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  ボウリング場を出て、次はどこかでご飯を食べに行くことになった俺達───


  二人並んで歩いていると、須賀みかの方から近付いてきて俺の腕にギュッとしがみついてきた。


  「こ、こうしてみたんだけど、恋人の距離感って、こんな感じかな? 」


  須賀みかにしては思い切ってみたのか、どこか初々しくぎこちないが、必死さが伝わってくる。

 ──可愛いな、そう思って、背の低い須賀みかの頭をぽんぽんして、


  「よし、じゃあ軽く食べて動物園行こうか。」

 と、言って腕を組み直して歩き出した。



 ───ファミレスで昼食を済ませた後、動物園へ向かった。

  日曜日とあって、家族連れや観光客で賑わっている。入口付近でツーショットの自撮りをスマホで収め、楽しく会話をしながら動物園を楽しんだ。

  須賀みかと話していると、面白くて、やっぱり話しやすいなと思ってしまう。恋人役の練習と言うより、ただ俺はクラスメイトのスガちゃんと遊んでみたかったのかもしれない。


 

 

  動物園を出てから、近くのカフェでタピオカミルクティーを購入し、大きな公園のベンチでゆっくり飲むことにした。所々に大道芸をやっていて人だかりが出来ている。


  会話が途切れたタイミングで、

  「こうやって、今日付き合っててもらってアレなんだけど・・・・もしかして・・彼女、いるの?」


  「いいや、いないよ。」


  「・・いないんだ・・・えと・・良かったって思って。もしも岸辺くんに彼女いたら、今日、私と二人っきりで遊んでるの迷惑になるなって━━━」


  そう、須賀みかが思ったのは、ボウリング場で片山かすみに抱きつかれた所をやっぱり、見られていたから・・・・?




  「━━━ひとつお願い出来るっていうの、今しても良いかな?


  ゆうと、目を閉じて・・・・」


  上目遣いにお願いされて、俺達は少し見つめあった後、俺はお願いされた通り目を閉じた。



  膝に体重がかかる。須賀みかの手が乗っているみたいだ━━━

  段々近付いて来ているのがわかる。



  目を閉じている俺に、何かをしようとしている──これは・・・もしかして、原作のシナリオ通りなら、キスをされ・・・

  そう思ったと同時に、


  「キス、しても良いかな? 」

  囁くように、言ってきた。声を作ってはいるが、少し緊張しているようにも聴こえる。


  胸の鼓動が高鳴ってくるのをなんとか、抑えようとしながら答える。



  「俺で、良ければ。どうぞ。」


 

  ──更に前へ身体を動かしたのか、お互いの呼吸の音が聞こえるくらいまで近付いている───



  人生初のキスの相手は、須賀みかになるらしい。

  声優として活躍する彼女の、リアリティーのある演技作りのためにもなるし、それに俺だって演劇部の次の舞台でキスをすることになるのだから・・・

  これは、お互いの為の練習になるのであって・・・経験することによって、もっと良い芝居が出来・・・



  ──膝に体重をかけて乗っていた手が離れ、両手で包み込むように俺の首に触れ・・・

 

  「チュッ」と軽く音を立てて、俺の右側の頬にキスをしてきた。柔らかい唇の感触──



  目を開けると、すぐ近くにまだ須賀みかの顔があって、ビクッとしてしまう。

  頬に、キスを・・・? 当然、唇にだと思っていたから、身構えていたのが可笑しくなってくる。



  「私、岸辺勇人くんの事、前から大好きだったんだ。お芝居、もっともっと上手くやれるように頑張るから。

  私は声優をずっとやっていくし、ゆうとの事も応援してるから。

 

  今日は、付き合ってくれて本当にありがとう。」


  照れながら、とびきりの笑顔で微笑んでいた。


  それが、告白なのか、ただクラスメイトとしてなのかは微妙に判定に困ったが、とりあえず今は手を出して「俺の方こそ」と言って、手を握り合った。

 





  ────「クノイチを彼女にするデメリット」はその後、好調だったようで2期をやることが決定したそうだ。そのヒロイン役の声優、須賀みかも名前が知れ渡り話題の新人声優として有名のようだ。

  俺が見たネットニュースでは、【須賀みかの甘える演技、最高!】とか【伸びしろがある声優の1人】と書かれていた。


  深夜アニメ枠のCMでは、可愛い衣装を着た須賀みか本人が歌っている姿が観れる。

 



  クラスメイトの須賀みかは、隣の席でたまに教科書を忘れては、「岸辺くん・・」と泣きついてきて俺のを見せている。

  こっそりと舞台の台本に目を通していると、

  「まだ、それのヒロイン役決まってないんだ? 」

  声を潜めて、言ってくる。




 


  「私、ゆうとのヒロインに、またいつかなりたいな。」

  頬を赤らめて微笑んでそう言った。そして机の下で手を握ってくる────


 



 

 

 

 




 

 


 

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