第20話 《古代遺跡》
王城地下深部。
さらにその下。
王都ルクセリアの地下には、“旧層”が存在する。
神代文明遺跡。
現代魔導技術の基盤となった超古代施設群。
その大半は未解明。
王国ですら全貌を把握していない。
そして今。
その封印区画が、暴走していた。
――ゴゴゴゴゴゴ……!!
王城全体が揺れる。
赤い警報光。
地下通路を騎士たちが走り抜ける。
「第七封鎖壁突破されました!」
「魔導炉心出力上昇!」
「止まりません!」
王城は大混乱だった。
カインは巻き込まれていた。
「なんで俺まで来てるんです!?」
「お前絡みの可能性が高い」
アイリスが即答する。
酷い理由だった。
セリスは早足で地下へ向かう。
「三十分前、地下遺跡最深部が突然起動しました」
「原因不明です」
「しかも」
彼女の顔が険しい。
「起動反応が、あなたの王都到着時刻と一致しています」
カインが固まる。
「俺ですか?」
「たぶん」
否定しきれないのが辛い。
その横で。
ルナだけが異常に元気だった。
「神代遺跡ぃぃぃぃ!!」
完全に目が輝いている。
「しかも強制起動とか最高!!」
「不謹慎ですよ!?」
「だって神代炉心かもしれないんだよ!?」
テンションが危険人物だった。
やがて一行は最深部へ到達する。
巨大空洞。
円形施設。
壁一面に古代文字。
空中を流れる青白い魔力ライン。
そして中央には。
巨大な“核”。
球状。
黒金色。
直径二十メートル超。
脈動していた。
ドクン。
ドクン。
まるで生き物の心臓。
周囲では宮廷魔術師たちが必死に術式展開している。
「出力抑えろ!」
「無理です!」
「結界が持たない!」
すでに数名倒れていた。
暴走魔力だけで人体へ影響が出ている。
エルグレインも額に汗を浮かべていた。
「止まらん……」
王国最高魔術師でも抑え込めない。
空間震動が激化する。
天井が崩れ始めた。
ルナはその中心を見た瞬間、絶叫した。
「神代炉心だぁぁぁぁ!!」
全員うるさいと思った。
ルナは興奮で震えている。
「嘘でしょ!? 実在したの!?」
「神代文明エネルギー中枢!」
「現代魔導理論の原点!!」
早口が止まらない。
「これ一基で国家動くんだよ!?」
カインだけ理解していなかった。
「つまりヤバい?」
「超ヤバい!!」
分かりやすかった。
その時。
炉心が激しく脈動した。
――ゴォォォォォ!!
魔力嵐。
衝撃波。
術師たちが吹き飛ぶ。
結界崩壊。
「まずい!」
セリスの顔色が変わる。
エルグレインが叫ぶ。
「炉心暴走だ!!」
ルナが青ざめた。
「この出力……王都消える!!」
空気が凍る。
神代炉心暴走。
つまり。
都市消滅級災害。
しかも停止不能。
絶望が広がる。
その中で。
カインだけが、おろおろしていた。
「え、えっと……止めればいいんですか?」
全員が振り向く。
嫌な予感しかしない。
アイリスが低く言う。
「……触るなよ」
「はい」
カインは頷いた。
そして。
普通に近づいた。
「待てぇぇぇぇ!!」
全員絶叫。
遅い。
カインは炉心へ手を置いた。
瞬間。
静寂。
ドクン。
脈動停止。
暴走魔力、消失。
空間震動停止。
崩壊停止。
全部終わった。
沈黙。
誰も理解できない。
さっきまで国家滅亡寸前だった。
それが。
触っただけで止まった。
カイン本人が一番困惑していた。
「……止まった?」
ルナの口が開いたまま閉じない。
エルグレインも絶句。
セリスが頭を抱える。
アイリスは遠い目をしていた。
「もう驚かんぞ……」
半分諦めだった。
その時。
停止したはずの炉心が、再び淡く発光した。
全員が緊張する。
だが今度は暴走じゃない。
穏やかな光。
そして。
古代文字が空中へ浮かび上がった。
《認証完了》
空気が凍る。
さらに文字列が続く。
《管理者権限確認》
《中枢接続承認》
ルナの顔色が消えた。
「……は?」
エルグレインが震える。
「馬鹿な……」
神代炉心。
神代文明最高位機構。
その“管理者認証”が。
カインへ反応していた。
当の本人だけが事情を理解していない。
「え、何か出ました?」




