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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第18話 《王都貴族》

王立魔導学園・校舎半壊事件。


その余波は、当然ながら王都中へ広がった。


「測定水晶が蒸発したらしい」


「いや校舎も吹き飛んだ」


「戦略級魔導事故だぞ」


「やっぱり化け物では……」


噂は加速する。


そして。


王都貴族たちも、本格的に動き始めた。


――王都西区。


大貴族街。


豪奢な屋敷の一室。


複数の貴族たちが円卓を囲んでいた。


「放置は危険だ」


「既に王女派が囲い込みを進めている」


「戦姫アイリスまで接触済みだぞ」


「このままでは均衡が崩れる」


重苦しい空気。


彼らは理解していた。


カインという存在は、単なる強者ではない。


政治そのものを破壊する。


王女派が彼を掌握した瞬間、王国勢力図が塗り替わる。


だから。


先に処理する必要があった。


「……暗殺する」


短い一言。


誰も反対しない。


むしろ安堵すらあった。


対話など不可能。


ならば消すしかない。


問題は。


“どうやって”だった。


――その頃。


当の本人は。


「うま……」


学園食堂でパフェを食べていた。


平和だった。


隣ではルナがノートへ猛烈な速度で何かを書き込んでいる。


「カイン接触時の術式崩壊速度について仮説その二十七!」


「食べながらやめてください」


「大丈夫大丈夫」


全然大丈夫そうじゃない。


セリスは頭痛を堪えるように額を押さえていた。


「……最近、貴族派閥の動きが不穏です」


アイリスが低く言う。


「来るな」


「ですね」


物騒だった。


カインだけ置いていかれている。


「何の話です?」


「気にするな」


「気になりますよ」


だが。


その時には既に、最初の暗殺は始まっていた。


給仕係が静かに近づく。


銀盆。


高級紅茶。


自然な動作。


誰も怪しまない。


そして。


カインの前へカップが置かれた。


「ごゆっくりどうぞ」


給仕係は去る。


アイリスが一瞬だけ目を細めた。


だが反応する前に。


カインが紅茶を飲んだ。


ごくっ。


全員の動きが止まる。


セリスの目が見開かれた。


「カイン、それ――」


遅い。


その紅茶には。


神経毒《黒蛇》。


王国禁制。


一滴で竜すら殺す猛毒。


だが。


カインは普通に首を傾げた。


「……ちょっと苦いですね」


終わりだった。


ルナが吹き出す。


「効いてない!!」


アイリスが給仕係へ殺気を向ける。


給仕係は青ざめ、そのまま逃走。


騎士団が追う。


食堂が騒然となる。


一方カインは困惑していた。


「え、何かあったんです?」


「猛毒です」


「へ?」


「今飲みました」


「……え?」


カインが自分のカップを見る。


数秒後。


「えぇ……?」


本人が一番引いていた。


しかし暗殺者側は諦めない。


その夜。


王城宿舎。


カインの部屋。


窓の外から、黒い影が侵入した。


特級呪術師。


音もなく接近する。


睡眠中の標的へ、呪術短剣を突き立てた。


――ガキン。


「……は?」


短剣が折れた。


カインの肌に刺さらない。


どころか。


呪術そのものが霧散している。


術者の顔色が変わる。


「馬鹿な――」


次の瞬間。


術式反動。


呪術師自身の腕が爆ぜた。


「ぎゃああああ!!」


カインが飛び起きる。


「な、何!?」


刺客は恐怖の顔で後退する。


あり得ない。


呪術が“成立していない”。


カインが触れてすらいないのに。


そこへ。


ドォン!!


扉が吹き飛んだ。


アイリスだった。


「敵襲か」


刺客絶望。


終わった。


数分後。


地下尋問室。


拘束された暗殺者たち。


毒師。


呪術師。


刺客。


全員、同じ証言をしていた。


「依頼された」


「貴族から」


「名は知らない」


だが。


セリスの表情は冷え切っていた。


王女としてではない。


完全に怒っている。


「……なるほど」


その声に温度がない。


会議室に集められた貴族たちが顔を強張らせる。


セリスは淡々と資料を机へ置いた。


「禁制毒物使用」


「王城内刺客侵入」


「王族管理対象への襲撃」


一つずつ読み上げる。


「国家反逆罪ですね」


空気が凍る。


老貴族が震える声を出す。


「お、王女殿下! 証拠もなく――」


「あります」


即答。


セリスは笑っていなかった。


「既に資金流通、裏組織接触、密書経路まで押さえています」


完全包囲。


彼女は元々政治の怪物だった。


ただ普段は表に出さないだけ。


「家名剥奪」


「資産没収」


「関係者拘束」


「異論は?」


誰も逆らえない。


王女権限が、容赦なく振るわれていた。


一方その頃。


カインは普通に寝直していた。


「最近よく起こされるなぁ……」


平和ボケしている。


そして。


王城最上階。


セリスは、一枚の報告書を受け取っていた。


そこに記されていた名を見て。


彼女の目が細まる。


「……やはり」


黒幕。


王都大貴族。


王国保守派最大勢力。


ヴァルムード公爵家。


ついに。


国家上層そのものが敵として動き始めていた。

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