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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第11話 《幼なじみ》

夜のアルディアは静かだった。


昼間の喧騒が嘘みたいに、街路には人影が少ない。


その中を、一人の少女が足早に歩いていた。


ミリア・フェイン。


彼女は迷うように何度も足を止めながら、古びた宿屋の前へ辿り着く。


王都騎士団の監視下に置かれたカインは、現在この宿を仮住まいにしていた。


入口前には騎士が二人立っている。


ミリアは緊張した声を出した。


「……カインに、会いたいんです」


騎士たちは顔を見合わせる。


少しして、一人が奥へ消えた。


待つ時間がやけに長く感じる。


胸が苦しい。


昼の決闘が、何度も頭をよぎる。


山を裂いた一撃。


アイリスを圧倒した姿。


そして。


神殿で、自分が彼を見捨てた瞬間。


「……入っていいって」


騎士の声に、ミリアは我に返った。


小さく礼を言い、中へ入る。


二階の部屋。


扉の前で、彼女は一度深呼吸した。


それでも震えが止まらない。


コンコン。


「……はい」


聞き慣れた声。


ミリアはゆっくり扉を開けた。


部屋の中では、カインが机に向かっていた。


王都から支給されたらしい服。


だが本人はまるで落ち着いていない。


テーブルには食べかけのパン。


その光景が、妙にいつも通りで。


逆に胸が痛くなる。


カインは少し驚いた顔をした。


「ミリア」


「……久しぶり」


「昨日会ったけど」


「あ……そ、そうだけど」


変な沈黙が落ちる。


ミリアは自分の手を握りしめた。


言いたいことは山ほどある。


なのに言葉が出ない。


カインの方が先に椅子を引いた。


「座る?」


「あ、うん……」


ミリアは腰を下ろす。


部屋は静かだった。


外から夜風の音だけが聞こえる。


そして。


ミリアは、耐えきれなくなった。


「……なんで」


小さく震える声。


「なんで言ってくれなかったの!?」


感情が爆発した。


「そんな力あるなら、どうして!」


涙混じりの声が部屋に響く。


「私たち、ずっと一緒だったのに!」


「荷物持ちして、馬鹿にされて、それでも何も言わなくて!」


「山まで斬れるなら、全部変えられたじゃん!!」


言いながら、自分でも分かっていた。


これは八つ当たりだ。


本当に責めたいのは、自分自身。


カインを切り捨てた自分。


助けられなかった自分。


でも止まらなかった。


カインはしばらく黙っていた。


そして、小さく答える。


「……俺も知らなかった」


ミリアの言葉が止まる。


カインは困ったように笑った。


「本当に、分かんないんだ」


視線を落とす。


「なんでこうなるのか」


「なんで山が消えたのか」


「なんで神殿壊れたのか」


静かな声だった。


嘘じゃない。


ミリアには分かった。


この人は本当に、自分の力を理解していない。


だから余計に現実感がない。


ミリアは唇を噛んだ。


「……私、最低だ」


ぽつりと漏れる。


「神殿で……止められなかった」


「ガルドが追放するって言った時……私」


声が震える。


「怖くて……何も言えなかった」


カインは静かに聞いていた。


責めない。


怒らない。


それが逆につらかった。


ミリアは俯く。


「ごめん……」


長い沈黙。


やがてカインは、ゆっくり首を横に振った。


「仕方ないよ」


その一言が、胸に刺さる。


ミリアは思わず顔を上げた。


「だって、普通そうなる」


カインは苦笑する。


「俺でも怖いし」


冗談みたいに言う。


でも、その笑顔が妙に寂しかった。


ミリアは気づいてしまう。


もう。


戻れない。


昔みたいに。


隣で笑っていた頃には。


カインは遠くへ行ってしまった。


強さとか地位じゃない。


もっと別の場所へ。


自分たちとは違う世界へ。


なのに。


本人だけが取り残されている。


ミリアの目から涙が零れた。


「……っ」


カインは慌てる。


「え、なんで泣くの」


「うるさい……」


泣き笑いみたいな声だった。


カインは困った顔をするだけ。


それが昔と変わらなくて。


余計につらい。


外では夜風が吹いていた。


王都行きは、もう明日。


二人とも分かっていた。


この夜が。


きっと最後の“普通”なのだと。

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