは。
超巨大魔獣。
漆黒の竜。
全長百メートル超。
王都を覆うほどの巨体。
誰かが震える声を漏らす。
「……古代種?」
絶望だった。
王国級災害。
普通なら軍隊単位で対処する存在。
それが。
王都中心へ降下する。
結界が悲鳴を上げた。
ミシミシと亀裂が走る。
「結界崩壊します!!」
セリスの顔色が変わる。
アイリスですら動きを止めた。
間に合わない。
その時。
カインが前へ出た。
「……避難、まだですよね」
誰も反応できない。
カインは王都を見ていた。
燃える街。
逃げ惑う人々。
泣いている子供。
怖かった。
でも。
放っておけなかった。
「俺、行きます」
アイリスが低く言う。
「……加減しろ」
「頑張ります」
全然安心できない返答だった。
次の瞬間。
カインが跳んだ。
――ドォン!!
地面爆砕。
超加速。
空気が裂ける。
一瞬で王都上空へ到達。
魔獣群が咆哮する。
だが。
カインはただ剣を抜いた。
「えっと……消えろ?」
雑だった。
そして。
軽く振る。
静寂。
次の瞬間。
空が消えた。
――ズバァァァァァァン!!
白閃。
超広域斬撃。
夜空そのものが裂ける。
巨大魔獣群。
飛竜。
地上群。
超巨大古代種。
全部。
まとめて消滅した。
蒸発。
跡形もない。
さらに。
遥か彼方の雲まで割れている。
数秒遅れて。
衝撃波。
ゴォォォォォォォ!!
王都全体へ暴風が吹き荒れた。
人々が呆然と空を見る。
静かだった。
さっきまで地獄だった戦場が。
完全に終わっている。
騎士たちも。
魔術師たちも。
誰も言葉を出せない。
アイリスが小さく息を吐いた。
「……やはり災害だな」
セリスは頭を抱えている。
「加減とは……」
ルナだけは大興奮だった。
「空間ごと消し飛ばしてる!!」
一方。
空中高く。
神の使徒は、初めて沈黙していた。
感情のないはずの瞳が、わずかに揺れる。
『……観測不能』
理解できない。
世界法則で説明できない。
その瞬間。
カインがふと空を見上げた。
「……?」
一瞬だけ。
神の使徒と視線が合った。




