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追放されたけど、全能力がSSSで世界の理から外れてました  作者: 南蛇井


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第106話 《勇者と救世主》

神域崩壊後。


世界はさらに静かになっていた。


いや。


静かすぎた。


空の半分は黒いノイズに侵食され。


月は砕け。


遠くでは都市が消えている。


それなのに。


もう悲鳴すら少ない。


人々は限界だった。


終わりが近い。


誰もが理解している。


王都外周。


崩壊した城壁の上。


そこに二人の男が立っていた。


レオン


そして。


カイン


赤い空を見上げながら。


しばらく沈黙が続く。


先に口を開いたのはレオンだった。


「神が頭下げるとか」


「昔なら笑ってたな」


カインは肩を竦める。


「俺も笑いたい」


だが。


現実は重い。


神々は終わった。


観測者も限界。


残された希望は、もうカインしかいない。


レオンは静かに剣を置いた。


戦場じゃない。


ただ話したかった。


「なぁ、カイン」


「お前、自分が怖いか?」


カインは少し黙る。


答えはすぐ出なかった。


境界存在。


世界修復者。


外世界因子。


人間じゃないかもしれない。


今の自分が何なのか。


正直。


もう分からない。


カインは苦笑する。


「まぁ、多少はな」


「最近マジで人類辞めてるし」


冗談っぽく言う。


だが。


その声には迷いが混じっていた。


レオンは静かに頷く。


「俺は人間側の存在だ」


風が吹く。


勇者は空を見たまま続けた。


「人を導くのが役目だ」


「恐怖してる奴を立たせる」


「逃げそうな奴の背中を押す」


「それが勇者だと思ってる」


カインは黙って聞いている。


レオンは笑う。


「でもお前は違う」


その視線がカインへ向く。


真っ直ぐだった。


「お前は世界そのものを変えられる」


沈黙。


カインは顔をしかめる。


「……買い被りすぎだろ」


即答だった。


「俺はそんな大層なもんじゃねぇよ」


「たまたま壊れなかっただけだ」


「勝手に巻き込まれて」


「気づいたらこんなんなってただけだし」


本音だった。


カインはずっと流されてきた。


神々。


観測者。


外界。


全部。


自分の意思とは関係なく押し付けられたものだ。


だが。


レオンは首を横に振る。


「違う」


その一言だけで。


空気が変わる。


勇者の目だった。


「俺たち全員、お前に救われてきた」


カインが目を細める。


レオンは続けた。


「王都を守ったのも」


「神を止めたのも」


「外界侵食を抑えてるのも」


「全部お前だ」


「誰も届かなかった場所に、お前だけが立ってる」


「だから皆、お前を見てる」


世界が崩壊しても。


まだ人々が諦めていない理由。


それは。


カインが立っているから。


レオンは笑った。


「俺には世界は変えられない」


「でも、お前なら変えられる」


その言葉は。


重かった。


期待。


希望。


信頼。


全部込められていた。


カインは空を見上げる。


赤い空。


崩壊する世界。


泣いている人たち。


戦ってる仲間。


守り続けてる誰か。


全部頭をよぎる。


そして。


小さく息を吐いた。


「……ほんと、面倒な役押し付けるよな」


レオンは笑う。


「勇者だからな」


その瞬間。


遠方で巨大爆発が起きる。


世界崩壊は待ってくれない。


時間切れが近い。


レオンは剣を握る。


立ち上がる。


勇者の顔になる。


そして。


カインへ手を差し出した。


「だから一緒に戦え」


終末の空の下。


勇者が。


救世主へ。


共闘を求めた。

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