第二十五話 進路
翌日。
部室。
劉備が進路調査票を書いていた。
劉備
珍しい。
いつもはギリギリまで出さない。
孔明は少し驚く。
孔明
「もう書いてるの?」
劉備。
「うん」
孔明。
何気なく覗く。
そして止まる。
⸻
第一志望
体育大学
⸻
孔明。
「……へえ」
「意外」
劉備。
少し照れながら笑う。
「そう?」
孔明。
「もっと文学部とかかと」
周律。
後ろから。
周律
「どこに文学要素あるんですか」
劉備は少し考えてから言う。
「アウフグース好きだし」
「発汗とか」
「運動とか」
「呼吸法とか」
「ちゃんと学んでみたい」
孔明。
止まる。
呼吸法。
昨日の龍。
天空。
少しドキッとする。
劉備は続ける。
「世の中ってさ」
「みんな疲れてるじゃん」
静か。
部室。
夕日。
「だから」
「整わせたいんだよね」
「天下統一みたいに」
周律。
「スケールがデカいのか小さいのかわからない」
劉備。
笑う。
「でもさ」
「身体とか心とか」
「ちょっと楽になるだけで」
「人って優しくなれるじゃん」
孔明。
何も言えない。
少しだけ。
胸が熱くなる。
劉備は大学パンフレットを見せる。
スポーツ科学。
呼吸。
トレーナー。
メンタルケア。
心理学。
孔明。
ページをめくる。
止まる。
「……面白そう」
劉備。
「でしょ?」
孔明。
本当に少しだけ。
未来が見えた気がした。
⸻
翌日。
教室。
進路調査票。
孔明は静かに書く。
⸻
第一志望
体育大学
⸻
書いた瞬間。
後ろから声。
「え」
劉備だった。
孔明。
飛び上がる。
劉備。
ニヤニヤしてる。
「体育大学?」
「そんなに私のこと好き?」
孔明。
顔真っ赤。
脳停止。
そして。
焦って。
つい言ってしまう。
「か、勘違いしないでよね!!」
沈黙。
教室。
ざわつく。
笑いが起こる。
誰かが机に突っ伏してる。
劉備。
耐えてる。
肩震えてる。
完全に笑いを堪えてる。
孔明。
言ってから気づく。
「……あ」
終わった。
人生終わった。
だが。
劉備が盛大に吹き出した。
その瞬間。
唾。
大量。
孔明の顔に。
ベチャッ。
沈黙。
孔明。
ゆっくり拭う。
そして。
小さく呟く。
「……どんなロウリュだよ」
劉備。
さらに爆笑。
教室。
夏。
笑い声。
その瞬間だけ。
進路も。
将来も。
全部少しだけ、
どうでもよかった。




