第100話 《境界存在》
侵食源へ。
カインが触れた瞬間だった。
世界が止まった。
カイン
黒い宇宙。
死んだ現実。
そこから溢れ出していたノイズが、一斉に静止する。
外界全体が沈黙した。
巨大存在たちも動かない。
時間が停止したわけじゃない。
もっと根本。
“変化”そのものが止まっていた。
そして。
カインの脳へ。
膨大な情報が流れ込む。
世界誕生。
創世神。
観測者。
神々。
PROJECT:KAIN。
全部の断片が繋がっていく。
白。
黒。
視界が反転した。
外界の黒が白へ。
世界の白が黒へ。
境界が消える。
その瞬間。
カインは理解した。
「……そういうことか」
現在世界。
外界。
本来、この二つは完全に分離された存在だった。
だが。
完全分離では、いずれ崩壊する。
閉じた世界は停滞し。
外界は侵食し続ける。
だから必要だった。
“境界”。
両方を繋ぎ。
両方を理解し。
両方へ耐えられる存在。
それが。
PROJECT:KAIN。
外世界因子を内包した理由。
観測外存在として生まれた理由。
全部ここへ繋がる。
カインは。
世界と外界を繋ぐ存在。
境界存在。
だから。
世界法則へ干渉できる。
だから。
神々の権能が通じない。
だから。
外界汚染へ耐えられる。
全部。
最初から“両側”だったから。
外界が脈動する。
同時に。
現在世界。
王都上空でも異変が起きていた。
セリスたちの視界。
突然。
世界全体が停止する。
風が止まる。
崩落した瓦礫が空中静止。
海も。
空も。
月の破片すら止まった。
神々も凍りつく。
アストラが目を見開く。
アストラ
「……世界が」
「止まっている……?」
違う。
止められている。
カインによって。
外界内部。
白黒反転空間。
カインの周囲だけが発光していた。
黒と白。
二つの世界が彼を中心に混ざり合う。
外界ノイズが消える。
逆に。
世界法則も揺らぐ。
境界そのもの。
カインは今。
“間”に立っていた。
観測者の巨大な“眼”が静かに開く。
観測者
今まで感情を見せなかった存在。
その視線が。
初めて明確な反応を示す。
『境界存在、覚醒段階到達』
『適合率上昇』
『最終工程移行可能』
巨大な外界存在たちが、一斉に跪く。
神々が沈黙する。
観測者ですら。
カインを中心に見つめている。
世界と外界。
その境界。
それが今。
目の前に存在していた。
カインは静かに目を開く。
その瞳には。
白と黒。
二つの世界が映っていた。
そして。
観測者が告げる。
『最終選択を開始します』
第七章《外界侵食編》 完。




