↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
124/130

第124話 《勇者の旅》

風が吹く。


新しい世界の風だった。


レオン


レオンは街道を歩いていた。


剣一本。


荷物少し。


かつて世界を救う戦いに立った勇者は。


今。


ただ旅をしている。


空は青い。


神々が消えた空。


運命に固定されていない空。


レオンは少し笑う。


「……静かだな」


昔とは違う。


以前の世界には。


どこか息苦しさがあった。


神託。


階級。


適性。


“決められている感覚”。


それが今はない。


未来が揺らいでいる。


不安定で。


でも。


自由だった。


その時。


前方から悲鳴が聞こえる。


「魔物だ!!」


レオンは足を止めた。


小さな村。


そこへ数体の魔物が襲いかかっている。


まだ若い村人たちが武器を握っていた。


だが。


動きは素人。


一人の少年が震えながら前へ出る。


「お、俺が止める……!」


周囲が叫ぶ。


「無理だ!」


「お前には才能ないだろ!」


その言葉に。


レオンは少し目を細めた。


“才能がない”。


昔なら。


それで終わっていた。


ステータスが低い。


適性がない。


だから戦えない。


そう決められていた。


だが。


今は違う。


少年は震えながらも剣を握る。


逃げない。


魔物が突進。


その瞬間。


少年は必死に踏み込んだ。


剣筋は未熟。


だが。


避け方を工夫している。


何度も練習した動きだった。


結果。


一撃。


魔物の脚を切る。


周囲が驚く。


「なっ……」


少年自身も目を見開く。


レオンは笑った。


「悪くねぇ」


次の瞬間。


レオンが剣を抜く。


閃光。


残る魔物が一瞬で吹き飛ぶ。


村人たちが歓声を上げた。


だが。


レオンは少年を見る。


「今の動き」


「自分で考えたな?」


少年は戸惑いながら頷く。


「ステータスなくなってから……」


「毎日練習してたんだ」


「才能なくても」


「何かできるかもしれないって……」


レオンは少し黙る。


その言葉が。


妙に胸へ残った。


夜。


焚き火。


レオンは一人空を見上げていた。


遠くで子供たちの笑い声が聞こえる。


昔なら。


勇者制度が全てだった。


選ばれた者。


特別な才能。


神に認められた人間。


だが。


今は違う。


誰でも足掻ける。


誰でも変われる。


もちろん簡単じゃない。


努力しても失敗することはある。


苦しむこともある。


それでも。


最初から“価値なし”とは決められない。


レオンは静かに呟く。


「これがお前の作りたかった世界か」


カイン


返事はない。


けれど。


どこかで見ている気がした。


翌日。


レオンは再び旅へ出る。


山を越え。


街を渡り。


様々な人間を見る。


元平民の研究者。


独学で魔法を覚えた少女。


元“低適性”の騎士。


皆。


自分で道を掴もうとしていた。


世界は変わった。


不完全だ。


混乱もある。


でも。


確かに前へ進んでいる。


夕暮れ。


草原。


レオンが立ち止まる。


風が吹いた。


その時。


遠くの空に。


白黒の光が走る。


ほんの一瞬。


境界の残光。


レオンは目を細める。


そして。


小さく笑った。


「……見てんだろ」


白黒の光は。


静かに空へ溶けて消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。